2008.11.3. 昨日は、指先などから分泌される、ウィルスを分解する酵素のことについて書かせていただきました。免疫系の働きを、食べ物を消化することとの関連でみるとどうなるでしょうか。 考えてみれば当たり前なのですが、食べたり、息を吸ったりすることから、感染体や毒物、異物が体の中へと侵入してくる訳ですね。他に性病もあれば、膚を食い破ったり、針を刺したり、或いは目の粘膜から侵入してくることもあります。 ただ、日常的に圧倒的に多量に外部の物質が入ってくるのはなんといっても口です。 物を食べる時に、まずいきなり指で食べ物を持ったときから、消化・免疫反応が始まっているわけです。体のためには、お箸ではなく、五本箸(指)で食べる方がいいのかもしれませんね。 食べ物をもったとき、このとき食べ物の表面に付着したウィルスや菌の分解が始まるのです。 エイズウィルスであっても、分解してしまえば、私たちの体を構成する普通の物質、アミノ酸とか糖分になってしまい、安全なものになります。 とりあえず、ばらばらにしてしまえば、危険ではなくなる、これが自然免疫の第一の基本作用です。 口の中にも、沢山の分解酵素が存在します。でんぷんを麦芽糖に分解するアミラーゼという酵素が有名ですが、唾液の中には、他にも沢山のウィルスを分解する酵素が含まれています。また、扁桃腺も口から入った感染体をトラップする機能があります。消化管全体に存在する粘膜も、電気を帯びており、菌をはじいたり、ウィルスを捕まえたり、或いは種類によっては逆の電気力が働いたりします。 胸腺は今では、直接、消化管につながってはいませんが、免疫細胞を沢山、抱えています。脾臓も免疫にとって重要な臓器で、これも今は、消化管とつながってはいませんが、胃にくっついています。胃がん手術でも、全摘手術の時は、脾臓もとってしまいます。胃はもちろん強力な酸と蛋白分解酵素を大量分泌するので、大抵の菌が死滅し、ウィルスも概ね失活(一般に感染力がなくなることを失活とよんでおります。ほんとうは、完全にウィルス遺伝子を分解しない限り、感染確率がゼロになることはないのですが)します。 ここまでは、大雑把にばっさりと外から入ってきたものを切るプロセスですが、十二指腸や小腸では、もっと細かく消化します。 さて、小腸がん、というのは、殆ど聞いたことがないと思います。たまにいらっしゃるのですが、非常に発生頻度が少ないのです。十二指腸がんもそうです。胃がんや大腸がん、更には食道がん、消化器系のがんは随分多いのに、何故か小腸はがんの発生が極端に少ないのです。 千島学説というのをご存知でしょうか。 学会では、ほぼ無視されてきた研究者ですし、私自身、うううん、ほんまかいな?!?! と首をかしげてしまうこともおっしゃっておられるのですが、考えさせられる説ではあります。この方は、小腸こそ、免疫の臓器であり、リンパ球は小腸でつくられる、だから、小腸にはがんが極端に少ないのである、と、主張しておられます。 実は、最近、小腸でT細胞やB細胞がつくられることが分かってきているのですが、確かに、小腸は、外部の物質を大量に体内に取り込む場所です。 消化管を竹輪の穴だと思えば、穴の中は、「体の外」ですから、小腸の粘膜に吸収されて始めて「体の中」に入る訳ですね。 外部から大量の物質を取り込む場所が、免疫において中心的な役割を果たす臓器である、というのは、結構、説得力がありますね。 続きは明日、、、、