藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

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2008年11月15日

  

免疫

2008.11.15. さて、いい加減に、がん細胞表面のレセプターについて、書いてみましょう。概念としては、「がん拒絶抗原」というのが、がん細胞表面にあって、NK細胞はそれを認識している、ということになっています。実際には、一種類の抗原があるのではありません。 かなりの種類のレセプターの組み合わせ、とお考えください。 これまでに沢山のレセプターが発見されていますが、大きく分けて、このレセプターが多いと、がん細胞と認識される確率が高くなる、というタイプと、このレセプターが多いと、がん細胞ではない、と認識される確率が高くなるタイプ、即ち、ポジティブレセプターとネガティブレセプターが、それぞれ複数存在します。がん細胞だけに存在するものはありません。全て正常細胞にも存在します。 「がん特異抗原発見!」というニュースは、しょっちゅう世界のメディアを駆け巡ります。実際、ある種のがん細胞が沢山発現している物質があって、いくつか比較のために調べた正常細胞にはその物質がみつからなかった、ここまでは、よくある話なのです。すわっ、がん特異抗原をみつけた、と思っていると、やがて、どこかの正常細胞にもあることが分かります。正常細胞といっても、種類が多いですし、同じ種類であっても状態や状況によって、特定の物質を出したりひっこめたりします。がん細胞に特異的であることを証明するのは、そんな簡単なものではないのですが、すぐに「がん特異抗原をみつけた」と騒ぐのです。  がん細胞も正常細胞ももってる遺伝子や構成している物質には差は殆どありません。 微妙な違いはないとはいえない、のですが、殆ど同じ物から構成されています。 何が違うのかというと、レセプターの類に関して言うなら、存在比率が違うのです。 かといって、がん細胞は必ずこういう比率です、とか、固定されたものではないのでやっかいなのです。 このレセプターの組み合わせパターンは、がん細胞によって相当異なります。発生部位だとか、原発か転移か、とか、進行ステージとか、一般にがんの分類に使われる分け方によって、それぞれに特有のレセプターの組み合わせパターンがあるのかというと、殆どランダムといっていい位、まちまちです。同じ腫瘍組織の中にも、様々なパターンをもつがん細胞が存在します。 NK細胞、ただし、ポリクローナル、まあ、人体から実際に採ってきた集団とお考えください、しかも十分に活性を高めたNK細胞であれば、という条件がつきますが、どんながん細胞でもあっても、がん細胞と認識して攻撃し、正常細胞は攻撃しません。 ただし、相手のがん細胞によって、素早く殺せる場合もあり、殺すのに時間がかかってしまう場合もあります。 NK細胞の方も一様ではなく、いくつかの亜集団、ま、グループに分かれます。こういうがん細胞は得意だけど、ああいうのは、あんまり素早く殺せない、という殺傷効率の偏りがあるのです。ですから、極力、沢山のNK細胞を患者さんから採取して、培養をスタートした方が、偏りの少ないNK細胞集団となります。 ところで、方々のHPには、NK細胞が殺すのは、MHCクラスIをひっこめた細胞なんだ、という風に書かれています。 キラーT細胞はがん細胞の表面にあるMHCクラスIというレセプター分子の、特定の部位を認識して攻撃するので、がん細胞がキラーT細胞に殺されないようにMHCクラスIを細胞内にひっこめてしまうと、今度は、MHCクラスIをもってない細胞が、がん細胞なんだ、と認識するNK細胞に殺されてしまう、という類です。これは、はっきりいって作り話です。 まともなNK細胞は、MHCクラスIを沢山もっていようが、関係なく、がん細胞である限り殺してしまうのですが、確かに、大学の実験室で使われるセルライン化(株化)されたNK細胞は、活性が低いために、殺せないがん細胞が沢山あるのです。 明日はこの辺りの話をさせてください。

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