藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

TOP

2008年11月29日

  

免疫

2008.11.28.

丸山ワクチンについては、何故、製造承認を取れなかったのか、
有償治験を継続している特殊事情、同成分で承認された別の医薬品、
などなど、、、 本とか、HPに沢山、情報が載っています。

製造元のゼリア新薬工業の役員さんとは、何度もお会いしたことが
あるのですが、ほんとのところ、どうなの? という突っ込んだ話は
聞けず仕舞いでした。

もっとも、ゼリア新薬の前に製造していた第一製薬高槻工場の
研究開発部門の部長さんからは、直接、お話を聞いています。
それは別の機会に。

ところで、ワクチンと呼ばれていますが、ワクチンではありませんし、
実際、正式名称も、ワクチンではありません。 なんでもかんでも、
〇〇ワクチンという名前をつけるのですが、元々、ワクチンというのは、
ウィルスを感染させ、体内でウィルスが存在する間は、類似ウィルスの
感染を防止できる
、というものです。
ジェンナー氏の牛痘は問題が多く、使われなくなりましたが、
150年前に実用化された種痘は、ワクチニアウィルスを、
人間の子供に投与すると、ウィルスが感染後、
ずっと体内で活動を続け、活動を続ける限りは、類似、この場合、
人の天然痘ウィルスの感染を防ぐ、そういうものです。
ウィルスが存在し続けるので、抗体も維持されます。
逆に、抗体が維持されている、ということで、ウィルスが活動している、
つまりワクチンとして有効である、と判定するのですが、抗体存在下で
ウィルスが活動しているわけですから、抗体があるから、ウィルスを
抑えるということではありません。 抗体とウィルスは仲良くやっているのです。
これが、どこでどう間違ったか、ワクチンは抗体をつくり、抗体が感染を防ぐ、という話になっていってしまったのです。  実際、有効性の高いワクチンとして生き残ったものは、大半が、生ワクチン、実際にウィルスや菌を感染させるタイプのものです。 感染力を奪った菌やウィルスの破片などを投与しても、強い
ワクチンにはなかなかなりません。

ワクチンの話は、まとめて、いつか、やりましょう。

丸山ワクチンは、今、一般にイメージされるワクチン、抗原を注射して、
抗体を誘導する、、、というものではありません。

結核感染患者に、肺がんの人が少ないことから、ならば、結核菌の
成分を投与すれば、がんを叩けるのでは、と、考えたわけですね。

(後日、結核患者は肺がんに罹患する前に亡くなる方が多いためそう思われたのですが、栄養状態がよくなり結核で亡くなる方が減ってくると、実際には、結核感染患者の方が肺がんになりやすいということがわかりました)
19世紀のコーリー氏が、溶血性連鎖球菌をそのまま投与したのに
比べると、随分と、マイルドなやり方で、結核菌を殺し、蛋白質を
除くことで安全性を高めたのですが、当然、菌そのものに比べれば
効力は落ちます。

それでも、菌がいる! と、思った自然免疫がギョッとして活動レベルを
上げ、たまたま、体内にいたがん細胞を攻撃する、こういう筋建てです。

菌の成分をがん患者に投与すると、菌に対する抗体ができ、この抗体が
がん細胞を攻撃する、、、 と書かれたHPがありますが、がん細胞は
元々、体内にいた自分の細胞ですから、抗体、少なくとも、何らかの障害を
誘導するタイプの抗体がつくられることはありません。 また、菌の破片を
注射しただけでは、そう抗体がつくられることはありません。

この薬、元々、第一製薬(現、第一三共)高槻工場で製造していました。
製造といっても、原液が、日本医大から送られてきて、それを希釈し、
分注するだけのことなのですが。 さて、第一製薬研究開発部で、
部長待遇だったI氏が退職後、顧問として、以前、勤めていた会社に
きてくださり、10年、机を並べて、お仕事をさせていただきました。
たまたま、I氏は、第一製薬時代、丸山ワクチン製造の責任者でした。
第一製薬は、丸山ワクチンの製造を中止し、ゼリア新薬工業が
引き取ったのですが、I氏によると、間違いなく、効果はあった、
と、自信をもっておっしゃりました。 もっとも、どんな人でも効果がある
のではなく、肺がん患者の3割程度に、何らかの臨床上の症状改善が
あった、ということでした。 臨床上の症状改善というのは、必ずしも、
腫瘍組織の寛解や、縮小を意味するものではありません。
それでも、とにかく、使うだけの価値のある薬、というのが、
I氏の見立てでした。 では、なぜ、製造をやめたのですか?と聞くと、
当時、ガスクロマトグラフィーもなく、分析しようにも、どうにもならなかった
そうです。 決まった製法通り、原液を調整した、ということを信じる他なく、
当時の技術では、いくら分析しても、ただの水だった、そこを厚生省に
突っ込まれ、一体、どうやって品質管理をやるのか、と。
最終的に、メーカーとしての責任を取れない、ということで、製造元を
返上したそうです。

その後、効かない、という話をよく聞くのですが、末期進行がんの患者
さんに、強い化学療法剤と併用して投与しているケースが多いようで、
そうなると、菌の破片を投与しただけで、効果を期待するのは酷なように
感じます。 ANK療法の場合は、生きているNK細胞の活性を強くし、
直接、がん細胞を殺す能力を高めた上に、体内の免疫全体を活性化
させる大量のサイトカインを放出するわけですが、丸山ワクチンの場合は、
菌の情報を与えることで、体内の自然免疫が刺激されることを狙うものです。
徹底して免疫抑制を受けていたり、化学療法剤に叩かれた自然免疫に、
物質的な刺激だけ加えても、厳しいと考えます。

(その後、感染症免疫を若干刺激するため、感染症でなくなる方が若干減少すると考えられるようになります)

ところで、この丸山ワクチン、今では、成分組成を分析することは可能です。
基本的に、糖質が主成分なのですが、一時は、盛んに、丸山ワクチンの
成分を合成して、抗がん剤として使おうという研究がされました。
ときどき、そういう案件を持ち込まれましたが、その中では、MDP
ムラミン酸ジペプチドというのが、一番、有望株と看做されていました。
かなり精力的な研究が行われましたが、結果は、駄目でした。
成分を精製すればするほど、単一物質にすればするほど、
効果が弱くなりました。

漢方とか、アフリカの民族に伝わる古代から伝承された生薬とか、
成分を精製して、近代的な医薬品にしよう、という研究は、かつて相当
盛んに行われ、私の机の上にも、しょっちゅう、なんとか部族が、昔から
なんとか病の時に煎じてのむ草、、、 という類のサンプルが置かれて
いましたし、もっと徹底的に、雲南省に生えてる全植物サンプルを集める、
ついには、アマゾンやアフリカなどから集めた毒キノコ8000種類!!
(このコレクション、22億円で、サントリーに売れました)、これでもか、
と、色んなものをスクリーニングといって、薬候補を探しました。
たまに、単一成分で効果があるものもありますし、実際、薬の多くが
こういうプロセスを経て開発されてきたのですが、基本的に、
そのまんま、呑むのがいいようです。

 

>>全投稿記事一覧を見る