2008.12.11.
医薬品製造用培地のビジネスは、
気のながあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぃ仕事です。
研究段階から、供給しておかないと、使ってもらえません。
途中で成分やグレードを変えると、最悪、製造承認申請データを
取り直すことになるからです。 通常、そこまでは不要で、「一変」、
一部変更の申請で済むのですが、それでも面倒であり、余計な
コストと時間を浪費しますから、なるべく、初期の段階から、培地成分を
固定して、そのまま開発を走らせたいわけです。
研究から、本格開発、治験、承認、量産、、、
さて、何十年かかるか分かりません。
よくあるのですが、研究部門は、何も考えずに研究用試薬を使います。
学術論文を書く時に使う培地は、素性が決まっている、どこでも同じ物を
使っている有名ブランドの、そのまた同じ製品番号のものを使用するので、
そういう行動パターンが染み付いているのです。
もちろん、培養する細胞や菌によっては、
多少、特殊な成分を加えることになります。
ANK療法の場合は、何を加えているかと言うと、
ま、それはまた別の機会にしましょう。
医薬品メーカーの人たちは、研究段階では、後先、考えないのですね。
製造なんて、最後は、なんとでもなる、と。
コスト吸収力があるから、難しい製造でも、力技で押せば
どうにでもなる、という背景もあるようです。
で、スケールアップの段階になると、資材部門に培地の
大量調達の話が廻るのですが、一見、ありふれた物質であっても、
大量供給となると、難しいことも多いのです。
特に、菌の場合、この珍現象は頻繁に発生し、
菌をスクリーニング、選別する段階から、
余りにもレアな物質を使ってしまったため、
そのレアな物質がないと増えない、とか、肝心の
有効成分をつくってくれない、という我侭な菌を育てることになり、
いざ、量産という時、資材を確保できないのです。
一体、どれだけの医薬品候補が、こうして、
量産に失敗して消えていったでしょうか。 消えてしまったので、
殆ど、人の記憶に残っていませんが、何故、最初から考えて
研究しないのか、呆れることがしばしばでした。
で、培地成分の商売を副業としてやろうと考えるなら、
釣りの要領で、試薬メーカーのカタログに載せ、
じーーーーーーーーーーっと、魚がひっかかるのを待つのです。
時間がかかるのですから、手間をかけてはいけません。
D-Mannnose という糖があります。
とてもありふれている糖です。
体内にも沢山あり、糖鎖、それも糖蛋白の糖鎖を構成する糖の
3分の1以上、半分近くが、このディー・マンノースという糖です。
こんにゃく玉は、Dマンノースの塊、ハイマンナンですね。
丸山ワクチンの成分にも、含まれています。
これが意外と、医薬グレードは売ってなかったのです。
意外というより、当たり前といえば当たり前なのですが、
D-Mannnitol は医薬品ですが、D-Mannose は医薬品ではない
ので、医薬グレードは売ってなかったのです。
ところが、こんなありふれた物質は、どこにでも高純度品がある、
と思い込むんでしょうね。 いざ、使うとなって、あれ、ない!
と、大騒ぎをした医薬品メーカーが何社かありました。
簡単に製造できると、思うのでしょうが、高純度品をつくるのは
意外とやっかいなのです。
案外、参入障壁は高い、糖の量産に関し、相当のノウハウが
ないと難しいので、競合は出現しにくい、と、
この糖を、GMPレベルで量産するプラントをつくっておいたのです。
だめなら、D-Mannitol の原料にしてしまえばいい、と腹を括って、
えいや! と、設備投資しちゃったのです。 需要を確認してから
投資していると競合に負けますが、時期が早すぎると無謀です。
この場合、捨てることにはならないから、いいや、と、先行投資を
したため、世界で恐らく唯一の本格プラントになったのです。
現在、この物質は細胞培養や組織培養の培地に普通に
入っていたりしますが、FDAとしても関心を持ち、一時、
Inspectorを派遣し、GMP基準に基く品質管理体制を
もっているのか査察にくる、というので、準備しておりましたが、
まあ、培地に使うなら、医薬品メーカーが自社で査察しておけばいい、
FDAとしては、メーカーを信用する、ということになりました。
チョロチョロ、米国の試薬メーカーが買っていったのですが、量が
増えてきたので、そのタイミングからして、血液凝固第8因子
いわゆる、ファクターエイトに使っているのだろう、と推測しておりました。
ところが、競合メーカーに秘密が漏れることを恐れたようで、
直接コンタクトしても知らないふりをします。 培地成分は自分で買うと
ばれるので、培地メーカーに買わせ、培地メーカーに対しては、
絶対、秘密厳守を要求します。
米国のビジネスでは、販売先に対し、転売先を聞かなければ、
相手の商権を守る義務はありません。 聞いてしまった場合、
相手を飛ばして、転売先へ直接、売ると独占禁止法抵触の
可能性があります。 この時は、試薬メーカーが転売先をディスクローズ
しなかったので、ならば、直接、売る、と決めていました。 相手の顔を
見ないのに、増産体制を取るための設備投資はできないからです。
そこへJRScientific のDr.Nifenager が飛びこんできました。
サクラメントに本社を置く、当時としては、新進気鋭の培地メーカーでした。
こちらの供給体制を確認するとともに、大量増産の要請にきたのですが、
用途やユーザーは絶対秘密厳守なので言えない、の一点張りです。
こちらは、相手のことも分からず、追加設備投資はできない、
エンドユーザー名と、用途を教えろ、と押し問答が続きます。
(そろそろ長くなりましたので、続きは明日以降、、、、)