藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

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2009年01月31日

  

くすり

2009.1.30.
 
 
医薬品の仕事を始めたとき、
先輩の中に、自分は梅澤濱夫先生の
直系の門下生であるということに誇りをもっている方が
いらっしゃいました。 
 
「何をした人なんですか?」
 
「君、梅澤濱夫先生を知らないのか?!
 そんなことでは、医薬品の仕事はできない」
 
と、言われてしまいました。
就職したばかりなんで、知らんでしょう、普通、、、
 
就職してすぐ、これは見込みがある、と、自分でリクルートした
学生さんが採用され、医薬品部門に配属されたのですが、
その新人さんも、梅澤濱夫先生ゆかりの研究室出身者で、
流石に、いい研究室から見つけてきた、と褒められました。
だから、知らないって、そのなんとか先生って、
単に、筋のいい学生と思ったから推薦しただけだし、、、。
 
Journal of Antibiotics という学術誌があります。
抗生物質の世界では、非常にインパクトファクターの高い学術誌でした。
(今もそうなのかも知れませんが、最近のことは知りません)
英文ですが、日本抗生物質学術協議会が発行しています。
 
この雑誌のEditorial Board で、Dr.Nisbet という方がいらっしゃいました。
英国でも何度かお会いしましたが、一緒に何週間も旅をし、医薬品メーカーの
研究開発部門を一通り、訪問しました。 この人物、ビーチャムという大手
医薬品メーカー(グラクソに買収されます)の副社長をやっておられたのですが、
毒性微生物の権威で、この人がいたグラクソ社と、創業メンバーの一人として
名を連ねたバイオベンチャー、XENOVA社、同氏が関与する二社だけが、
あらゆる毒性微生物を自由に輸入できるフリーライセンスをもっていました。
 
医薬品は、抗がん剤もそうなのですが、シード段階では、
天然植物・微生物由来のものが多いのです。 
基本的に、毒なのですが、やみくもに化学合成物質から
医薬品の種を探すより、毒性微生物や植物毒から探索する方が、桁違いに
ヒット率が高いのです。 英国が世界中から集めた毒性微生物コレクションと
ヒトの細胞を使った(免疫細胞や、神経細胞、ホルモン系細胞などです)
高速スクリーニングシステムは評判がよく、日本の医薬品メーカーが何十億円も
払って、利用権を買いました。
 
ある抗がん剤の大手メーカーにお邪魔したとき、八木沢さんという方が
ご挨拶に出てこられました。 Nisbet さんも、その方のお父さんのことは
よくご存知だということでした。 
素晴らしい方をお連れいただき、ありがとうございます、
と、私も深々とお礼をされました。 
(だから、知らないって、誰が、どうつながってるのか)
 
散々、嫌な思いをさせられたミドリ十字という会社の経営陣にも、
実に、素晴らしい方を、お連れいただいた、と、珍しく、
褒めちぎられました。 まあ、技術的にはおもしろい、理に適っている
と思ったから、商権を押さえたんだけど、、、 
そんなに凄い人だったのね、、、??
 
 
さて、GHQは、ペニシリン高産生菌の種株を日本の研究者に提供し、
この菌を配って、日本の戦後の医薬品産業を育てるように、指示をします。
あの米国が、ロイヤリティーフリー、つまり、無料でくれたのです。
一つの組織は、胡散霧消してしまいますが、もう一つは、
日本抗生物質学術協議会として、新薬開発にかかわる人で、
知らない人はいない、非常に重要な組織となりました。
 
新人の頃、日本の新薬は、全て、抗生物質学術協議会からもたらされた、
と、説明され、  なんのこと? そんなことないんじゃない ??? と、
いまいち、理解できなかったのですが、やがて、決してオーバーな表現ではない
ことが分かるようになっていきました。 ワクチンや血液製剤は特殊なカテゴリー
ですが、それ以
外の全ての分野の新薬について、重要な役割を果たして
きた、正に、日本の新薬開発をリードしてきた組織であるらしい、、、
ということが段々と分かっていきました。
 
ペニシリン高産生菌の種株は、原爆開発の仁科先生など、意外な人にも
配られましたが、東レなど、異業種参入組にも配られます。
 
抗生物質は、土壌中に存在する放線菌などを拾ってきて、病原菌を
殺す物質をつくっているかどうか、シャーレの上で、スクリーニングし、
ヒットすれば、毒性、副作用を調べ、量産は、日本が得意な
醗酵プロセスで合成できます。
精神病の薬などは、実際に効果があるのかどうか、人体で試験をするのが
大変、難しいのですが、抗生物質は、医薬品開発ビギナーである日本の
製薬メーカーでも、取り付きやすいものでした。 菌を殺せば、基本的な
薬効はある訳ですから、試験管の中で、ある程度まで、開発を進められるのです。
土壌菌を探してくるのも、日本酒、しょうちゅう、味噌、醤油、お酢、、、、
日本の産業界が得意な分野でした。
 
抗生物質は、医薬品の中でも、大量に取引される品目でした。
ヨーロッパに数十社大手がいましたが、実際に、物質として製造しているのは、
三社くらいで、他は、ライバルメーカーから、買っていました。 医薬品メーカーは、
政府の承認を取り、薬効や品質管理の責任を持つのが仕事であり、物を
実際につくるのは、自社である必要はありません、他から買う方が面倒がなくて
いいのです。 商社にとっても、抗生物質は物量が嵩む重要な取引品目で、
しょっちゅう、ヨーロッパの業界の「大物」と交信し、大物が日本にくるときは、
私も新人の頃から接待役をやらされました。 
沢山、種類があるようでも、大量に動くのは、第一世代と言われていた
ペニシリン系と、第三世代と言われていたセファロスポリン系です。
各々、各社から枝葉の構造が異なる類似物質が
それぞれ新薬として商品化されていましたが、
基本骨格は、ペニシリン系が6-APA (ロクアパと読みます) 
セファロスポリン系が 7-ACA(ナナアカ)と、
共通コア構造をもっていました。  
 
世界の6-APA取引市場において、
過半のシェアを握るオーストリア、
イン川のほとりにある会社の総代理店をやって
おりましたので、私も、新人初海外出張が、
イン川の巨大抗生物質醗酵プラント訪問でした。
この川には何度も足を運ぶことになり、
やはりイン川に深いご縁のある
リンパ球バンク創業者の一人の方と、
ご縁が重なっていくのですが、
当時は、そんなことは知る由もありません。
 
 
ここまででは、今ひとつ、話がつながっていないところが
ありますが、続きは明日以降、、、、
 

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