2009.3.12.
オバマ大統領が、ES細胞研究への助成金再開の
大統領令に署名したため、内外に波紋が広がっています。
まず、この「助成金再開」の意味ですが、
事実上、政府として「研究を再承認した」
に等しいものです。
米国では、基礎研究を国家機関が統制します。
国防総省、エネルギー省、全米科学財団、
国立衛生研究所(NIH)、などで、米国の基礎
研究費の95%以上を賄っています。
グラント、つまり、お金をくれるわけです。
お金の流れを制御することで、
基礎研究活動をコントロールします。
日本では、基礎研究費に占める公的資金は、
せいぜい3分の1程度であり、民間資金による
研究活動は、米国よりも、活発であり、
それだけ自由度も高いのです。
(研究費の絶対額は小さいですよ、日本は)
免疫細胞療法も、米国NIHの資金で開発されましたが、
その後、本家米国ではパタリと、少なくともNK細胞を
用いるLAK療法そのものの開発は、殆ど止まってしまい
ました。 そのほんとうの理由は、米国における「お金」を
中心に組み上げられたシステムにあります。
このテーマは別の日に廻すとして、今日の本題の
ES細胞について。
NIHのグラントが使えるとなると、米国に限らず、
日欧などからもグラント目当てに、ES細胞をテーマにした
研究活動に、沢山の研究者が群がります。
NIHの基礎研究予算は、年間、兆の単位ですから、
日本の全医薬品産業の開発費を上回ります。
日本の開発費といっても、大半が、既存製品の保険適用範囲の
拡大とか、海外で開発された医薬品を日本の健康保険適用の
ために、データを積み上げる、とか、ある程度、目標や計画が
立っている開発プログラムに投入されるのであって、
NIHのグラントは、オール基礎研究予算ですから、
全く、桁が違います。
日本のiPS細胞研究センター(略称CiRA、サイラ)が、
活動を始めてますが、
日本の手漕ぎの小船iPS丸が、一艘、弓矢を積んで、
太平洋に漕ぎ出したら、海の向こうから、
原子力空母を中心とする大機動部隊が攻めてきた、
それ位の戦力比があります。
ES細胞は、一人の人間に育つ可能性のある受精卵から取り出すため、
それは、人命を損ねる行為ではないか、と、轟々たる非難を浴びました。
この凄まじい非難のため、では、何に使うのか、
ESとか、iPS って、
本当に人々の幸福実現のために
使えるものなのか?
肝心の議論は、霞がかかり、「倫理上の問題点」に注目が集まれば
集まるほど、「素晴らしく有益なんだけど、倫理上の問題がある」
という雰囲気が醸しだされるのです。
動物実験は、「動物が可哀想!!」と、
抗議され、非難轟々となればなるほど、
「いくら科学的に必要なものとはいえ、、、
可哀想だから、、、 やめよう、、、」
そういうニュアンス、トーンとなっていくのです。
本当は、動物実験なんて、科学的には
意味がないのですから、やめるべきもの、
という、本来の論点が
隠されてしまいます。
少なくとも、研究から、開発段階へ移行した
医薬品の、「安全性」を調べる目的で、