2009.10.19.
混合診療禁止論の中で、
日経新聞にも紹介されていた説に
こういうのがあります。
「混合診療を認め
自由診療が拡大すれば
医薬品メーカーが高い費用を
かけて保険適用を申請しなくなり
未承認の医薬品が増えてしまう」
新薬メーカーに関しては、
そんなことはまず考えられません。
そもそも米国は基本的に自由診療ですが、
世界各国の医薬品メーカーは、競って、まず
米国で製造承認を取得しようとします。
米国の申請に必要なコストは一番高いのに、です。
何故でしょうか。
承認を取ると、儲かるからです。
日本の場合、どうかといいますと、製造承認を受け、
健康保険の適用が認められると
「大儲けできる」のです。
(日本は、まず、製造承認取得、すると数ヶ月後に保険適用となります)
政府のお墨付きをもらった方が、信用が上がり、圧倒的に売れる、
広告宣伝が許される、
医師は訴訟リスクを避けるためにも承認済みの
ものを用いる(特に米国では、ということですが)
医療保険は、一般に、承認済みのものに適用される
ビジネス上、大枚をはたいて製造承認取得(+保険適用)を
取った方が、どうしても得で、儲かるのです。
私達も2~3年前までは、意地悪なことを言われました。
自由診療でやってるのは儲けるためだ、
(うち、赤字なんですが、、、)
健康保険適用になると何が困るんですか!
どうして保険適用を申請しないのか!?
違うでしょう。
健康保険適用になったら、うちの会社は、大儲けできるのです。
もっとも、免疫細胞療法は、薬事法ではなく、医師法適用なので
そもそも、株式会社が、保険適用の申請など認められません。
また、小さなベンチャー企業に、巨額の開発費を負担する
体力はありませんので、申請できるとなっても、現実には
難しいのですが。
健康保険というのは、医療コストを負担するためだけに存在する
のではありません。 医薬品メーカーの「利益」を確保するためにも
存在するのです。 薬価100円、つまりその薬を一錠服用すると、
ざっくり、50~70円程度が、医薬品メーカー の利益ということも
珍しくありません。
健康保険組合から100円が薬を処方した医療機関に
支払われるとします。 以前は、医療機関は仕入先の薬問屋さんに
70円とかを払って、差額が薬価差益、つまり薬を処方すればするほど
儲かる仕組みでした。 この薬価差益がどんどん小さくなり、医療機関の
経営を圧迫しています。 いや、実態は、薬価差益が復活している、
とか、色んな話はあるのですが。
医薬品製造原価というのは、ピンきりです。
抗体医薬品は異常に高いです。
天然抽出物系も精製コストが高く、
品質管理コストが高いので原価率も高くなります。
そういう例外はあるのですが、石油化学製品系の
合成物質の場合、原価は5%程度です。
それも色んな管理費を載せたものであって、
有効成分自体の購入費は、1%程度ということも
珍しくありません。
健康保険が100円を払う薬の製造原価が、
有効成分そのものに関しては、たかが1円ということもあるのです。
「くすりくそうばい」 とか、
半値八掛け二割引、など、
医薬品商売の利幅の大きさを
あらわす言葉は昔からあります。
開発費はかかっています。
時間もかかります。
バイオ系医薬品1品目の開発費が標準2000億円程度、
基礎研究から製品販売開始まで、15~20年もかかり、
販売する頃には特許が切れているということもあります。
米国では、開発費の回収までに特許の期限が切れるために、
わざわざ、医薬品に限って、特許期間を延長する
ワックスマン&ハッチ(アクト) という法律があるほどです。
物凄い開発コストがかかるんだから、承認されたら、あとは、シコタマ儲かる、
その代わり、使用実績をモニタリングして、データ収集に努めるとか、他にも
費用がかかるのである、これが医薬品メーカーの主張です。
開発費用が高い、というのは、つまり参入障壁が高い、ということです。
本格的な医薬品開発などは、大手しかできません。
大手クラスでも資金力が不足し、合併を繰り返してきたのです。
売上1兆円とか、連結を含めると数兆円規模の巨大企業が
開発費を負担するのが苦しい、と合併を繰り返してきたのです。
つまり、実質上の寡占ビジネスなのです。
バイオベンチャーが医薬品を開発します、といって
上場しますが、まともな薬をベンチャーが開発することは
ありえません。 非常に早い段階で、医薬品メーカーに
技術を売るしかありません。
混合診療を解禁すると、自由診療が拡大し、承認を取らない医薬品メーカーが
出てくる、という説をとなえる方は、自由診療の国、米国でも医薬品メーカーは
承認を取りに行くという事実をどう考えているのでしょうか。
また、国民健康保険のお金は、医薬品メーカーの利益に化けることを
どう考えているのでしょうか。 「自由診療だから儲かる」のではなく、
「保険診療だから儲かる」のです。 話が逆になっているのです。
大体、未承認の薬が増えたら、何か問題なのでしょうか。
承認済みの薬の方が、よっぽど深刻な問題を起こしていますが。