藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

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2009年10月22日

  

えとせとら

2009.10.19.
 
 
混合診療禁止論の中で、
日経新聞にも紹介されていた説に
こういうのがあります。
 
「混合診療を認め
 自由診療が拡大すれば
 医薬品メーカーが高い費用を
 かけて保険適用を申請しなくなり
 未承認の医薬品が増えてしまう」
 
新薬メーカーに関しては、
そんなことはまず考えられません。
 
そもそも米国は基本的に自由診療ですが、
世界各国の医薬品メーカーは、競って、まず
米国で製造承認を取得しようとします。
米国の申請に必要なコストは一番高いのに、です。

何故でしょうか。
 
承認を取ると、儲かるからです。
 
日本の場合、どうかといいますと、製造承認を受け、
健康保険の適用が認められると
「大儲けできるです。
 
(日本は、まず、製造承認取得、すると数ヶ月後に保険適用となります)
 
 
政府のお墨付きをもらった方が、信用が上がり、圧倒的に売れる、
広告宣伝が許される、
医師は訴訟リスクを避けるためにも承認済みの
ものを用いる(特に米国では、ということですが)
医療保険は、一般に、承認済みのものに適用される
 
 
ビジネス上、大枚をはたいて製造承認取得(+保険適用)を
取った方が、どうしても得で、儲かるのです。
 
 
私達も2~3年前までは、意地悪なことを言われました。 
自由診療でやってるのは儲けるためだ、
(うち、赤字なんですが、、、)
健康保険適用になると何が困るんですか!
どうして保険適用を申請しないのか!?
 
 
違うでしょう。
 
 
健康保険適用になったら、うちの会社は、大儲けできるのです。
 
 
もっとも、免疫細胞療法は、薬事法ではなく、医師法適用なので
そもそも、株式会社が、保険適用の申請など認められません。
また、小さなベンチャー企業に、巨額の開発費を負担する
体力はありませんので、申請できるとなっても、現実には
難しいのですが。
 
 
健康保険というのは、医療コストを負担するためだけに存在する
のではありません。 医薬品メーカーの「利益」を確保するためにも
存在するのです。  薬価100円、つまりその薬を一錠服用すると、
ざっくり、50~70円程度が、医薬品メーカー の利益ということも
珍しくありません。 
 
健康保険組合から100円が薬を処方した医療機関に
支払われるとします。 以前は、医療機関は仕入先の薬問屋さんに
70円とかを払って、差額が薬価差益、つまり薬を処方すればするほど
儲かる仕組みでした。 この薬価差益がどんどん小さくなり、医療機関の
経営を圧迫しています。 いや、実態は、薬価差益が復活している、
とか、色んな話はあるのですが
 
医薬品製造原価というのは、ピンきりです。
抗体医薬品は異常に高いです。
天然抽出物系も精製コストが高く、
品質管理コストが高いので原価率も高くなります。
 
そういう例外はあるのですが、石油化学製品系の
合成物質の場合、原価は5%程度です。
それも色んな管理費を載せたものであって、
有効成分自体の購入費は、1%程度ということも
珍しくありません。
 
健康保険が100円を払う薬の製造原価が、
有効成分そのものに関しては、たかが1円ということもあるのです。
 
「くすりくそうばい」 とか、
半値八掛け二割引、など、
医薬品商売の利幅の大きさを
あらわす言葉は昔からあります。
 
 
開発費はかかっています。
時間もかかります。
バイオ系医薬品1品目の開発費が標準2000億円程度、
基礎研究から製品販売開始まで、15~20年もかかり、
販売する頃には特許が切れているということもあります。
 
米国では、開発費の回収までに特許の期限が切れるために、
わざわざ、医薬品に限って、特許期間を延長する
ワックスマン&ハッチ(アクト) という法律があるほどです。
 
物凄い開発コストがかかるんだから、承認されたら、あとは、シコタマ儲かる、
その代わり、使用実績をモニタリングして、データ収集に努めるとか、他にも
費用がかかるのである、これが医薬品メーカーの主張です。
 
 
開発費用が高い、というのは、つまり参入障壁が高い、ということです。
本格的な医薬品開発などは、大手しかできません。
大手クラスでも資金力が不足し、合併を繰り返してきたのです。
売上1兆円とか、連結を含めると数兆円規模の巨大企業が
開発費を負担するのが苦しい、と合併を繰り返してきたのです。
 
つまり、実質上の寡占ビジネスなのです。
 
バイオベンチャーが医薬品を開発します、といって
上場しますが、まともな薬をベンチャーが開発することは
ありえません。 非常に早い段階で、医薬品メーカーに
技術を売るしかありません。
 
 
混合診療を解禁すると、自由診療が拡大し、承認を取らない医薬品メーカーが
出てくる、という説をとなえる方は、自由診療の国、米国でも医薬品メーカーは
承認を取りに行くという事実をどう考えているのでしょうか。
 
また、国民健康保険のお金は、医薬品メーカーの利益に化けることを
どう考えているのでしょうか。 「自由診療だから儲かる」のではなく、
保険診療だから儲かる」のです。 話が逆になっているのです。
 
大体、未承認の薬が増えたら、何か問題なのでしょうか。
承認済みの薬の方が、よっぽど深刻な問題を起こしていますが。

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