2009.11.6.
自然免疫は、初めて遭遇する相手でも
即座に反応し、獲得免疫は、学習して相手を
覚えないと反応しない、 大体、こういう説明が
されています。
ここで問題は、「初めて」って、誰にとって
初めてか、ということです。
NK細胞は、がん細胞に遭遇すると、
いきなり攻撃します。
学習もしないのに、つまり、お勉強もしないのに
いきなりこれが敵だと何故、分かるのでしょうか。
本当は、「初めて」ではないのです。
個人の人生というスケールで見るから
「初めて」と思ってしまうだけで、
NK細胞にとっては、何億年もがん細胞を
殺し続けてきたのです。
初めてどころか、何億年、数限りなく、
がん細胞を殺し続けてきたので、
それで相手が、どう変化しようと、騙されないのです。
私達は生まれて、何十年後かには、殆どこの世から
いなくなりますが、私達の細胞は、母親の体内で生きて
いたのです。 更にその細胞もまた、母親のそのまた
母親の体内で生きていたものです。 NK細胞として、
世代を超えて受け継がれるいるわけではありませんが、
NK細胞に分化する細胞として、何億年、生き続けて
いるのです。 私達の体内には、数億年のがん細胞との
戦いの歴史が刻まれているのです。
感染症も同じです。
初めて遭遇するバクテリアなど、
まずいないのです。
何億年どころか、何十億年、
一緒に生きてきた相手なのです。
このバクテリアは生まれて初めて遭遇するので
免疫がない、そんなことはあり得ないのです。
あらゆるバクテリア、少なくとも人間の体内で
増殖するあらゆるタイプのバクテリアを識別する
センサーが用意されているのです。
ほぼ全てのバクテリアに反応するために、
一種類だけではなく、何種類かのセンサーのセットが
用意されており、樹状細胞にはフルセット揃っているのです。
NK細胞が持つKARと呼ばれる、がん細胞を識別する
センサーも、一種類ではなく、沢山の種類が知られており、
NK細胞は個々に見れば、あるKARが多いとか、少ないとか、
パターンに差がありますが、NK細胞集団全体で見れば、
あらゆるがん細胞を認識するのに必要なセンサーが全て
揃っているのです。
ウイルスは、少しやっかいですが、基本的には、樹状細胞に
ほぼ全てのウイルスを認識するセンサーのセットが
用意されています。
流行型がどうのこうの、という僅かな差異よりも、
まず、RNA鎖でできたウイルス特有の構造、とか、
もっと大括りに捉え、特定の構造を持つものが、
異常増殖していると、警報が発せられるのです。
生命の長い歴史の中で、目先、少し変化したくらいでは
騙されない巧妙な免疫システムが組み上げられ、
今日に至っているのです。
「初めて遭遇する」
ウイルスであっても、
がん細胞であっても、
それは、私達個人の記憶の中で
初めてなのであって、体の中の細胞は、
何億年、一緒に生き、
あるいは戦ってきた相手なのです。
少し型の違うウイルスが出現した、
そんなことは、数十億年の生命の歴史の中で、
常に、起こってきたことです。
そんなことは、何の問題でもありません。
真の問題は、多くの人が、がん細胞の増殖を
許してしまう状態、ウイルスがあっという間に
世界中で大流行を起こしてしまう、人間の側の
問題なのです。