2009.11.22.
「生物生産」という考え方があります。
生命活動によって生産される物質とか
取り込まれるエネルギーの総量という物の見方です。
地球全体で「自由エネルギー」と呼ばれる
生物が利用可能な生化学的なエネルギーを
どれだけ取り込んでいるのか、と言ったことを計算する
分野があるのです。
例えば、CO2(炭酸ガス)をどれだけ取り込んで
それを、どれだけ有機物なり、エネルギーなりに
変換しているか、という計算をするんです。
もちろん、相当の推測が入ります。
殆ど推測の世界に過ぎないともいえます。
で、一応、言われているのは、生物生産の大半が
海中プランクトンに集中している、ということです。
もちろん、諸説あり、絶対そうなんだということで
科学者の意見が一致しているのではありません。
あくまで、とりあえず有力な説、ということです。
地上の植物が吸収している炭酸ガスの量は、
海中微生物に比べれば、数分の1以下とされています。
元々、海水自体が炭酸ガスを大量に吸収する性質があります。
また、海水中のカルシウムイオンが大気中の炭酸ガスと反応して
大量の石灰粒をつくる現象もあり、こうして形成された石灰鉱床も
存在します。 こういったものとは別に、海水中に大量に存在する
珪藻類が、光合成によって取り込む炭酸ガスの量は全海水中
プランクトンの8割以上、地上の植物を含めた全生物の過半を
占めると考えられています。
珪藻は本当は鮮やかなグリーンの色素、
クロロフィルを持っているのですが、
分厚い殻をもっており、
その殻を通して見ると
茶色っぽく見えます。
この殻は地球にもっとも大量に存在する珪素と酸素から
できています。 元素の質量でいうと、地球という天体は
半分が珪素、4分の1が酸素です。 実際には、二酸化珪素
という形で、珪素と酸素が結合していますので、ほぼ地球の
4分の3が、二酸化珪素でできている、といえます。
どこにそんなのがあるのか、って、土とか砂とか岩とか、
殆どが、二酸化珪素を主成分としており、
ガラスなんかも二酸化珪素の塊です。
純粋に近い二酸化珪素の結晶体は水晶になります。
海洋観測船に乗って、ラッパ状のネットを引っ張り
プランクトンのサンプルを集めて、顕微鏡で観察する
そういうことを時々やっていました。
各地の海洋生物研究所に行くと、
大抵、玉座が設えてあります。
海洋学者であられた昭和天皇が
行幸された時に作られた、という由緒書きが飾ってあります。
で、プランクトンは、実に多種済々、
肉眼で見える動物の世界よりも遥かに多様性に富んでいます。
とはいえ、量から言うと、圧倒的に珪藻が多いです。
種類は膨大で、ディスク状から円筒形から、ありとあらゆる
形状のものがあります。
珪酸質ということは、簡単にいうとガラス繊維です。
ガラスで包んだら窒息してしまいます。
そこで、中の細胞質が呼吸できるよう、微細な孔が無数に開いています。
この珪藻が堆積し、殻が鉱物となったものを珪藻土といい、
キルン(焼成炉)で焼くと、活性炭より遥かに微細な孔が開いた
吸着力抜群の素材となります。
ビールや加工食品の濾過剤に、ニトログリセリンを吸着させて
ダイナマイトをつくる資材に、塗料のタレ止め、抜群の消臭作用を
活かして壁材や、シロアリ避け、また生化学の実験をやった人なら
必ず使ったであろう濾過助剤「セライト」などなど、用途も多彩です。
純度100%に近い、巨大な珪藻土の鉱脈、というか、
山が丸々珪藻土の塊なのですが、豪快に露天堀りを
やっておりました。 年産150万トンですから、
鉱物としてはレア物に近いですね。
(国内石灰石の産出量は年間1億トンです)
日本の鷹巣にも高純度の珪藻土の鉱脈があり、
三菱商事が買収したのですが、リノとは規模が違います。
あちらは山一つ崩しているのに対し、こちらはパワーショベル1台で
こそこそと掘っていました。
珪藻が莫大な量の炭酸ガスを吸収し、光合成により
ブドウ糖を合成、このブトウ糖をエネルギーにしたり、
他の有機物質を合成する原料にしたりして
多くの生物が活動できるのです。
魚などに食べられなかった珪藻は
やがて他のプランクトンと一緒に
マリンスノー、海中をフワフワと落ちていく
白い塊となって海底に沈み堆積します。
海底は人間の目には止まって見えますが、
年に1センチとか、僅かずつ動いており、
やがて海底のプレートとプレートが激突する
割れ目まで移動してくると、マントルの層に
向かって沈み込んでいきます。
そして熱と圧力と時間が、
珪藻の有機物を石油へと変えていきます。
現役の生物時代からいきなり石油の成分に
近いのは、赤潮の原因となるプランクトンですが、
多少、どういう構造をしていようが、プランクトンが
加圧、加熱処理を、長時間(何億年)受ければ、
石油に化けます。
この珪藻類、海ならどこにでもいるという訳ではありません。
太平洋のど真ん中には、エサの珪素分は
溶け込んでいないのです。
海底掘れば、無尽蔵の珪素の塊なのですが、
光合成するために、光が届く浅いとこをプカプカ
浮いている珪藻にとっては、陸地から流れ込む
珪素成分が頼りです。
ところが、珪素分の供給源である陸地では、
ダムが土砂を上流で堰きとめ、水田が
ミネラル分を沈殿させ、更に護岸工事により
土砂が河川に流れ込むのを妨害しています。
海岸も次々とコンクリートで固められてしまいました。
これでは、海中のプランクトンが必要なミネラル類の
補充が十分いきわたらなくなります。
複雑に絡み合う自然のシステムを
単純に捉え、 環境問題をCO2問題に挿げ替え
エコ、エコ、エコと叫び、エコだから、と、意味もなく
子供に木を一本、植えさせ、いいことをしたことにする。
その一方で、ガソリン車→ハイブリッド→電気自動車の
流れが本格化し、その先に、原発600基以上の
大量建設の波がきます。
電気だからエコな訳ありません。
電気をどうやってつくり、運び、溜めるのか。
化石燃料を燃やして発電して電気自動車を充電するなら
最初から、ガソリン車を動かす方が、よっぽど「エコ」になります。
いきつくところは、原子力で電気、とってもエコ、という方向なのです。
米国のみならず、世界のリーダーたるべきオバマ氏は、
エコのために何かをする、のではなく、石油に代わる巨大な
利権として、発電用低濃縮ウランの独占供給体制構築に
躍起となり、その応援としてノーベル平和賞を受賞しました。
石油を大元の採掘権まで、本当に国産化してしまった
唯一の国イランは、低濃縮ウランでも独自調達の途を
目指しており、オバマ陣営は戦争を仕掛けて潰そうとしています。