2010.5.9.
ポリオ騒動の続きなのですが、
タイトルをかえて、抗体について
シリーズものを。
抗体はB細胞がつくりますが、
どういう抗原を攻撃するのか
T細胞が、B細胞に抗原情報を
伝達するのである、という話を
よく聞きます。
これは、本当でしょうか。
まず、赤ちゃんのとき。
母乳には、どでっと、抗体が入っています。
生まれてすぐのころの赤ちゃんの小腸は、
大きな蛋白質でもそのまま吸収します。
母親からもらった抗体はそのまま赤ちゃんの
体内へと吸収されます。
さて、この時、抗体としての完成品をもらうわけです。
抗原にあわせて抗体を改造する、ということは
あまり行われていないようですので、つくってしまった
抗体はもう、決まった抗原に結合するのみ、です。
T細胞が抗原情報を伝えて、、、 なんて関係なしに、
事前に決まった「抗体セット」をもらうわけです。
どういう抗体が必要なのか、事前に分かっているのです。
次に、遺伝病の一種で、T細胞が殆ど成熟しない人がいます。
そして、B細胞は正常、そういう遺伝病の人がいます。
B細胞に抗原情報を伝えるはずのT細胞がろくに機能しないわけですが、
B細胞は、ちゃんと正常に機能し、血中の抗体量も正常です。
そして、バクテリアに関する感染症については、普通の人と同様に
防御できます。 バクテリアを抑える抗体は、ちゃんと分泌されているのです。
さて、如何でしょうか。
T細胞は、免疫系全体に様々な制御をかけています。
ですが、必ずしも、抗原情報伝達などなくても、
バクテリアによる感染防御に関して、B細胞は独自に
機能し、必要な抗体をつくっているのです。
この事実をもって、T細胞はB細胞に抗原情報を伝達しない、
とは言えませんが、少なくとも、抗体の機能として非常に重要な
バクテリアの感染防御に関し、T細胞による情報伝達機能は
必須ではない、ということなのです。