2010.5.24.
日本では、久留米大学のペプチドワクチンが先進医療の承認になり、
一方、米国ASCO、がんの学会としては、非常にインパクトのあるものなのですが、
そこでは、樹状細胞療法も、がんワクチン(ペプチドワクチン)も
単独では、効果は十分ではない、と、指摘されています。
完全に、真逆の対応です。
ペプチドワクチンは、何も新しいものではなく、何十年も前から散々、試されては
失敗の山を築いてきました。 それでも懲りずに、こうやったから駄目だったんだ、
じゃ、今度は、こうやろうと、何度でも目先を変え、挑戦が繰り返されます。
米国NIH(国立衛生研究所)では、がん治療としての免疫療法を考える場合、
「免疫抑制」を如何に打破するか、ということが重要な鍵を握ることを、
昔から指摘しています。 だからこそ、免疫細胞を、体の外にとりだして
培養しないといけないのである、と。 患者体内では、免疫が抑えられているから
がんが増えているのであって、そんなところへ中途半端な免疫刺激や
免疫療法をやっても効かない、免疫抑制の影響が弱まる体外で、
がんを攻撃する免疫細胞を育てるしかない、としています。
実際、80年代の半ばに大規模に行われた治験では、
CTLという、標的がん細胞を覚えたキラーT細胞を単独投与しても
効果は不十分としています。
化学療法が適用されにくい、腎がんや、悪性黒色腫を対象に、
化学療法単独、CTL(厳密には、TIL療法というのですが)単独でも駄目、
効果が認められたのは、化学療法によって、体内の免疫細胞を根絶やしに
した後、CTLを投与した場合、としています。
つまり、免疫抑制の仕掛け人であるT細胞を、全滅させると、免疫抑制は弱まる、
そこへあとから、CTLを投与すると、免疫抑制の影響が小さく、
がん細胞を攻撃できたんだ、としています。
80年代の治験であろうが、現代であろうが、「免疫抑制」がなくなるという
ことはありません。 今でも、がん患者体内は、強い免疫抑制下にあります。
だから、体内の免疫細胞が、がんを攻撃せず、がんが増えているのです。