2010.6.21.
地球に最初の生命体が誕生して
38億年になると考えられています。
この間、絶滅や再新生があったのかどうかは
議論の分かれるところですが、
最初に誕生した細胞が38億年の時を経て
今日まで生き続けている可能性もあります。
親が子供を産み、親がこの世を去っても子供が残る、
というのは、個人、個人の人生を見た場合の話です。
私達の体の中の細胞は、一つの細胞が二つになる、という形で
増え続けてきたのですから、ひょっとすると、この38億年、ずっと
生き続けてきた、つまり、私達の人生は、たかだか長くて百数十年だと
しても、私達の体をつくる細胞は、母親の体内で行き続けていた
細胞が分裂して増えたものですし、その母親の細胞もまた
母親の母親の体内で生きていた細胞が分裂してできたものです。
つまり、ずっと母方を辿っていく、私達の細胞は連綿と生き続けて
きたのであって、その年齢は、38億歳なのかもしれません。
細胞が分裂して増えたものですし、その母親の細胞もまた
母親の母親の体内で生きていた細胞が分裂してできたものです。
つまり、ずっと母方を辿っていく、私達の細胞は連綿と生き続けて
きたのであって、その年齢は、38億歳なのかもしれません。
これだけの長い歴史が刻まれた私達の体の仕組みは、
当然ながら、世の中に、どんなバクテリアやウイルスがいるのか、
「事前に」知っているのです。 「初めて遭遇する」というのは、
その人個人の人生のスケールにおいて、初めてなのであって、
私達の体をつくっている仕組み、特に基本構成単位である
細胞にとっては、「初めて」ではなく、
数十億年、付き合ってきた相手なのです。
前回、前々回の話だけではなく、もっと細かく見ても、
樹状細胞はバクテリアやウイルス共通抗原を認識する
精緻なセンサーを揃えています。
分子レベルで議論しても、私達の免疫の仕組みは、
「バクテリアやウイルスの抗原情報は、実際に遭遇する
前から、詳細に知っている」のです。
では、がん細胞はどうでしょうか。
がん細胞をみつけ次第、
たちどころに攻撃する抗体、
ってあるのでしょか。
これがみつからないのです。
「抗体医薬品」があるではないか。
いえいえ、抗体医薬品は、がん細胞にも正常細胞にも
結合します。 80年代には、「がん特異抗原」を標的とする
抗体に、強力な化学療法剤や放射線源を結合させる、
いってみれば、化学兵器や核弾頭をつけた抗体ミサイルを
正確にがん細胞を狙って撃ち込む、
所謂、ミサイル療法なるものが
盛んに開発されました。
ことごとく失敗です。
きっかけは、腫瘍マーカーCA19-9の成功でした。
このブログの最初の頃に、CA19-9の物語が
少し出てくるのですが、大腸がんに対する抗体をとって
結果的に、膵臓がんの腫瘍マーカーとして承認される
という、ちょっとした思惑違いはあったものの、見事、
腫瘍抗原を標的とする抗体が、診断薬として、
商品化されたわけです。
CA19-9の成功を称え、ミサイル療法の道が開かれたとする
判子で押したような米国バイオベンチャーの「計画書」を
何百通も読まされました。 ミサイル療法開発を標榜する
バイオベンチャーの数は、雄に500社をこえていました。
オンコジーン、発がん遺伝子を標的とするがん治療を
標榜するベンチャーも200社を越えていて、これらも
計画書の一部に、オンコジーンの産物を標的とする
ミサイル療法開発の可能性を書いてあったりしたので、
実際に、ミサイル療法開発をぶち上げたベンチャー企業は
もっと多かったのかもしれません。
計画書通りに成功した企業は一社もありません。
全滅です。
がん細胞が沢山、つくる物質
を見つけると
を見つけると
がん特異抗原だと、思ってしまうのですが、
その物質に対する抗体をつくり、
「人体」に投与すると、何のことはない、
体内の、あちこちに結合するのです。
生体物質は、金属部品とは違います。
抗原と抗体は、鍵と鍵穴のような
単純な関係ではありません。
絶えず、揺らぎ、変化し、時に突然
全く異なる形にトランスフォームします。
周囲の環境や、周囲にどんな物質が
迫ってくるかでも、全く構造や性質が
変わることがあります。
細胞膜の表面でとりなされる
非常に複雑で微妙、そうでありながら
ダイナミックに変化する様々な生体物質は
互いに影響しあい、更に一層、複雑な状況を
つくりだします。
試験管の中で精製された高純度の物質は、
まるで機械部品のようにじっとしていることもあります。
ところが、体内では、特に、細胞の表面では、
変幻自在に姿を変えるのです。
この抗体は、この抗原物質を認識するのである、
と思って、体内に投与すると、あれあれ、体内の
予想外のところに集まったりします。
がんだけを狙い撃つ精密誘導装置があるんだから、
強力な弾頭をつけて、がん細胞をぶっ飛ばそう、という
思惑は、尽く、「ハズレ」に終わりました。
そこで、発想の転換が行われます。
どうせ、体内では、正常細胞にも結合するのである、と。
そういうもんなんだ。
がん細胞にある程度、集まってくれればそれでいい。
でも、正常細胞にも結合してしまうので、核弾頭はまずい。
抗体には何もつけずに体内に投与しよう。
弾頭をつけずに、それでどうやって、がん細胞に打撃を与えるのか、
ここが、智恵のしぼりどころだったのですが、かくして、次々に製造承認を
取得したがん治療を目的とした「抗体医薬品」の数々。
これらは、全て、がん細胞にも
正常細胞にも結合するものです。
(続く、、、)