藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

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2010年06月26日

  

がん, 免疫

2010.6.26.
 
 
抗体医薬品開発の歴史においては、失敗の巨大な山を
延々と築き続けたあと、発想の転換がありました。
それから、次々に新薬が生まれるようになりました。
 
発想の転換とは、
「がん特異抗原を追いかけることを諦めた」
のです。
 
最初は、やみくもに、人間のがん細胞をネズミに注射して
ネズミの抗体をとっていました。 ネズミにとって、人間の細胞には
異物が含まれていますから、抗体はできますし、実際に、
腫瘍マーカーをみつけることまではできたのです。
 
ところが、腫瘍マーカーは、がん特異的なのではなく、
ある状態、通常、活発に増殖中のがん細胞が、正常細胞よりも
沢山、血液中に出す物質、なのであって、がん細胞しかもっていない
わけではありません。 違いは、血液中に大量放出するかどうか、
であって、正常細胞だって、腫瘍マーカーとして使われる物質を
沢山もっているのです。
 
さて、正常細胞にも、がん細胞にも存在する物質を標的にして、
どうやって、「抗がん剤」を開発することができるのか。
 
 
鍵を握るのはADCC活性なのですが、
いきなりADCC活性が主役に躍り出る前に、
別の攻撃手段、CDC活性も注目されました。
 
 
体の中には、「補体」と呼ばれる、「化学爆弾」が存在します。
全身、いたるところにある、といっても、そう間違いではないでしょう。
爆弾は、爆薬と信管を組み合わせてつくりますが、補体は
爆薬と考えてください。 破壊力を秘めながらも、簡単に爆発されると
危なくてしょうがないので、普段は、ドカンといかないように設計されています。
補体も、通常は、何も騒動を起こさず、静かに、体内の体液中に
溶け込んでいるのです。 ところが、CDC活性というものをもった抗体が
抗原と結合すると、CDC活性にスイッチが入り、補体を爆発させます。
厳密には、補体は爆薬でもあり、信管でもあるのですが、この際、
細かいことは棚に上げますと、CDC抗体が、抗原と結合した瞬間、
スイッチが入り ドカン! といくわけです。 
 
活性化された補体が連鎖反応を起こしていくと
激しい炎症が起こります。  
こうなると、がん細胞、正常細胞、ウイルス、
バクテリア、その他の物質、何であっても、
片っ端から酸化され、つまり
激しく「燃やされる」のです。 
 
スイッチを押した後は、見境なく攻撃するのですが、
抗原と結合しない限り、抗体と補体だけでは炎症反応は起こりません。
 
 
そこで、重要なのは、何を標的にすれば、見境のない補体爆弾を
誘爆させて、がん退治ができるのか、です。
 
 
リツキサンという抗体医薬品は、CD20という物質を標的とする
CDC抗体です。 CD20は、B細胞の表面に沢山ある物質です。
悪性リンパ腫のB型の場合、B細胞ががん化したものですから、
がん細胞にも、正常細胞にも、CD20抗原は発現しています。
 
ううん、、、 と。
そうなると、リツキサンは、がん細胞だけではなく、
正常なB細胞も攻撃することになります。
 
実際、そうなのですが、少なくとも、B細胞以外の
正常細胞は攻撃しないのです。
ここが、化学療法剤より優れている点です。
 
 
いきなり、がん細胞だけを認識し、がん細胞だけを
破壊してしまう精密誘導兵器を開発しようとして、
失敗の山を築いたわけですが、ちょっと目標を下げて、
正常か、がん細胞かを問わず、B細胞をやっつけてしまう
抗体を狙ったことによって、リツキサンはこの世に登場する
ことができました。
 
 
ところが、なぜ、CD20だったのか。
 

そう簡単に、答えがでたわけではなかったのです。

やはり、新たな失敗の山を築かないと、ここまで
辿り着くこともできなかったのです。
 
(、、、、 続く)

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