2010.10.31.
「NK細胞の培養は難しい」
そう言われても、培養経験のない人には
今一、実感がない、それは当然でしょう。
そこで、培養なるものの様々なケースを
紹介しながら、培養の世界の空気に触れて
いただければ、と、かなり遠回りな連載を
続けております。
ただ、福岡のセミナーが近いので
初めて、このブログをご覧になる方のため
NK細胞の培養を取り巻く、ポイントだけ
整理させていただきます。
正確に言いますと
NK細胞を、がん治療に使えるレベルまで
「活性を高め」
「十分な数を揃え」
「培養期間を自在にコントロール」
この三つを同時に成立させるのが難しいのです。
何でもいいなら、参入は容易なのです。
血液を採るとその中に必ずNK細胞がいます。
しばらく生きてはいますが、すぐにダメになります。
そこで、インターロイキン2(IL2)
という刺激物質を加えることで、
生き永らえさせることができます。
米国国立衛生研究所NIHが行った
臨床試験のように
高濃度IL2による強い刺激を行えば、
健常人以上にNK細胞の活性が高くなり、
強力にがん細胞を攻撃する状態になります。
真似をすればだれでもできます。
ですが、大量の薬剤を使用し、
とんでもないコストがかかります。
日本で行われているNK細胞療法のほとんどは
薬剤使用量が桁違いに少なくなっています。
さて問題は、その後です。
3日以上培養していると、
どんどん活性が下がりはじめます。
NIHは、10日が限界としていますが、
実際の臨床試験では、
培養期間を3日に制限しました。
日本各地で行われているNK細胞療法は、
概ね、2週間も培養をひっぱるので、
多少、NK細胞は増えていますが、
活性はガタガタに下がっています。
この間、T細胞は概ね1000倍以上
増えますので、中身はほとんどがT細胞です。
手軽に行える「日本版」LAK療法は
各地に普及し、「うちもNK細胞をやっています」
という看板がかかっています。
嘘ではありませんが、殆どT細胞の集団を
NK細胞と呼んでいるわけです。
ちなみに瀬田クリニックさんや
白山通りクリニックさんで実施している
CD3-LAK療法においても、中身の大半は
T細胞で、一部、NK細胞も混じっています。
巷の「ナントかNK療法」と、そんなに遜色ない
数のNK細胞が入っていますが、
流石に大手さんは、これをNKナントか等とは
呼びません。 うちはT細胞中心なので
がん細胞を叩くパワーは弱いですが、
延命やQOL改善を目的にしています
と正直におっしゃいます。