2010.12.30.
(前回の続き)
日経バイオ誌がNK細胞について書いた記事の一つが
日本で開催された国際会議における韓国企業の
プレゼンテーションの場面を取り上げたものです。
韓国の薬事法は、米国法をモデルにしており
免疫細胞療法も、薬事法が適用法令となります。
そのため、臨床試験のデータなどを審査され
政府が承認しないと実施できません。
現在、韓国企業が、がん患者から採取した白血球の
中から、NK細胞を選択的に増殖させて、患者体内に
戻す免疫細胞療法の臨床試験を実施していると
報告しました。
どこの国でも同じですが、患者をランダムに
2つのグループに分け、一方は、化学療法を実施
もう一方に化学療法と免疫細胞療法を併用し
両者の余命を計る、というものです。
フェーズI とフェーズIIの結果では、
有効性は確認されていない、現在、
フェーズIIIに入っているという報告でした。
丸山ワクチンも同じやり方で臨床試験が実施され
丸山ワクチンと化学療法の併用では、3年間の
評価期間終了時に、たった3%しか生存者が
いなかった、効果はそれだけしかない、と酷評されました。
もっとも、化学療法単独のグループは生存率ゼロだった
のですが、、、
何十年たっても、化学療法単独のグループと
化学療法との併用のグループの差異を見るという
基本は変わっていません。
免疫システムを傷める化学療法と
免疫力でがんを叩く療法を併用する理不尽は
子供が考えても分かることですが、
この数十年、ずっと変わらず続いている
「奇行」です。
こんな試験をやられると、NK細胞も効かないという
訳の分からない結果が出てしまうかもしれません。
そもそも、ANK免疫細胞療法であれば、化学療法と
同時併用はできません。化学療法によって、正常細胞が
異常化し、NK細胞が正常細胞を攻撃するからです。
また、化学療法後に最初に培養細胞を点滴するときは
猛烈な熱が出る傾向があります。
化学療法をお休みする休薬期間中にANK免疫細胞療法を
行う場合は、投与間隔を空け、細胞数を減らして
標準パターンより遥かに治療強度を落とします。
本格的にNK細胞で攻撃するのは、化学療法を
止めたあとです。
治癒を目指すレベルの治療強度まで、
活性を高めたNK細胞を十分量、投与すると、
化学療法と併用などできないはずです。
弱い治療強度で、延命効果を狙うものなのでしょう。
日経バイオ誌がどう解説しているかは、次回に。