2011.1.20.
今朝の東京新聞に、キリン協和のポテリジェント抗体1号製品が
来年上市の見通しとの記事がでているそうです。
今、東京にいないのでみてないのですが、
ネット上でも、早ければ2012年に上市の可能性と
報道されています。
この抗体は、CCR4という物質を標的にするものですが、
CCR4は、がん細胞にしか存在しないわけではありません。
ただ、ATL 成人T細胞白血病の場合、がん細胞表面に
大量にCCR4が発現されており、標的として選ばれました。
抗体ががん細胞に結合しただけでは、がん細胞を破壊
することはできませんが、この抗体は、まず、ADCC活性を
もっています。 そのため、NK細胞がATL細胞を攻撃する
効率を高めます。
更に、ポテリジェント加工というものがなされています。
NK細胞は、がん細胞に結合している抗体の、まあ尻尾の
ようなところを認識するのですが、その部分の糖類を
少し削るだけで、ADCC活性が100倍も強くなります。
ポテリジェント技術は、世界の大手医薬品メーカー各社に
ライセンス供与されており、今後は、従来よりも100倍
ADCC活性が強くなった抗体が続々と承認されることに
なるでしょう。
さて、ANK免疫細胞療法で培養されたNK細胞は、
単独で、がん細胞と戦わせるよりも、ADCC活性をもつ
抗体と一緒に使った方が遥かに、がん細胞を攻撃する
効率が高まることは、試験管の中では実証されています。
また、がん患者への投与ということでは、厳密な臨床試験
は行われていませんが、ドクターのインプレッションでは
相乗効果は高いと、みられています。
ポテリジェント抗体はどうなのか、というと、
どうしても、製造承認取得前の微妙な
時期は、たとえ一例であっても、例外的な使用をした
ケースがあると、審査が長引いてしまいます。
今の段階では、無理にポテリジェント抗体とANK免疫細胞療法の
併用を進めてしまうと、新薬承認が遅れるかもしれませんので、
当方としても、自重せざるを得ません。
ただ、将来のビジョンとしては、次々にポテリジェント加工された
ADCC抗体が開発されていくと、ANK免疫細胞療法の
「効き具合」がよくなり、従来よりも重度の患者さんが助かる
確率が上がるかもしれませんし、あるいは、従来よりも
細胞数を減らし、費用を抑えて同等以上の効果がでるのかも
しれません。 これはやってみないとわからないのですが、
十分、挑戦するだけの値打ちはあるでしょう。