2010.1.28.
文芸春秋誌が、慶応大学講師の近藤誠医師と
評論家立花隆氏の議論を掲載し、これに対して
他誌が、他の専門医の反論を掲載、さらにまた
文芸春秋誌が近藤氏への反論に対する
同氏の再反論を掲載しています。
議論の内容はともかく、タイトルや中吊り広告には
「抗がん剤は効かない」 とか、いやいや効くんだ、
といった相変わらずの「効く」「効かない」談義に
終始している印象を与えます。
免疫細胞療法を推進するリンパ球バンクは
近藤誠派、つまり「抗がん剤は効かない」と
主張する側だと思ってる人もいらっしゃるようですが
それはちがいます。
わたしどもは、「がんを治す」にはどうするか、
それを考えてきたのです。
使えるものなら、なんでも使うことを
検討しましょう、です。
週刊誌上で議論されていることは
どちら側であっても、「じゃ、どうやって
がんを治すのか」という視点もビジョンもありません。
そもそも進行がんは治らない前提にたち
ならば効果のない余計な治療はやるな、
という意見と、いいや、効果はある、という
意見がぶつかっているわけです。
ここで言う効果とは、もちろん
「ある物差しで測った」効果です。
患者さんが治るかどうか、
という物差しではありません。
私たちとは、異なる次元、
私たちががんと闘っている土俵とは、
別の場所での騒動と見えます。
抗がん剤は、「効果」はあります。
一時的な腫瘍縮小効果や、
ある特定の治療法と比較した場合の
延命効果、というのはあるわけです。
かといって、抗がん剤を投与し続けて
「がんが治る」ということは通常、ありません。
結局、賛成派も反対派も、全身療法としては
抗がん剤しかない、という前提で議論しているのです。
それなら、確かに、抗がん剤はいつかは、
効果がなくなり、副作用だけが
増大していくようになります。
近藤先生は、最初から治療なんかしない方がいい、
とおっしゃってるわけですが、
私どもの考え方は、ここが違います。
ANK療法を用いるという前提に立てば、
化学療法剤で、一時的に腫瘍が縮小する効果は
「意味のあるもの」、つまり、小さくなった腫瘍をANKでたたけば、
患者生存確率を高めることにつながると考えます。
また、化学療法以外の抗がん剤の中でも、
分子標的薬の評価については、今回の議論と
私たちの考え方では、
前提条件がまったく違うのです。
たしかに、分子標的薬のエビデンス、
つまり、政府の承認を得ることを前提として
行われた治験データでは、
わずかな延命効果を得られただけです。
近藤先生は、そのわずかな効果についても
グラフのカーブが不自然であり、人為的操作が
加えられた特徴が認められるという
疑義を呈しておられます。
わたしどもは、化学療法と併用される分子標的薬の
効果については、そもそも効果測定の設計自体が
おかしいと考えております。 つまり、データが事実で
あっても、近藤先生がおっしゃるような人為的操作が
加わったものであっても、どっちにしても、データの
意味はあまりない、と考えています。
特に、ADCC活性、つまりNK細胞の攻撃効率を高める
効果を期待する抗体医薬品と、化学療法を併用したのでは
肝心のNK細胞がやられているわけですから、
抗体医薬品本来の効果が出にくくなっているはずです。
ANKと分子標的薬の併用となれば、分子標的薬本来の
効果を発揮しやすい条件となります。
ADCC活性をもつ抗体は、NK細胞の活性を高める条件
で設計すべきです。 免疫を無視した設計による治験。
そのデータをみながら、効くか、効かないか、を
議論されているのですから、
どちらの先生方の主張も、私たちの考え方とは次元が
違う、すれ違っている、ということになります。
部分的な細部のデータが正しいか間違っているか、お互いの
主義主張をぶつける暇があったら、なんとか、患者さんの
命を助ける方法をいっしょに考えてほしい!!!
こちらには、最強の免疫細胞をがん治療に使う技術が
あるのです。 でも、会社はちっぽけで、お金はなく、
人数もしれています。 折角の武器を、われわれだけで
チマチマ使っていては、ほんの一握りの患者さんを
助けることができる、それがせいぜいです。