2011.4.27.
このところ、風力発電に関するニュースが増えています。
たとえば、グーグルが、1億ドル、風力発電事業に投資を
決定した、といったものですが、震災の影響で、ニュースに
なりやすくなったのであって、昔から、米国では、風力発電や
風力発電事業への投資が活発です。
「ウィンドファーム」と呼びますが
風力発電の風車を、何千本という単位で
一面に並べ、一本ずつは小さくても、数で勝負し
原子力発電所一基分より、何倍も大きな発電量を
誇るものもあります。
風力発電事業の投資検討をしたのは、97年の
ことで、まだ、日本には、18本しか風車が
立ってませんでした。 当時、大手だった
デンマークの二社、三菱重工、GEや、風力発電など
代替電力に積極的だった、総合商社トーメン(のちに
吸収合併されました)、あるいは、電力会社や
風力発電機にリースをつけたり、ファンド化して
個人投資家へ販売する商品ファンドを展開する
金融機関などと、協議を重ねました。
デンマークは、世界の先頭を切って、風力発電が
「主力級」となった国ですが、電力消費そのものが
米国とは桁違いに小さいので、総発電力では
米国が圧倒していました。
最近では、ドイツや中国が急成長しているようです。
デンマークや日本では、メンテナンスをどうするか、
ということが慎重に議論されましたが、米国では
殆ど気にしていませんでした。
「数を立てればいいんだ」
どうせ、最初から、風力の変動などのリスクを
踏んでいるのである、と。多少、故障するのが
あったとしても、わざわざ修理や点検にコストを
かけるより、初めから、多めに立てておけば
いいんだ、という考え方でした。
日本国内の建設サイト候補地、およそ2万か所の
風力変動データを見ましたが、理論上は、本気で
風車を立てまくれば、日本の電力需要を賄う位の
規模の発電能力を持つことも可能に見えました。
もちろん、今日は風が吹かないから、電気はこない、
こういう日があってはまずいので、安定的に一定量は
供給できる、他の電力と組み合わせたり、余剰電力を
揚水式ダムに「水」として貯めておき、需要ピーク時間帯に
集中放流によって、再び、電気に戻す、こういった
組み合わせが必要となります。
ただ、有力候補地の大半、もう9割以上が、
国立公園の中でした。
風が強い、というところは、おおむね、風光明媚な
観光地や、一般人が近づけない山奥だったりするので
まず、許認可の問題や、景観、野生動物保護、
更には、建設費や変電・送電コストなど、
問題は山積みです。
所詮は、総電力の何%かは、まかなえるだろうか?
というマイナーな役割を果たすのが関の山だろうなあ、、、、
そんなものより、日本の場合は、潮力発電と、波力発電の方が
はるかに現実的である、と、旧トーメンさんは、熱心に
事業計画を詰めておられました。
風力発電の国内損益分岐点となる標準販売価格は、
キロワット当たり15円前後、というシュミレーションに
なりましたが、これは、電力会社が、まあ、それ位で
ある程度は買ってあげよう、と言ってた数字とほぼ同レベルでした。
一方、工場に設置する自家発電機の余剰電力を販売する方が
圧倒的に、コストが安く、せいぜいキロワット当たり、2~3円の
コストも可能でした。 これを、キロワット5~6円で
電力会社に買ってもらうのですが、圧倒的に、供給過剰で
発電余力の数分の1も買ってもらえなかったのです。
買ってくれるかどうかは、入札で決まっていました。
風力は、コジェネというのですが、工場自家発電に
コストだけで言えば、歯が立たず、電力会社が、相当、
割高に買ってくれるおかげで、ギリギリ、投資採算に
乗ってくるものの、大量には買ってくれない、という状況でした。
結局、風力発電事業への投資は見送ることになったのですが、
スタッフの一言が、強烈に効いたのです。
「この投資はダメです。パパがダメ、って言ってるから」
「、、、????」
なんで、貴方のパパが関係するわけ、、、
と思っていると、事情を知る人が教えてくれました。
あの人のパパは、某東日本電力の○○氏なんだ、、、
電気を勝手におこして、自分たちで使うことは
ある程度、自由化されています。
ところが、Aさんが、電気をつくり、Bさんに
勝手に売ることは、原則できないのです。
結局、電力会社に買ってもらうしかない、
電力会社にしてみれば、出力も安定しない電力を
買い込んで、売る方では、質の高い電力、
つまり電圧などが変動しない電力供給を保証するのは、
とても、大変かつ面倒で、コストもかかるのです。
売り先が決まっているビジネスは、「お客様」の
ご意向次第で、勝負が決まります。
「パパがダメ」だと、見通しは暗いのです。