2011.4.28.
キリン協和発酵は、26日に、ATLを対象疾患とした
抗体医薬品の製造承認を申請しています。
ポテリジェント技術を使用した抗体医薬品としては
世界で初めての製造承認申請です。
この抗体は、CCR4という細胞表面物質を標的としています。
CCR4は、正常細胞にも存在しますが、ATL(成人T細胞白血病)細胞
の95%が、CCR4を過剰発現しているとされています。
この抗体そのものには、がん細胞を攻撃する力はありません。
作用メカニズムは、一般的な抗体医薬品と同じ
ADCC活性に依存する、つまり、抗体自身はがん細胞を
攻撃しなくても、ADCC活性をもつ抗体が、がん細胞に
結合していると、NK細胞が効率よく攻撃する、
というものです。
ここまでは、従来型の抗体医薬品と変わりません。
ところが、この抗体、ポテリジェント加工といわれる処理を
施されています。 抗体の尻尾の部分にある、L-フコースという
糖をはずすのですが、この加工により、ADCC活性が100倍
強くなることが観察されています。
国内では、ATLの患者さん、27人(28人と思ってましたが
27人、と発表されていますね)を対象に臨床試験が実施され、
ざっくりとで言うと、3人に1人は、「相当の」効果があり、
それ以外にも「そこそこ」の効果があったとされていますが、
この辺りは、これから「審査」に入りますので、余計なことを
書くのはやめておきましょう。
ATLの場合も、他のがん患者さんと同じく、
NK細胞の活性が低下しています。
能力が落ちたNK細胞であっても、
ポテリジェント抗体が効果をあげたのであれば
理屈の上では、ANK免疫細胞療法と
ポテリジェント抗体を併用すれば、
著しい効果があがる「はず」ですが。
もちろん、やってみないと、実際どうかは
わかりません。
今のところ、この抗体とANKの併用については、
患者さんどころか、試験管の中でのテストも
行っていません。
キリン協和さんには、声はかけていますが、
現状では、抗体を提供してもらうのは難しいでしょう。
新薬の審査というデリケートな時期において、
医薬品メーカーは、神経をピリピリさせます。
というのは、たとえ一例でも、「症例」があると
データを提出の上、審査に加味されるのです。
そうなると、審査期間が延びることになります。
審査は審査、目の前の患者さんに対する対応については
それはそれ、と分けてくれればいいのですが、
残念ながら、審査中や、申請前は、下手に実験も
できない、さらに、承認後も、「全数検査」と称して
新薬の納入先の医療機関を制限したり、使用条件や
使用後の副作用についてもモニタリングなど、
何かと制限がつきます。
安全確保のための、体制、であることは事実なのです。
ただ、同時に、治療の選択肢を広げたい患者さんにとっては、
「規制」を受けてしまう、という一面もあります。