藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

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2011年05月30日

  

えとせとら, 免疫

2011.5.30.
 
 
iPS細胞は、実際に人体に使用することはない
という前提で、一個の幹細胞から
組織を再生するまでの、プロセス開発の
道具として開発されました。
 
当然ながら、どうやって、組織再生を
為すか、に議論が集まります。
 
ところが、実用上は、再生以上に、
生着の方が問題です。 また、そもそも
再生医療として、実現すべき適用分野とは
何なのか、そちらの方が重要です。
 
iPS細胞より先行して実用化された培養皮膚や
実用化の手前あたりまではきた角膜について
紹介しましたが、今回は、「骨」です。
 
 
患者さんから取り出した細胞から、
人工的に骨の組織を再生し、
患者本人に再移植しよう、という
プロジェクトに、日本のベンチャーキャピタルが
10億円単位で、資金を投じてきました。
 
私は、そんなもの無理だから、と一蹴するので
随分と嫌われましたが。
 
肉眼で、見た目、骨のようなものはできるのです。
ところが、組織や個々の細胞は異常化しています。
そういう組織再生上の難しさもあるのですが、
そもそも、骨なんか再生して、何に使うのか、
そっちが問題です。
 
 
高齢者が骨折した場合など、
本人の再生能力が低い場合、
チタンやセラミックスなどで
作られた人工骨を使うことになります。
こういうものを、骨があった位置に
挿入してしまうと、もう本人の骨の
再生は期待できませんが、最初から
再生は無理と考えられる場合は
人工骨使用となります。
 
私は、右腕の上腕の橈骨が粉砕され
右腕が、ダラリと肩からぶら下がった状態になり
左腕で、「重い肉と骨の破片がジョリジョリする塊」
を運んでいたことがあります。
これを何と、ギブスだけで治すことも不可能ではないと
おっしゃる整形外科医に、おもしろそうだから、
やってみて、と言いたくなりましたが、
結局、長時間に及ぶ手術を受け
ステンレスの棒を右ひじの関節にぶらさっがっていた
橈骨の端っこと、肩の関節につながっていた
部分の橈骨にそれぞれ、ボルトで留め、さらに
その辺にごろごろころがっていた骨の断片を、
やはりビスなどで、適当にステンレス棒にくっつけ
何となく、自前の骨が再生するであろうイメージ上に
並べていただきました。
結局、骨の破片は全て溶け、そのあとから自前の
骨が生えてきました。
 
他にも、頸やら、背骨やらを骨折しましたが、
頸の骨が飛び散った破片は今もも残っていますが、
あとは、おおむね、治癒しています。
生命力、体力がついてくると、
骨が生えてきたので元に戻りました。
ところが、体力が地を這っていた時期
骨が生えるどころか、元々あった骨まで
どんどん溶けていったのです。
 
 
結局、再生能力が低くなってしまった人に、
骨の塊を入れても、くっつかないのです。
組織再生技術により、試験管の中で、本人の
細胞から、骨にまで育てたものができたとして、
患者さん本人の体に、再生能力が残っていないと
つくった骨と本人の体が結合することができません。
 
逆に、再生能力が高い人の場合、
基本的に、「放っておく」と治ります。
やるとしたら、金属による「添え木」です。
骨折してから、あなたの再生骨をつくるまで
何週間とか、何か月お待ちください、と言われても
待ってられません。 それだけギブスで固めたら
軟骨が固まってしまい、元に戻すのは大変です。
 
今、すぐ使えるもの、でないと当座の役には
立ちません。 
 
そして、適当に、ヒドロキシアパタイトとか、
骨の材料になる物質を、粒状などにして、
骨折部位に放り込んでおくと、あとは、
本人の再生能力があれば、自分で勝手に
元に戻るのです。
 
 
前回、紹介した再生皮膚「ジェイス」の場合、
重度熱傷により、もう本人の皮膚が自力再生するのが
難しい、という適用となっています。
だから、生着するのも難しい状態なわけですが。
骨の場合は、これに加え、強度の問題もありますし、
可能な限り、体を動かせる状態にしないと
後のリハビリが大変です。
 
自分の経験では、右腕を8ケ月ギブス固定したので
もう、そのあとのリハビリは、「拷問」です。
微動だにしない肘関節に、大人の男性の体重をかけ
強引に、「曲げて」いくのです。
二年間、毎日のようにこの拷問を受け続け
あまりのストレスに、腸に二か所、穴があき
血圧が、上で30まで下がったこともあります。
でも、そこまでやっていただいたので
今、パッと見は、ふつうに見えると思います。
理学療法士の方には、よくやっていただいたと
感謝しています。
 
 
さて、iPS細胞のような一個の細胞から
骨の組織を再生する技術が、将来、完成したと仮定しても、
どうやって、どんな患者さんに使うのでしょう。
 
該当者はいない、と思います。
 
 
(続く)
 
 
 

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