2012.1.26.
(前回からの続きです)
かつて年代測定は、とてもいい加減で
胡散臭いものでした。
90年代ころより、年代測定に限らず、
考古学者が使える道具が爆発的に進歩し
「そこまで分かるの?!」ということまで
分析できるようになってきました。
今日では、花粉の遺伝子を分析するなど当たり前に
行われており、恐竜のような億年単位の化石であっても
タンパク質の構造が直接、分析されたこともあります。
ティラノサウルス「スーちゃん」の全身骨格から
およそ1万のサンプルを取り、カルシウムの放射性同位元素の
存在比率を分析し、骨が生成された温度が推定されました。
スーちゃんは、頭や腹、尻尾の先に至るまで
今日の哺乳類よりも遥かに、「恒温」つまり、
体の部位による温度差が一桁少ないことがわかりました。
恐竜は爬虫類や、爬虫類から進化したと考えられる
哺乳類よりも、各段に進化した特徴をいくつも
もっていますが、体温調整機能についても
哺乳類より遥かに優れていたことが示されました。
さて、すったもんだの挙句、「人類最初の女性」ご本人の
年代測定は行われていないのですが、化石が発見された
地層の年代は、320万年前のもとされ、今日では
あまり議論もされなくなりました。
彼女と同じ種「アウストラロピテクス・アファレンシス」の化石は
僅かな例外を除き、東アフリカ大地溝帯に沿って集中的に発見されており
その年代は、450万年前から200万年前まで、250万年間に
わたっています。
つまり、即物的に言えば、
最初の女性の化石ではない、ということなのですが
彼女を人類最初の女性と表現することに、科学者もそれほど
抵抗感はないようです。 何といっても、人類の定義である
直立二足歩行の直接の証明となった唯一の存在であり
他の化石は、たしかにもっと古いものもあるのだけど、
下顎など、一部しかみつかっておらず、直立二足歩行である
証明はできません。あくまで、「彼女」と同じ種であると
考えられることによって、直立二足歩行する「人類」として
その存在を認められているのです。
「美しい人」は、圧倒的な存在感と共に
今もなお、人類史に燦然と輝きを放っているのです。