2012.1.27.
現時点では、最古の人類とされる
アウストラロピテクスアファレンシス
「ルーシーとその子供たち」は、
東アフリカ大地溝帯に集中的に化石が
みつかっており、広大なサバンナ、
草原には進出していなかったと
考えられています。
少なくとも、骨格上、ただのサルと
ほぼ変わらないルーシーとその子供たちが
ノコノコ、サバンナに進出したら、
たちまち肉食獣のエサになっていたでしょう。
ちなみに、東アフリカ大地溝帯というのは
実際には、東アフリカより大きく、
最南端は南アフリカ共和国ですが
最北端は、レバノン北部、シリアとの
国境に近いガディーシャ渓谷です。
この渓谷には、二度、訪問しています。
ほんとうに、深い渓谷の底がせりあがっていき
最後は、まあるく渓谷の両側の崖が閉じ
そこに最後の天然のレバノン杉、数十本が
はえているのですが、中には数千年の樹齢の
ものもあります。
東アフリカ大地溝帯には巨大な湖がいくつも
ありますが、多くは塩湖です。
アビアータ湖にいった時は、空気が粘っこく
正に海辺にいった感じでした。
何十万年も前の世界に突然、飛び込んだような
現代の地球のどこの感じとも異なる不思議な空間でした。
初期人類は、少なくとも250万年間、
大地溝帯の塩水の水辺から離れようと
しなかった、と考えられています。
海辺で発生した人類は、海辺に近い
環境に住み続けたのでしょうか。
ところが塩湖には、海辺ほど豊富な食料はありません。
この時期、人類は何を食べていたのか、精力的な
研究が行われてきました。
有力な説の一つが、「骨髄」説です。
肉食獣が食べ残した動物の骨を石で割り
内部の骨髄を食べていた、というものです。
骨髄は死後10日程度、放置しても腐らず
豊富なリン脂質とタンパク質を蓄えた良質な
食料です。
ライオンなどは、骨まではしゃぶりませんので
骨髄は残されるのです。
これを食べるライバルはハイエナです。
ライオン以上に丈夫な下顎で骨を砕き、
中の骨髄を食べます。
現代のサバンナには、クロハイエナと
ブチハイエナの二種類が生息していますが、
かつて、大地溝帯の水辺にはたくさんの
種類のハイエナが生息していて、人類の
進出と共に急速に絶滅し、水辺よりも
サバンナの中心部を主な生息域とする
二種類だけが生き残ったと考えられています。
ルーシーとその子供たちが、良質の骨髄を
あさり、ほとんどのハイエナを絶滅に追いやった
という説もあります。
骨髄を大量に採ることで、神経に必要なリン脂質を
採れるので、これが脳の増大につながったという
説もあるのですが、化石上は、250万年間
脳の大きさはサルと同じままでした。