2012.2.18.
1970年代より、
ペプチドを医薬品にしようという
開発は、後をたちません。
そして、実用化されたものは
ありません。
ペプチドは、アミノ酸が
何個かつながったものです。
試験管の中では、
それなりに仕事をしてくれるように
見えても、体内では、たちどころに
バラバラにされます。
たとえば、カルボキシペプチダーゼという
酵素が、体内いたるところに転がっています。
ペプチドを分解する酵素という意味で
ペプチダーゼ、です。
ペプチドは、原則、アミノさんが
一つずつ、鎖状につながっていくので
両端ができるわけです。
一方をアミノ端末、もう一方をカルボキシ端末と
呼びます。 カルボキシペプチダーゼは
ペプチドのカルボキシ端末側から、
一個ずつ、順番に、アミノさんと隣の
アミノ酸の結合を切断していくのです。
どういうアミノ酸がいようが関係なし。
軒並み、バラバラにします。
体内は、こういう酵素活性で満ちているのです。
必要なものは、分解されないように、うまく
畳み込んだり、何かで保護したり、工夫を
しているわけです。
そこへ、丸裸のペプチドを放り込んだら
あっという間に、バラバラにされます。
たんぱく質は、ペプチドより遥かに安定
しています。 それは、カルボキシ端末を
うまく畳み込んでいいるからです。
たんぱく質もアミノ酸がつながったものという
ことでは、ペプチドと同じなのですが、
アミノ酸の数が一桁~二桁多いのです。
そして、複雑な立体構造をもちます。
こうして、毛糸の玉の端のように
そこを引っ張られるとダメ、という弱点を
隠しているのです。
たんぱく質を分解するには、
端からかたっぱしに分解する
エキソプロテアーゼという
(カルボキシペプチダーゼもその一種です)
ものだけではなく、エンドプロテアーゼ
たとえば、セリンというアミノ酸がある
ところだけ、鎖を切る、とか、長い鎖の
途中で、特定のアミノ酸配列だけを認識して
切る酵素も働き、それで、やっと、バラバラに
できるのです。
こうして、最初は、ペプチドだ!
とやってみるのですが、まず
うまくいきません。
そこで、ペプチドを分解されないように
化学物質をくっつける、糊で包む
細胞に即座に取り込まれるよう
信号物質(シグナルペプチド)をつける
ありとあらゆる工夫をするのです。
でも、結局、やっぱり、たんぱく質にしないと
全然、安定性がなくてだめ、という結論に
至ります。
では、たんぱく質にすれば、がんワクチンが
できるのか、というと、まだまだ別の問題があります。