藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

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2012年03月06日

  

がん, 免疫

2012.3.5.
 
 
ペプチドワクチンの膵がんに対する
フェーズII、及び、フェーズIIIの
治験の結果が発表され、延命効果を認めず
提携していた医薬品メーカーも、
ペプチドワクチン開発の見直しを
検討するとしています。
 
関連するオンコセラピーサイエンス社の
株価が急降下しています。
 
よその会社や、その株主さんたちの不幸を
喜ぶ気持ちは全くありません。
 
このブログでは、なぜ、がんワクチンが
意味がないものなのか、ということを
具体的に書いてまいりましたが、
ほらみたことか、と揶揄する気持ちも
ありません。
 
 
大切なのは、患者さんにとってどうか、
ということです。
 
これで治るかもしれない、
ダメ元でも、とにかくやってみよう、、、、
ペプチドワクチンの治療を受けている方、
これから受けようとされておられる患者さんの
お話を聞かせていただく機会は何度もありました。
 
どう答えるか、一番、難しいんです。
 
標準治療や先進医療は簡単なのです。
そういったものだけで進行がんは治りませんが、
症状によっては、使い道はあります。
 
 
問題は、ANK以外の免疫系の治療です。
 
ペプチドワクチンの場合、
結論は、「そんなものが効くはずはない」、のですが
信じて、頼っている方に、一刀両断の否定をすると
がっかりされてしまいます。
 
かといって、いくらなんでも、がん治療にワクチンというのは
無理がありますので
事実は伝えざるをえません。
 
 
インフルエンザに感染してからワクチンをうつ人はいないのに
なんでまた、がんを発症してから、ワクチンをうつという
発想がでてくるのでしょう?
もし、がんをワクチンで治療できるなら、
インフルエンザに感染した人は、直ちにワクチンをうてばいい
ということになってしまいます。
ちなみに、それは意味がないだけではなく、やってはいけないことです。
余計なものを投与すると、免疫かく乱を起こして、かえって
治るのが長引く可能性があります。
がん治療に重要な主役は、細胞性自然免疫であり
補助的なものとして、細胞性獲得免疫があります。
液性免疫は、あまり関係がないのは常識です。
ペプチドワクチンが誘導するのは、どうしても
液性免疫になりがちです。 つまり、がんと闘うべき時に
無関係の免疫系を刺激する危険がある、ということです。
(そこまで強い刺激ではなさそうですが)
 
 
がんワクチンは科学的には何の根拠もなく
むしろ、効かないという根拠があり、
過去、実施された膨大な臨床試験の結果も
「効果なし」の山となっています。
日本ではがんワクチンの開発が難しいなら
米国ではやれるのかというと、反対です。
米国では、散々、がんワクチンの臨床試験を
実施して、基本的に効かないものという
結論はでています。
 
 
ただ、絶対に100%効かないのかというと
そこは、ワクチンですから、
非常に強力なアジュバント、つまり
自然免疫を刺激する物質を添加しておけば、
ペプチドがあってもなくても、条件次第で
治療効果がでる可能性はあります。
もちろん、ペプチドワクチンが効いたのではなく、
アジュバント単独投与による免疫刺激効果の
影響がでただけ、ということですが。
 
 
では、アジュバントをどんどん単独投与すると
がんが治るんでしょうか、というと、そうはいきません。
かなり危険なアジュバントにしないと治るレベルの
効果は期待できませんし、安全な範囲のアジュバントでは
ほとんど効果はありません。
 
ちなみに、丸山ワクチンは、名前がワクチンであっても
実際はワクチンではありません。
免疫刺激が非常に弱いアジュバントの一種です。
刺激が弱いのですから、治療効果も弱いのは当然です。
 
 
がんと免疫の関係が、ようやく一般にも認識されはじめ
がん治療が真っ当な方向へ向かう可能性がでてきたのは
いいのですが、一方で、腫瘍免疫と直接関係ない免疫を
無理に動かそうとする免疫系の治療が広がり、結局、
効果ない、という形で消えていけば、かえって、患者さんを
混乱させるだけです。

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