2012.11.3.
iPS細胞と、正常細胞が、がん化する
プロセスの類似性に関する論文が
発表されていましたが、今回は、
有名なメディアにも取り上げられました。
(ナショナルジオグラフィック ウェブ版)
あるタイプの胃がんの発生プロセスにおいて
「SALL4」と「KLF5」遺伝子という、iPS細胞に
利用される遺伝子の活動が、活発化される
というものです。
この論文そのものの評価は棚に上げさせて
いただきますが、当然、あり得る話でしょう。
がん発生メカニズムは、部分的には様々な
プロセスの解明が進んでおり、かといって
では、一言で、がん化を説明して、と言われると
なかなか、全体像を表すことは難しい、
そういう状況です。
ただ、何十年も前から、概ね、通常の体細胞が
未分化な状態に戻るプロセスと、そこから、
がん化していくプロセスを経て、さらに、悪性度を
増していく、という「あらすじ」が語られてきました。
体内に存在する様々な幹細胞が、がん化する、
そいうい可能性もありますが、ある程度、分化が
進んだがん細胞が、がん幹細胞に戻る現象も
知られていますし、そこそこ分化が進んで、
割と決まった組織にしか化けることができない
体幹細胞が、かなり何にでも分化することが可能な
大元の幹細胞に戻っていく現象も知られています。
分化というのは、細胞レベルでは、一方通行とは
限らず、「脱分化」、つまり受精卵から分化を
進めてきたプロセスを逆戻りすることも、
そこそこ、発生している、ということでしょう。
さて、iPS細胞というのは、体細胞を脱分化させ
さらに、そのあと、急激に増殖させるのですから
がん化プロセスのようなものを人工的に
引き起こしている、という風にも見えます。
もちろん、脱分化しただけでは、がんになるわけでは
ないので、あくまで、「iPS細胞には、
がん化プロセスとの類似性が見受けられる」
ということであって、がん化そのもの、
と言えるほど、単純ではありません。