藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

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2020年04月14日

  

くすり

消毒用アルコール不足のため、厚労省が医療機関でアルコール濃度が高い酒類をアルコール消毒液の代用とすることを認めるという見解をだしています。一方で次亜塩素酸ソーダをアルコール消毒液の代わりに使うケースが多いことに関しては、有効性の確認は取れていないという専門家意見なるものが示されています。

 

消毒というのは意外とむつかしいもので何でもいいわけではありませんし、相手によって向き不向きがあります。次亜塩素酸はウイルス向きでもなければ、細菌に関しても効果があるのはあるタイプの細菌だけです。新型コロナウイルスに対してはエタノール水が推奨されているわけですが、ノロウイルスやロタウイルスの場合はアルコールに対して極めて安定です。 (エタノール100%より、70%エタノールとか、少し水が含まれている方がウイルスを包むリン脂質系の被膜を溶かす作用が強くなります。)

 

次亜塩素酸は水道水の消毒にも使用されているほか、それ以上に台所、トイレ、お風呂の消毒殺菌用に大量の家庭用雑貨の主成分としても使用されています。ものすごく種類が多いようにみえても要するに次亜塩素酸+アルカリか、あるいは酸素系か、2種類のどちらかであって、微妙に濃度が違うとか、香りが違うとかサラサラなのか粘りがあるのかといった違いだけです。用途ごとに何種類も買う人がいますが、すぐに洗い流すサラサラ品か、カビ対策などでしばらく吹きかけたところに文字通り粘っていてほしいので粘々したタイプを買っておくかすればそれで充分です。

 

これほど馴染みのある次亜塩素酸であり、どこにでも転がっていますからアルコール消毒液が買えなければ、まあ次亜塩素酸の消毒液でいいだろう、と考える人がたくさんいらっしゃるようです。

 

ドデッと塊として落ちている飛沫核にウイルスがべったりくっついたものに対して、次亜塩素酸消毒液をふきかければ分散させることにはなるでしょうし、そこに雑菌がこびりついて粘々しているなら殺菌によって粘りが薄れるとか、何か効果がある可能性はありますが、水で洗うのと何が違うかというとあまり変わりはありません。 アルコールや石鹸であれあばウイルスのリン脂質でできた被膜を溶かしてしまうことができますが次亜塩素酸ではその様な効果は期待できません。 ウイルスの失活には原理的に「関係ないはず」です。 

 

熱帯地域やアフリカの感染症が日常的に大量発生している地域へ行く際に、次亜塩素酸を携行する人がいます。 これはNGな行為とされています。もっていくこと自体は構わないのですが、そんなもので様々な病原体を除去できると思っているなら大間違いだということです。

 

次亜塩素酸は都市型細菌を殺菌する目的でつかわれるものです。指示菌ともいいますが代表的な都市型細菌は大腸菌です。つまり本来の生活圏は人体の消化管内でありながら、排泄物とともに外部環境に放出されてそのまま生き延びたものを都市型細菌と呼びます。 大腸菌だけではありませんが大腸菌がいるということは他の腸内細菌もいるんだろうと見做して、飲み水の検査や食品検査、医薬品原末の検査にはよく「大腸菌の有無」という検査項目があり「生菌数」とか「一般細菌数」という検査項目とは別に大腸菌がいるのかいないのかを調べるケースが多いです。 大腸菌が存在する=人体から排泄された微生物群が生息している、という意味ですので人体内で生存、あるいは増殖可能な寄生虫をはじめあらゆるものが「居る」可能性があります。ひとつずつ検査してられませんので大腸菌を見ておく、という決まりになっています。 逆に言うと大腸菌は糞便などに混じって自然環境に排泄されない限り、それほど野外環境で生息できないのです。里山の土や腐葉土の中から大腸菌が検出されることは珍しくありませんが、それは動物や山に入った人のいわゆる「野糞」などによって撒かれたものですが時間とともに野生の土壌細菌などに圧倒されていきます。 次亜塩素酸はこうした辛うじて生き延びている都市型細菌を殺すことはできますので水道などの消毒に使われています。 ところが野生の土壌細菌などはほとんど死んでくれません。 ですのでアフリカの都市部ではない衛生環境がよろしくないところに探検なり援助なり、プラント工事などにいくのであれば次亜塩素酸で消毒した水だから大丈夫だと、間違ってもそう思ってはいけない、たちどころに様々な病原体を飲み込むことになりかねない、ということです。

 

水道水は次亜塩素酸だけで処理しているのではありません。凝集剤を投入して水中に「浮いている物」を除去します。SSというのですが、濁りを取るといってもいいです。溶けているのではないのに水中に漂っている物は電気的に反発しながらあまり大きな塊にならないで水の中を漂っています。そこへ凝集剤を投入して攪拌します。するとそれまで「浮いていたもの」は凝集剤によって電気的に中和されて反発力がなくなり大きな塊になるまで互いにくっつきあってどんどん沈んでいきます。大きな沈殿槽の底に固形物が溜まっていき、上澄みのきれいな水だけが次の工程に送られるのが一般的ですが小さなプラントですぐに処理する場合は遠心することもあります。そうすればウイルスであれ細菌であれ寄生虫であれ、どんな病原体であっても単独で水中に浮いている物以外はほぼ除去されます。 さらに膜濾過すればあまりにも細かいウイルスは除去できませんが大方のものは除去されます。 そして活性炭処理すれば相当細かいものでもやはり電気的に吸着されますので、ほぼきれいな水になり、念押しで次亜塩素酸を投入しておけばまあまず問題はないと考えられています。 冷静に考えると次亜塩素酸はなくてもいいような気がするのですが、、、、 私がアフリカの難民キャンプに持参したのは昔の水道水の浄化の主役であった珪藻土フィルターです。スイス陸軍が正式採用した軽量小型の優れものでした。 珪藻土の分厚い層(飲み水用の簡易式浄水器なら1cm程度、大規模プラントなら数十センチ厚)を通した水を飲むのです。 手押しポンプでシリンジの空気を抜いて内部を陰圧にすることで外から水がフィルターを通り浄化されてたまります。 こうした物理的処理によって寄生虫でもウイルスでも何でも濾過・吸着するのが野外での浄水の基本です。 浄水プラントを持ち込む場合は軽トラックくらいの大きさの簡易浄水プラントをもっていくのですが、この場合、浄水の主力プロセスは「砂濾過」です。前処理として凝集剤を投入して軽い遠心でSSという濁り成分を除去してから、濾過です。 濾材の「砂」は活性炭ではないのですがそれに近い微小な孔がたくさんあり吸着力もあるのでウイルスをトラップし、細かく詰まった砂が寄生虫や細菌を捉えます。

 

なお震災などに備えて水を浄化して飲むための道具としては簡易手押しポンプで膜濾過し、膜が詰まると濾過した水を逆噴射して再生するシーガルフォーという小物を備えています。これは水爆を開発したローレンスリバモア研究所が核兵器を使用し、かつ生物化学兵器を使用した後の環境で腐乱死体が浮いている水源のドロドロの水を浄化して安全に飲めるという要求仕様を満たすべく開発したもので、大量の水を確保するのは無理ですが飲み水くらいならどんな汚い水からでも浄化できることになっています。幸い、使ったことはありませんが。ただし、この装置で濾過した水はただの水であって、一応、ミネラルはそこそこ残っていますから飲み水としては、膜濾過の際にミネラルがほとんど失われている市販のミネラルウォーター(原料の水がミネラルウォーターなのであってボトルに入ってる水は脱ミネラル水です)より優れたものですが、濾過水を消毒液に使うことはできません。今回のウイルス騒動については何の役にもたたず、あくまで大地震に備えてのものです。

 

 

自然界には寄生虫、カビなどの真菌、細菌、ウイルスといろいろいますが、胞子や耐久殻をもつタイプは何しても死んでくれず、800度Cで焼いても生き延びるやつがいます。 いろんなのがいるわけです。 細菌は一匹なら弱くても「巣」をはっているとなかなかしぶといです。 腸内細菌が巣を張っているところへ口からビフィズス菌であれ何であれ、何を入れても巣を張るジモティーに圧倒され、子供に形成された腸内細菌の「縄張り」が変わることはまずありません。ましてや野外に巣を張るワイルド満点の土壌細菌は強靭な抵抗力を示し、少々のことでは死んでくれません。 こうした「いろいろいる」ものを一発で消してくれるような消毒薬はほとんどないのです。 二酸化塩素という優れものがありますので、ないとはいえないのですが安定ではないので使い方を心得ていないとうまく機能しません。 なお二酸化塩素は塩素と名前がついていますが機能としてはオゾンの強いもの、酸素系の殺菌剤です。 

 

 

感染症対策の一環として各国の軍がよく使うのは二酸化塩素ですが、一般に手に入りやすいもので新型コロナウイルスの構造の一部であるリン脂質の膜を溶かしてしまうというとアルコール消毒液がもっとも妥当ということでアルコール消毒が推奨されています。消毒剤ならなんでもいいだろ、とはいかないのです。

 

本気で使うなら二酸化塩素がもっとも幅広く様々なものを無毒化でき強い消毒作用をもち、しかも安全性も高いのですが、ほとんど普及していませんので今回の騒動には間に合いません。 次亜塩素酸の方が広く使われている理由の一つは安定性です。水道水に投入しておくと、実際に家庭などで使われるまで、安定して塩素濃度を維持できます。そのことに意味があるのかですが、規制がそうなっていますので現状では他のものはほとんど使えません。 安定であえるということの裏を返せばそれだけ反応性が低いということですので消毒作用(化学反応性)も低いということなのですが。 二酸化塩素は水中で不安定であることを理由に水道水の消毒剤として採用されないのですが、反応力が強いから不安定なのです。用事溶解、使う時に反応状態にするタイプであれば非常に有力な消毒剤になります。 なおプールの消毒に使われるのはシアヌール酸という塩素化合物の一種ですが、無機物である次亜塩素酸より複雑な構造をもつ有機化学物質を塩素化したものです。これを世界中に販売していた担当者に聞いたところ、米国西海岸の需要が大きいといってましたが、特にハリウッドのように砂漠に作られた街では水が貴重で、深い自宅プールがあることがステータスになっているエリアで豪邸の庭にどん深プールがあり、水を換えないのでドカドカと信じがたい量のシアヌール酸を放り込むそうです。 ビバリーヒルズ族などのパーティーに呼ばれても間違ってもプールの水は飲むなよと釘をさされました。上空から眺める分には美しいブルーのプールがきれいに見えるのですが。

 

次亜塩素酸もシアヌール酸も塩素の殺菌力を活かすものですが、「人由来」の都市型細菌以外は塩素にかなり抵抗します。 一方、活性酸素に耐えるものはなかなかいません。二酸化塩素は塩素ではなく、活性酸素の殺菌力を用いるもので強力なのですが反応性が強い分だけ安定ではなく、使用に際してサッと反応性を高め、概ね30分もすれば活性は消えているというようなものです。そのためただ容器に詰めて一般雑貨として販売してどこかに置いておくと、当然、失活して効果がありません。二酸化塩素はその性質なり使い方なりをよく知っている人が使う前提でないと製品化はむつかしいです。

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