藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
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2013年04月23日

  

えとせとら

TPP導入により、米国は徹底して日本の米市場を 狙ってくるのでしょうか。
そんなことはないでしょう。  結果的に、米市場も荒らされるかもしれませんが狙ってくる、ということはないでしょう。

農作物に関しては、基本的に米国は自由貿易を嫌うのです。 牛肉もオレンジも競争力がなく、自由化されたら、 ひとたまりもなくブラジル産や、オーストラリア産などに圧倒されるのです。

そもそも、TPPは、自由貿易の促進を目的としたものではありません。
自由な投資活動の実現を目的としたものです。
最大の標的は、日本の医療市場です。

また、農産物に関しては、遺伝子組み換え作物の表示義務撤廃が、米国の永年の要求です。 「遺伝子組み換え作物を使用していない」といった表示を一切なくせ!  日本人が、遺伝子組み換えを意識しないようにしろ!  というのが、米政府が大上段に構えて要求し続けてきたことです。

遺伝子組み換え作物の代表作はトウモロコシです。
大豆やトマトもありますが米は、米国の「関心の外」です。

 

米は、米国資本にとって、どうでもいい作物です。
いったい、世界で、何トンつくられているのか、よくわかりません。
1億5千万トン、とか、いや、もっと多い、、とか。
いくつか統計数字をみたことはありますが ほんとうのところは、ちゃんと計量されていないのです。  国際統計というのは、ほとんどが、 実際には「数えていない」ものです。

世界人口なども、実は、誰も数えていないのです。  国連は、各国から報告があった数字を足し算しているだけ。  各国はどうかというと、真面目に数えている国は、ごく少数です。

一方、トウモロコシ、小麦、大豆は、 商品先物相場も立ち、生産・貿易量の
国際統計も整備されています。  作付け状況や、育成レベルも、人工衛星から赤外線映像などで、トレースされています。

米は、生産国内での消費が多い、というのが、
米国資本が寄ってこない理由の一つです。
また、米の種は、「統制」がなされていません。
日本のコシヒカリの種は、いとも安易に中国にわたり、
中国から、カリフォルニアへ持ち込まれました。
カリフォルニア米は、確かに美味しいものが多いですが
コシヒカリそのものや、コシヒカリをベースにつくられた
品種が多いのですから、当然です。
農家は、その気になれば、自分で種もみを確保できるので
わざわざ、高い対価を払ってまで、種を買うひつようはありません。
価格をおさえないと、買ってくれません。
ここに企業が入り込む、独占性の仕組みがないのです。

その点、トウモロコシは、米国企業が、
種子を遺伝子レベルで管理し、
農家に販売しています。
収穫から得られた種子は、遺伝子のバランスが
崩れてしまう工夫がされているので、
農家は、毎年、新たに種を買う必要があります。
小麦は、欧州企業が同様の仕組みを構築しています。

遺伝子組み換え作物の種といっても、
遺伝子を組み込んで、安定させてしまうと
あとは勝手に、農家が自分で栽培して、
種を回収すればよくなるので、
遺伝子操作を加えた種子であっても、
種子事業として収益を狙うためには
古典的な、「一代限り」の遺伝子バランス手法
(いわゆる雑種第一世代法)を
使うことになります。

また、飼料や加工食品原料として、
米も利用可能ではありますが
トウモロコシの方が、使い手があります。
大豆も、加工性のバリエーションに加え
飼料としての価値も高いものがあります。
また、大豆たんぱくに、牛脂をまぜてしまえば
まず、ほんものの牛肉と区別がつきません。

トウモロコシは、巨大な「桶」(ほんとに桶なのです、
ひたすら馬鹿でかいですが)に硫酸と一緒に漬け込むと、
硬い皮がゆるみ、全体的に、液状化していきます。
その上で、ドロドロのトウモロコシを高速で回転させながら、
金属ネットに吹き付けていくと、表面の硬い部分、
品種によりますが、黄色かったり、紫だったりする部分が分離されます。
これは、たんぱくリッチの飼料にもなり、
もっと溶かし込んだコーンスティープリカーは、
濃密なたんぱく、ペプチド、アミノ酸、混合液となり、
醗酵培地の主要窒素源として利用されます。
抗生物質をはじめ、菌を大量培養(醗酵)して、
分泌物を工業利用する手法は、「化学合成」、「天然抽出」と
ならんで、「製法御三家」の一つですが、
菌に食べさせる大量の炭素源と窒素源が必要です。
窒素源の主力が、コーンスティープリカーであり、
炭素源の主役が、モラセス(廃糖蜜、砂糖の搾りかす)です。

皮の部分を除去した残りは、油と、主成分である、でんぷんの塊です。
油は、食用油(コーン油)として利用されるほか、
マーガリンや、粉ミルクの原料となります。
「粉末ミルク」は、かつては、牛乳からつくっていましたが、
今では、大半が、トウモロコシや、パームオイル由来です。
「植物由来だから、体にいい」という意味不明のことが
言われることがありますが、何の根拠もありません。

でんぶんをそのまま粉末化して、
製品にしたのがコーンスターチですが、
加工食品の主剤や、スープに使われるほか、
溶かすと粘りが強く、加熱すると固まるので、
かわったところでは、クリーニングの際のアイロン助剤として
ワイシャツをパリッとさせるのにも使われています。
また、小麦粉の増粘のためにも
使われています。

そんなものより、はるかに巨大な市場は、
でんぷんの分解物です。
でんぷんは、ブドウ糖が、
いくつもいくつもつながった巨大分子ですが、
基本的には、ブドウ糖が一直線に並んでいて、
ところどころ、枝上の分岐があります。
まず、「枝切り酵素」CK-20Lか、あるいは、
そのコピー品で、分岐点を切断します。
この酵素が、日本メーカーの独断場で、
世界のほとんどのでんぷん加工(分解)事業者が
この酵素を使ってきました。

多少、分解したものは、デキストリンとして販売され、
アイスクリームなどの主成分となります。
アイスクリームは、乳脂肪を含みますが、
主成分は、トウモロコシなのです。
(こだわりアイスクリームの類は別ですが)
また、砂糖は、冷やすと甘味がなくなるので、
冷やしても甘い果糖を加えます。
この果糖も、日本や米国では、
トウモロコシ分解物から、変性させてつくります。

欧州は、日本の農協も仰天するコテコテの
助成金漬け農業保護行政の権化なので
砂糖大根(ビート)の競争力が強く、
ショ糖(いわゆるお砂糖)を分解して
果糖をえます。 欧州がTPP(Pではなくなりますが)、
導入など検討しようものなら
農家のみなさんは、日本の農協とはけた違いのパワーで、
政権を転覆させてでも反対しようとするでしょう。

飲料市場はもっと大きいです。
「還元麦芽糖水あめ」
あれは、トウモロコシ分解物から合成します。
缶ジュースでも何でも、自販機で売ってる
ドリンクの成分表示にたいてい、書いてあります。
もちろん、水やお茶など甘くないものには
入ってませんが。

ブドウ糖が数個つながったオリゴ糖、二つつながたったものは
種類がおおいのですが、代表的なのが麦芽糖、
それぞれに用途がありますが
水素を添加すると、「砂糖水」や「ブドウ糖水」が、
更にネチョネチョ、ネバネバとなります。
砂糖は水と仲よく、塩なんかよりよほど大量にとけ、
シロップにもなりますが、
水素を加えると、さらに水と仲よくなるのです。
こうして、ソルビトール、マルチトール、などの
糖アルコールが量産され、
「あらゆる加工食品」に使われています。
パン、パスタ、うどん、そば、お菓子、ケーキ、
あめ、キャンディー、アイスクリーム
かまぼこ、半天などの練り製品、あんこ、ソーセージ、、、、、
とても書ききれない、ありとあらゆる加工食品に使われ、
歯磨きのネチョバっとした主成分としても使われ、
ビタミンCの合成原料としても使われ
また、医薬品としても、輸液などに大量使用されています。

これら、すべて、トウモロコシを原料としており、
MAZE Industory とか、MAZING とか
呼ばれています。
CORN Industory と呼ばれることもあります。

大手の一社、CPC(Corn Product Corporation )の本社は、
何度か訪問しましたが、
とにかく、「デカい、、、、」
本社も、トウモロコシを溶かす「桶」も、茫然とながめるほかないほど
巨大で、日本にも、その合弁としてつくられた、
巨大工場が稼働していますが、まあ、規模では
本家にかないません。

トウモロコシや大豆については、遺伝子組換品を大量に買え、
というのが米国の対日要求です。
ゴチャゴチャ、「遺伝子組換でない」などといった
表示義務を撤廃せよ、と。
それだけやってくれれば、後は別に仕組みができているので、
あんまり気にしない、
それが、米国の要求です。
小麦は、それに準じます。
米は、米国政府が本気で騒いでいるわけではありません。
かといって、日本の米を守ってあげようという姿勢など、
かけらもありません。

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