藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

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2014年01月31日

  

未分類

2014.1.30.
 
 
STAP細胞についての、お問い合わせを
いただいております。
 
 
今のところは、まだ、よくわからないですが
細胞は、独立した生命体のようなふるまいを
するものですし、組織の中では、決まった行動を
とっていても、体外培養されると尻尾みたいに
鞭毛をだして泳ぎだしたり、アミーバみたいに
這いまわったり、いろいろな変化をするものがあります。
条件次第では、かなり変化しても不思議はありません。
全ての細胞が、他の全ての如何なる細胞であっても
化けるだけの可能性はあります。
 
 
ちなみに、免疫細胞療法の場合は、体内にいた細胞を、極力、体内と
同様の環境におき、ただ、免疫抑制は受けない状況にして
活性化や増殖をさせるものです。 成熟した細胞を、余計な
変化をさせずに、そのまま体内に戻すものです。
 
今回の場合は、酸処理ということで、それなりに強い刺激を
かけるわけですが、やり方が、シンプルなので、注目を集めています。
 
とはいえ、単純な化学処理によって、細胞が変化すること自体は
よく知られています。 ウサギの耳にタールを塗り続けると、がんになる
という古典的な実験がありますが、炭素と水素が二個ずつ結合した
だけのエチレンが、重要な植物ホルモンであることもわかっておりますし
ヒトの細胞でも、カルシウム処理など、ごく普通の物質の刺激が
場合によって、インパクトのあるシグナルであることもあります。
カエルの卵は受精しなくても、針で刺すとか、カルシウム処理によって
無性生殖のままカエルに育ちます。 
 
STAP細胞というのは、分化が進んだ細胞が、単純な化学処理で
先祖帰りした、様々な細胞に分化できる幹細胞に戻ったということですが
分化状態から未分化状態に戻る、初期化する、というのは
典型的な、がん化プロセスと同じです。
iPS細胞は、がん化関連遺伝子と知られているものを3つもいれるので
培養していると、がん化するのは当たり前ですから、もっとも、がん化
リスクが高い手法ということになります。
がん化関連でなくても、遺伝子改変を伴えば、それががん化の引き金になる
リスクを考える必要があります。 
今回は、単純な化学処理なんだから、安全だろう、かというと
「初期化」がおこっているので、がん化プロセスである可能性は残ります。
どういう処理をしたかだけではなく、それが、幹細胞へと初期化しているのか
どうかは、リスク判断の大きなポイントになります。
つまり再生医療に用いる幹細胞は原理的に、リスクをはらんでいる
ということです。 
だから、再生医療と免疫細胞療法を一緒にしてくれるな、
と言い続けているのです。
 
人工骨や、留置針、カテーテルや、透析に用いるチューブやフィルター
などなど、生体と長期間、接触する素材は、細胞が、その素材に
接触することによって、がん化しないのか、という検証を経たものです。
免疫細胞療法で用いる分離装置や、培養器なども、素材そのものや
特に、問題を起こす可能性の高い可塑剤などが、接触した細胞を
がん化しないのか、検証を経た上で採用されたものです。
細胞にとって、「酸処理」というのは、かなりのストレスですので
だからこそ、通常は簡単に起こらない初期化がおこったわけでしょうが
「原理的に安全」とは言い切れないものがあります。
 
酸処理でがん化するなら、じゃ、胃の細胞は、がんになるのでは、
というと、実際に、胃がんの多くは、表層の粘膜層から
発生します。 一応、分厚い糖タンパクに覆われ、胃酸の
直撃は受けないことになっておりますが、胃酸そのものを
つくっているのが細胞ですから、まるで接触しない、とは
いきません。 ストレスなどが原因で、胃の粘液が弱くなると
胃壁の細胞が胃液にさらされ、潰瘍を起こすこともあります。
潰瘍 = がん  ではありませんが、潰瘍の中から
初期化が進んだ細胞がみつかることはあります。
 
 
要するに、とんでもなく、常識を覆すような研究ではないのですが
実際に、簡便な手法で、高い効率で、細胞の分化レベルの初期化を
起こす方法を確立した、ということであれば、十分、立派な研究成果
ということになります。 では、実用性はというと、それはまだ何とも
いえません。 ヒトで成功し、ヒトの未分化細胞を扱い続けて
がん化リスクを検証する必要があり、これには、とんでもなく
長い時間がかかります。
 
 
とりあえずは、どういうものか、情報集め、ということですが、
今のところ、ヒトで成功したわけではないので、そこがどうかというのが
再生医療に用いる場合の最初の最大のポイントになるでしょう。
iPSでも、ヒトとマウスでは、かなりの差があります。
別のものといっていいほど違い、ヒトiPSは
扱いにくいわけです。
 
 
なお、免疫細胞療法については、STAP細胞技術と
直接は関係ありません。
NK細胞をつくりだすことに意味はないからです。
元々、体内にいるのですから。
NK細胞を活性化した状態で増殖させると
自爆が相次ぎ、戦力をそろえることが大変むつかしい、
ここがポイントです。 細胞自体は、体内からとってくればいいので
iPS細胞であろうが、STAP細胞であろうが、NK細胞を手間暇かけて
つくりだしたとしても、体内から採りだすより遥かに大変でしょうし
今度は、自然に存在するNK細胞と同じものをつくりだしたのであれば、
当然、そこから先、戦力化する培養は、大変、難しい、ということになります。
結局は、培養技術がなければ使えないので、今よりよくなる要素は
何もない、ということになります。
T細胞や樹状細胞にいたっては、もっと簡単に
使えるので、わざわざ、新規技術をもちこむ必要性がありません。
 
 
 

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