藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

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2014年05月21日

  

くすり

降圧剤の治験における不正が事件化している最中に、健康診断の基準値を従来より遥かに緩める提案がなされ両者を関連付ける憶測も飛び交っています。
 
これまで、血圧が高いですね、異常ですね、と診断され降圧剤を処方されていたケースが高値の上限値が高くなれば降圧剤処方が減ることになり、逆に上限値を下げると多くのヒトが降圧剤処方が必要と診断されることになります。

さて、両者の関連はともかく、治験における不正はこれまでにも幾度となく繰り返され、その度に管理基準の徹底強化、が為されてきました。

そして、管理基準が強化されることで、益々不正が起きやすい状況がつくられてきました。
 
治験というのは、その仕組みそのものが不正を生みやすい構造になっています。
 
ごく特定の組織や企業だけが関与できるようになっており密室の中で、一般人には理解困難なルールに基き取り進められるからです。 

まず、治験の管理基準が強化される毎に実施費用が高騰してきました。私が、新薬開発ビジネスに入門したのは1984年ですが当時、新薬一品目の承認取得に、30億円位かかっていたのが、だんだんと100億円に近くなってきた、バイオ医薬品に関しては、300億円はかかると言われていました。これは、日本一国の承認取得に必要な資金量です。

それが、90年代には、ハーモナイゼーション要するに各国バラバラのシステムだったのが国際的な統一基準に集約されるようになり結果的に、治験の費用は跳ね上がったのです。
 
イタリアだけ承認をとる、スペインだけ、という手が使えなくなっていきました。 国によって薬の文化はかなり異なり、日本に近いのが、イタリア、スペインあとは、スイスやフランスあたりでしたが、こうした国々だけで承認され、米英では相手にされない薬も結構ありました。
また、中米のある国に関してはなんと、500ドルでも承認が取れた時代もありました。
特定の国で承認を取ると、その国に追随して自動承認される国々もありました。 こうした仕組みを使って、あまり資金を投入することなく、いくつもの国で承認を取得し合法的に新薬を流通させてから、費用がかかる国で承認申請するデータを集める、というのが一般的でした。

ところが、ハーモナイゼーションの浸透により新薬開発費は、一挙に数百億円単位からバイオ医薬品に
限っては平均2000億円レベルにコストがアップしました。その後も上昇を続け2010年頃には新薬一品目の開発費は60-80憶ドルと言われ、上昇傾向は続き、1兆円にたっするのも時間の問題です。もっとも、こうした数字は、一国での承認取得のみではなくグローバル開発全体のコストです。
 
自国で承認を取得した新薬を他国の医薬品メーカーにライセンスしライセンスフィーを取得していたのが、逆に、最初から世界市場全体の開発費を自社負担することになったのですからローカルな医薬品メーカーは生き残りが難しくなり、また、それまでより一桁や二桁上の資金力がないと新薬開発は困難となっていったため大規模な合併が頻発しました。84年当時、ヨーロッパには1500社の医薬品メーカーが存在し半分は近代医薬品産業発祥の地であるイタリアに集中していました。日本には、2500社の医薬品メーカーが存在していました。まず、10年でこれらが半分に減りその後も減少を続け
ブロックバスター級の新薬を継続的に開発するには売上5兆円、開発費1兆円 という規模感がグローバルクラブメンバーの会員資格のように言われ、実際、そうなっていきましたが昨今では、更なるメガファーマ同士の合併が必要となってきました。
 
今後、益々、医薬品メーカーの数は減少していくでしょう。

要するに治験や前臨床の開発コストを跳ね上げ続け「所場代を上げてきた」のです。

こうなると、巨大資本以外、全く参入不可能な状況になります。

大型新薬の承認審査を前提とする治験を実施するのは旧帝大系を中心とする一部の大学付属病院などですが大規模な治験には大規模な予算が必要でありこれを提供できるのは、大規模な医薬品メーカーしか
ありません。 少なくとも日本の場合は。

さて、治験は、「有効性と安全性の証明」を目的に行うものとされていますが、その証明によってメリットを受けるのは製造販売承認を取得した事業者です。
 
日本の医療においては、自由診療でやっている限りそれほど大きな収益性は期待できません。日本であれば、健康保険適用になれば莫大な収益を確保できる可能性があります。薬価が低いとどうにもなりませんが、それでも自由診療よりははるかに巨大な事業になります。
 
  なお、承認取得のシステムはグローバル化が進みましたが誰が薬代を払うのかという医療保険システムは日米欧それぞれに異なっており、自由診療の収益性も国によってまるで異なります。

つまり、日本で儲けたければ治験を実施し承認を取得し健康保険適用を取る、というのが王道なのですが、これを実現するには国内で直接必要なものだけを考えても数百億円規模か、それ以上の資金ソースが必要なのです。

そして、治験の「好結果」による莫大なメリットを得るのは承認申請者ということになりますが、では、その治験の費用負担を行うスポンサーは誰かというと、やはり承認申請者です。
 
治験というのは、資金提供者と治験の結果がよければ莫大な収益を獲得できる受益者とが一致している。ここに構造的な不正を生みやすい温床があります。

ここまでは、よく言われていることです。

ところが、治験のシステムには、もっと、とんでもない構造上の問題があります。

(続く)

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