藤井真則のブログ

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2014年08月11日

  

えとせとら, 免疫

最近、エボラ出血熱に関して
厚生労働省からも、コメントが出されています。

このウイルス病、「アウトブレーク」という題名の映画が、日本でも興業され、それ以来、この名を知ってる、という人が増えたようです。

エボラが流行した地域は、どえらいことになります。
一方、日本人にとっての危険となると、西ナイル熱などの方が接触リスクが高かったはずですが、知名度では、何といってもエボラです。

このウイルス、非常に変わっています。

ゲノムというのですが、遺伝子と同じ意味ではないのですが、ま、そのようなものの大きさが、エイズウイルス(HIV)の数分の1しかありません。超ミクロというか、ナノなウイルスなのです。

一般に、ウイルス粒子が一個くらい細胞に接触しても感染はおこりません。
最低、何個が同時に細胞表面にたどりつくと感染が起こるのか、
こういう感染力の強さを表す指標の一つがあるのですが、
エボラの場合、2000個という説があります。
最新の説ではどうなっているのかは調べていませんが
ともかく、この数字は、「とんでもなく小さい」つまり、
そんな僅かなウイルス粒子の塊だけで、感染してしまうんだ!!
という「とんでもなく強い」感染力をもつ、ということを意味します。

一応、国やメディアも、あまり騒がないように
(少なくとも日本人にとっては現実的な脅威ではない
という意味であって、流行地域の人々にとっては
とてつもなく深刻な事態のはずですが)
と言ってますが、エイズウイルスと比べると
圧倒的に強い感染力と、高い死亡率、短い潜伏期間と
なっており、それだけ、防疫対策上は、対処しやすい
ということになります。

つまり封じ込めがやりやすい、ということです。

エイズウイルスは、生物兵器として開発されたという
噂話をよく聞きましたが、エイズは生物兵器にはまったく
向いていません。 戦争中に、ウイルスを撒いても、
当分、症状がでません。 戦争が終わったころに
自国兵士が、敵国に駐留中、性行為によって兵士に
染し返されるのですから、兵器としては、何の役にも
立たず、むしろ、戦争行為を行いにくくします。

その点、エボラは、あっという間に、感染、発症し
感染した人は、不幸にして次々に亡くなり、そのかわり
生きながらえた人は、回復し、キャリアにはなりません。
つまり、今、流行している地域を封鎖すれば、何とか
短期間の内に、流行を食い止めることができます。
映画では、とんでもない手法で、感染拡大防止をやって
ましたが、、、、 まあ、理屈だけでいうと、確実な方法です。
ディージーカッターという核兵器に匹敵する破壊力をもつ
気化爆弾で、感染地域をまるごと焼き尽くしていました。
輸送機で運ばれる、この巨大爆弾は、いきなりドカンと
いかず、まず、燃料ガスが数キロ四方へ拡散します。
それから、ドカンと爆発し、標的エリア内のあらゆる生き物を
焼きつくし、酸欠になるため、防毒マスクをしていただけでは
生き残れません。 ウイルスは生きていないので、酸素は
必要ありませんが、高温燃焼によって、全滅します。
そこは映画ですから、生きている人がいる状態で
投下したわけです。 これ、映画ですので、あくまでも。

(映画は一般に事実を反映して制作されますが)

この爆弾、アフガニスタンで投下されたようですが、
爆発力のエネルギーが、小型の核爆弾に近いレベルに
達するため、地球の反対側で地震波を観測すると
核兵器が使用されたのか、気化爆弾なのか、分かり難い
といわれています。 そのため、核兵器使用疑惑も
もたれたわけですが、大気中の微量成分の分析から
核兵器の使用は否定され、やっぱり、気化爆弾を
落としたな、ということにおちついたようです。

さて、エボラウイルスが、もし空気感染すると、封じ込めが
難しくなります。 この点は、どうかというと、現時点では
大丈夫だろう、ということです。

だろう、というのは、空気感染するエボラウイルス株は
存在するのです。 エボラ・レストン株 という、米国の
首都ワシントンDCの近くで発生したエボラウイルスの
ある系統のものは、空気感染する、と考えられています。
飛沫核感染と、空気感染と、見極めは微妙です。
ところが、拡散能力という点では、空気感染は飛沫核感染を圧倒します。
空調システムを介して、実験用のサルから、別の部屋に
いたサルにも、次々に感染が拡大しました。
つまり、エボラウイルスの遺伝子のどこをどう改変すれば
空気感染するかは、分かっているわけです。
とはいえ、レストン株は、人間に対しては、それほどの
毒性をもちません。 一応、感染したと考えらえる人が
いることはいるのですが、せいぜい、軽い風邪のような
症状で、これといって重篤な症状がみられません。
ヒト→ヒトへ、感染し、かつ、空気感染する遺伝子をもつ
エボラは、理論上、作成可能ですが、これまでのところ
実際に流行したことは確認されていません。

ちなみに、レストン株騒動は、重大な事態に至らずに
収束しましたが、偶然、発生した場所が
陸軍の生物兵器研究のメッカである、ウォルターリード
医療センターの研究所のすぐそばだったので、
初動が迅速であり、この分野の世界でもトップクラスの
組織が直接、動いたことが幸いした、とされています。

ところで、このウイルス、宿主については、昔から議論があります。

この洞窟の中が怪しい、とされてきた有名な場所があり
その洞窟から採取されたあらゆる生き物が調べられましたが
宿主がみつかりませんでした。 その後、コウモリの何種かが
宿主だとする論文が発表されましたが、ほんとうに宿主なのか
あくまで、二次的な被感染動物に過ぎないのか、議論があります。
これほど、短期間で劇的な症状を発症するウイルスとなると
あっという間に、感染相手がいなくなるわけですが、天然のウイルスは
必ず、安定して存続できる、逆に言うと、これといった症状を発症しない
ウイルスと平和に共存している宿主がいるはずです。

インフルエンザなら、野生の鴨が宿主で、鴨はインフルエンザウイルスが
多少、活動しても、軽く下痢をするのがいる程度です。
そして、活発に遺伝子変異を起こすと、短期間の間に、元の性質が
失われてしまいますが、宿主である鴨の体内では、インフルエンザウイルスは
極めて安定であり、人間界で流行した際に起こした変異も、鴨の体内に
戻ってくると、そのまま、安定して、保存されています。
つまり、野生の鴨を調べれば、(基本的にシベリアの鴨ですが)、
過去、人間界で流行したウイルスの変異株が一通りみつかります。

エボラの場合、今一、どこから来たのか、今、どこに潜んでいるのか
判然としないところがあり、それだけ、関心を呼ぶという面もあります。

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