藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

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2015年11月15日

  

えとせとら

2015.11.14.
 
 
 
「MRJはなぜ飛ばないのか」の続編です。
 
 
三菱リージョナルジェット MRJ
初飛行おめでとうございます。
 
5回も延期されたMRJの
初飛行がやっと実現しました。
 
 
一部読者の間で
少し誤解があったのかもしれませんが
この機体、FRPの比率を高めて
燃費向上をうたったため
では、落雷リスクの上昇をどう
クリアするのか、
という問題を
指摘したのであって
どうにも空を飛べないと
申しあげたのではありません。
 
 
結局、落雷しやすい尾翼周りとか
一部の構造材をFRPから
一般的なジュラルミンに戻した
ようですが、その結果として
機体重量の増加、燃費の悪化を
どうクリアするのか、別の
問題がでてきます。
 
とはいえ、この問題は、
どんな航空機でも抱えている
共通の問題ですので
MRJだけが、不利なのでは
ありません。
 
FRP比率を高めることを
売り文句にすると
落雷リスクもついてきますが、
同じ素材比率で
飛行機をつくるのであれば
あとは、「設計の妙」が
どこまで競合機より優位なのか
そこにかかってきます。
 
 
ところで、FRPというのは
実態は、カーボン繊維なのですが
エポキシ樹脂で固めてから加熱加工するので
 
 F:繊維 で R:強化された P: プラスチック
 
 
という言い方をします。
実物は、どうみても、カーボンにしか
見えません。
カーボンと言う方が
しっくりくるのですが
航空機業界では
FRP つまりプラスチックを
使っています、という言い方をします。
 
炭素繊維は、東レさんが有名ですが
繊維を編む業者は日本国内に何社か
いらっしゃいます。
これをエポキシ樹脂で固めながら
立体成型していくのですが
炭素繊維は400度Cで
燃えてしまいますから
炉にくべて焼成という
訳にはいきません。
 
オートクレーブで
やんわりと焼く?
というより、加熱します。
 
高温にはできないけど
低温で十分な熱量を
加えて加工するには
オートクレーブ
つまり蒸気加熱します。
もちろん、高圧になっています。
サウナで水を石にかけると
温度はむしろ下がるのですが
熱さはかえって増していきます。
空気中の水蒸気が増えると
温度が同じであっても
熱容量や、熱伝導効率が高くなる
から、受け取る熱量が多くなるわけです。
 
 
さて、落雷というが、じゃあ
F22とか、なんで飛んでるのか?
というご質問をいただきました。
 
 
ステルス機と呼ばれる機体は
ほとんど、量産されていません。
 
大量調達の話から始まるのですが
結局、少数機、製造されて
うちどめになります。
 
それでも、F22は例外的に
そこそこの機数が配備される
最初の本格的なステルス機に
なりそうです。
 
F22は、当初、基礎開発から
量産、整備や訓練用シュミレーターまで
一切合財含めて、50兆円の
大型戦闘機商談と騒がれました。
その後、どんどん、米軍の調達機数が減っていき
さらに輸出は認めない、ということになりました。
こうなると、益々、一機当りのコストが
上昇しますから、さらに数を絞られます。
 
もちろん、「予算の問題」が大きいのですが
ステルス機には、いくつか運用上の大きな
制約があります。
 
言うほど、使えないのです。
 
そもそも、ある特定の角度をもって
二方向からレーダーを照射すると
強烈に反応し、一発で
ステルス機はみつかってしまいます。
レーダー波を吸着する素材が
災いして、誘電発熱を起こすため
強烈に輝くのです。
 
 
ステルス性能は、一つの要素技術だけで
実現するものではなく、機体の形状を
二重ウェーブにして、どんな波長の電波が
どんな方向から照射されても、方々へ
拡散して跳ね返り、レーダーを照射してきた
方向への跳ね返りを弱くすることで
強いレーダー反応を示さない、
こういうことも重要です。
 
 
レーダーに映らないのではなく
映りにくいことをステルス性といいます。
 
F22は、通常の捜索レーダーの照射に対して、
小鳥ほどの大きさの物体が飛んでる程度の
反射波しか返さないと言われています。
 
 
一方、旧型のF15は、巨大なお椀型レーダーアンテナを
機首に備え、正面からレーダー波を受ければ
まともに跳ね返してしまい、
自分はここに居ます! と宣伝するが如く
ビカビカにレーダーに映るとされてきました。
強力なレーダーをもつことがセールストークにも
なっていましたが、その分、見つかり易い
機体でもあります。
これはまずい、と、お椀型レーダーから
フェーズドアレイ方式、小さなレーダーを
何百個と並べて、お互いにレーダー波を
干渉し合わせて、全体として一つのレーダーと
して機能するタイプのものに換装が進んでいます。
いわゆる三次元レーダーと呼ばれるもので
ミニレーダーの位相や出力を調整すると
合成波を扇状に広げることもできれば
ビーム状に絞ることもでき
ビームをスキャンさせることもでれば
複数のビームを作りだすこともできます。
しかも、個々のレーダー素子は
小さく、これなら、敵のレーダー波を
受けてしまった時、まとめてビッカー と反射波を
返さなくすみます。
 
 
 
F22には、電磁波を吸着する性質をもった
素材も使われています。
すると結果的に落雷を招きやすくなります。
 
F22は、決して、海外に出ることは
ありませんでした。
なかなか、最前線の任務には
つけないのです。
この禁を破って、沖縄にF22の部隊が
進出したため、如何に米軍が、東アジア情勢に
注目しているのか、というメッセージに
なりました。
 
 
F22は、マッハ1以上で、低空を
巡航できる、という概念設計から
開発がスタートし、そのためには
ジュラルミンではなく、FRPを
主桁という基本構造材に用いる
必要がありました。
なんで、というのは説明が面倒なので
詳細な理由は省きます。
ともかく、高速巡航を実現する機体構造が
ジュラルミンでは、捻り強度不足になるので
FRPを使用することになりました。
 
で、やってみると、そう簡単には
いかなかったようです。
落雷リスクだけが問題なのではないのですが
実際には、どんな天候下でも、低空をマッハ1以上で
巡航し、侵入する、というのは簡単ではないようです。
実際の作戦行動を実施するのは
好条件を選ぶ必要があります。
 
また、機体の下面をツルツルの滑らかにし
レーダーの反射効率を下げる、等などの
工夫が災いし、弾薬は原則、
機体内の弾倉に納めるため
大量の爆弾や対地ミサイルを
搭載することができません。
今や、米軍は、敵の大国と
正面から大規模空中戦を展開して
制空権を確保するというイメージよりも
何もできない敵に空から
一方的に地上攻撃をかけることが
作戦の中心になっていますので
ステルス戦闘機よりも
大量の弾薬を搭載できる
攻撃機の方が重宝されます。
 
 
F22は、非常に高価で、用途が限定されている
ということになります。 
 
かつて、ベトナム戦争に参戦した米海軍の艦載機に
F14トムキャット戦闘機というのがいました。
トムクルーズ主演の映画「トップガン」にでてきた奴です。
大型で高価で、当時としては常識はずれだった
超々長射程ミサイル「フェニックス」を6発も搭載しました。
機動部隊前方に展開し、各機6発ずつ
空母1隻の航空団当り、合計144発もの
空対空ミサイルを発射、これで、仮想敵国であった
旧ソ連の対艦ミサイルを、数百キロ彼方から
迎撃する、というものでした。
ミサイル自体は、300キロもの飛翔距離を誇ります。
当時主力のレーダー誘導スパローミサイルが60キロ
赤外線追尾サイドワインダーミサイルが30キロ位の
射程でしたから、超破格の長射程でした。
ロシアには同等の射程を持つ空対空ミサイルが
実戦配備されていますが、
今日、米軍にはこれほど長射程の
空対空ミサイルは存在しません。
通常、本格的な艦隊戦を想定する際に
空母は1機動部隊当り2隻以上が一緒に行動し
ソ連軍が一斉に発射する対艦ミサイルは
百数十発位が大体の相場だったので
まあまあの迎撃力と考えられていました。
 
ところが、F14は、空対空ミサイルこそ
自衛用のサイドワインダー2発を合わせ
合計最大8発搭載でき、
レーダーの性能も断トツでしたが
爆弾を搭載できませんでした。
 
ベトナム戦争当時に実戦配備や飛行試験が始まった同世代の
F15やF16はまだまだ世界の主要空軍国の主力戦闘機であり
同じ艦載機のF18ホ―ネットや、その改良型スーパーホ―ネットが
米海軍の主力として君臨しているのに、F14は、早々に姿を
消しました。 
大西洋には、まだまだ旧式のホ―ネットが現役で
いますが、日本周辺で活動中の米空母は全艦、
搭載する戦闘攻撃機を全機スーパーホ―ネットに換装しています。
日本周辺に配備される米艦や航空機は、
真っ先に最先端のものとなっています。 
結局、正面から大国と戦闘する前提で
制空権確保や、機動部隊を襲撃する大量の対艦ミサイル防御など
特定任務を重視した戦闘機は、「使えない」という状況になり
爆弾を沢山、搭載して、他国を爆撃できるものが
重用されるようになりました。
 
F22も、同じような運命を辿りつつあります。
F35の方が、値段も安く、地上攻撃のオプションや
搭載量が多いのです。 ある程度のステルス性は
考慮しているものの、F22ほど徹していないので
機体の下部に、ブラブラ爆弾をぶら下げて
レーダーに映りやすくなるのは気にしません。
 
F35は落雷リスクはどうか、というと
原則、「ゆっくり」飛ぶ前提の飛行機なので
よっぽどとんでもない積乱雲に近づいたりしない
限り、あまり、気にしなくてもいいようです。
 
オスプレーは、ヘリより2~3倍、速く飛べ
航続力も、国内基地から北朝鮮の主要部まで
直接、飛んでいって、完全装備の歩兵部隊を
降ろせる、オスプレーの大量配備は、半島情勢の
急変を想定したものですが、速いといっても
落雷リスクを気にするような速度ではありません。
 
あくまで程度問題ですので、何キロになったら危険で
何キロ以下なら安全、とは言えません。
また、高度によっても違いますが、
ジュラルミンベースの機体の場合
概ね、時速800キロ~ 1000キロ 辺りが
まあまあ安全に飛べるでしょう、いや、
どうかなあ、、、 という分岐点のようです。

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