藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

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2016年06月29日

  

がん

最近、がん患者に遺伝子治療を施すとする不思議なクリニックが、リンパ球バンクのHPに 広告などを絡めて、患者さんを誘い込む動きが 活発です。

 

がんの治療に遺伝子治療。

無 理 で す 。

これは、無理。
いくらなんでも無理。
絶対つけてもいいくらい無理。
厚労省の方が遺伝子治療は

 

「二階から目薬を差すようなもの」

 

という昔からいいふるされた言葉をお使いになられたので

 

「人工衛星から目薬をさすようなもの」 です。

 

と訂正しておきました。

 

がんの発生プロセスを考えれば遺伝子をいじってもどうにもならないのですが
がん化のプロセスと遺伝子の関係を棚にあげてもまず、治療としての方法論が全く確立していません。
生まれながらに特定の遺伝子が欠損していてそれがために病気になっている人の場合欠損している遺伝子を体のなかのどこかの細胞に収めることができれば、あるいは治療につながるかもしれません。

実際、アデノシンデアミナーゼという核酸を構成する物質に作用する酵素をコードした遺伝子が先天的に欠損している方がいらっしゃいます。

 

アデノシンデアミナーゼ欠損症というそのままの病名がついています。

 

これはもう、ひたすらアデノシンデアミナーゼをつくる遺伝子を患者さん体内の細胞に導入することを狙います。

私が、90年代のはじめ、日本で最初の遺伝子治療のベクターとなる予定だったサンプルを、当時の高久先生という医師に届ける予定だったものもアデノシンデアミナーゼ欠損症を治療する目的のものでした。
誰が考えても、昔から、遺伝子治療といえば、特定遺伝子欠損症を治療することを狙うのがセオリーなのです。

 

当時、安全性に致命的な問題があることを指摘させていただき、この仕事はやらないと断りましたが、その後、ベクターが改良され、実際、この病気に対して、政府承認取得に至った遺伝子治療が存在します。

 

この場合、「どこかに入ればいい」 のです。
がん治療の場合、そうはいきません。
真逆です。

 

患者さんの体内にある100億個のがん細胞に対して、遺伝子治療をやるとします。

 

実際には、ほとんど、がん細胞の中に遺伝子を導入することはできないのですが、まあ、できたとして、です。

 

もし、5割ものがん細胞に、狙い通りの遺伝子を導入できたとして(そんなことはありえないのですが) そして、そういうことをして、実際にがん細胞が
死んでくれることはまずないのですが、そこも、まあ、狙い通り、死んでいただけた、として残りの5割のがん細胞は、増殖を続けます。

 

これはあっという間です。

 

進行がんの場合、10日とか30日とかそういうペースで元に戻ってしまいます。 がんという病気がやっかいな理由はいくつもありますが、一つは、相手は
「生き物」で、「数が増える」のです。

 

一部を殺しても、残りは増え続けます。

 

よく知られている再発や転移が問題というのは要するに、生き残ったがん細胞が急速に増殖してくるから、そうなるわけです。
試験管の中で、実験しやすい条件でやってみても、そうそう、高い確率で
狙い通りの遺伝子が入ってくれません。

iPS細胞の場合は、山中先生が見つけた方法で、ネズミのiPS細胞をつくるわけですが、どうにか、1割、2割という効率で、iPS化することができるように
なってきました。  これは、ものすごい、高い率です。

 

一方、ヒトのiPS細胞をつくったのは別の方ですが、こちらは、そう簡単にはいきません。   iPSといっても、ヒトとマウスでは全く違うもの、というくらい相違があります。

 

目の前の標的細胞を相手にしてとてもとても100%に迫るような効率で目的の遺伝子を、目的の細胞に導入することはできません。

なんぼか入ってくれたらええ、レベルです。
ましてや、生身の人間の体内の細胞に狙った遺伝子を、それも狙った細胞にだけ導入する、というのは、超超超超超、、、、至難の業 です。
がん治療の場合、標的がん細胞のいくらか、 では、根本治療にはなりません。
体内の60兆個の正常細胞に紛れた数十億とか数百億というレベルのがん細胞を狙い撃ちで、正常細胞にダメージを与えずに特定の遺伝子を導入する方法論はありません。

 

あらゆる面で、がん治療としての遺伝子治療には無理があるのですが、どんなに「すごい」と言われるような技術が登場したとしても、体内のがん細胞は、きわめて多様です。
何をやっても、生き残るやつがいます。
それが、数を増やすのです。
まず、根本法則として、遺伝子治療が有効な可能性があるのはその遺伝子が欠損しているから病気になっていると特定遺伝子が、明確に、病気の原因と
わかっている場合で、それは遺伝病だけです。

 

がん化に関係する遺伝子はいくつもみつかっていますがその遺伝子があるから、それが原因で、がんになるという特定の遺伝子というのはほとんど見つかっていません。
がん遺伝子というのは、それがあるから、がんになるのではなく、正常細胞内でも活動している

遺伝子の一部が、多少、異常に活動するとがん化プロセスが進むということです。

ともかく、遺伝病であれば、遺伝子欠損症であれば遺伝子治療により、特定の遺伝子を導入するという「理屈」はなりたちます。

 

がんの場合、体内のがんの一部に遺伝子操作を加えても(できないのですが、仮にできたとして)、生き残ったのが増えるだけです。

 

遺伝子治療のターゲットとして、がんは不向きです。

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