2016.7.26.
免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」の
副作用に関する報道が各紙から出されています。
ことあるごとに、免疫チェックポイント阻害薬は
重篤な自己免疫疾患という副作用リスクが高いことを
なぜもっと周知徹底しないのか、ということを
指摘させていただいております。
今般の一連の副作用関連報道は、
今さら、何を言ってるのか、という
感はぬぐえません。
もっとも、まだまだ偏向報道の傾向が強いですね。
オプジーボ単独投与でも、高率で重篤な
自己免疫疾患を発症するリスクがあるのに
この数日間の報道は、他の治療との併用によって
副作用が発症というトーンで報道されています。
もちろん、併用によって未知のリスクが顕在化
することはあり得るわけですが、それを言う前に
まず、オプジーボ自体の副作用を十分に説明
すべきです。 他の治療との併用が問題という
イメージを植え付けたいのかもしれませんが
じゃあ、単独なら大丈夫だと、患者さんが
勘違いしたらどうするのでしょうか。
まず、この薬は、投与すれば、たちどころに
がんが消滅して、治るんですよ、というような
「夢の新薬」ではないこと、若干の延命と
引換に、重篤な自己免疫疾患リスクがあること
この事実をしっかり説明した上で、それでも
やはり、リスク承知で、治療は進めて欲しいという
患者さんの合意を得れば、やってみる、
それが本来、行われていなければいけない
ことです。
治験の結果というのは、鵜呑みにしてはいけないのですが
かといって、米国で、治験が多数、実施され、その結果
オプジーボは、有効な部位が比較的限られると
報告されています。
しかも、効果といっても、悪性黒色腫と腎がんの場合で
3割弱の患者さんに、何がしかの延命効果があった
というものです。
小細胞肺がんでは、せいぜい、1割程度の患者さんに
何がしかの延命効果がみられ、大腸がんや、前立腺がんでは
ほとんど効果がみられていません。
全身療法なのに、なぜ、部位による効果が違うのか、
一概には言えませんが、一応、悪性黒色腫や腎がんといえば
遺伝子変異の修復効率が悪いとされているがん種であり
オプジーボによって活性化されたキラーT細胞にとって
目につくシグナルが多いのでは、という推論があります。
大腸がんや前立腺がんでは、比較的に遺伝子変異が
修復される能力が高いため、シグナルが見えにくいので
あろう、と。
ともかく、何でもかんでも効果を発揮するものでもなく
殺細胞剤のような高い奏効率でもなく、殺細胞剤のような
遺伝子に損傷を与えるような副作用はないものの
患者さんの3割近くに重篤な自己免疫疾患を伴う
と報告されてきました。
日本国内の治験というのは、米国の治験をベースに
効果がでやすく、副作用がみえにくく設計されます。
これは、一般的にそうなのです。
治験に参加された方は、大抵、お亡くなりになられ
それで死亡日を確定し、延命効果を算定するわけです。
いざ承認、となると、もっと元気な方にも投与されます。
そうなると、自己免疫疾患は、もっと高い確率で
発見される可能性があります。
逆に、治験の期間を短くする(より重篤な患者さんを
対象に治験を行う)と、筋ジストロフィーや
I型糖尿病の発症前に、お亡くなりになる確率が
高くなり、データ上は、「より安全」に見えてしまいます。
一応、日本では、非小細胞肺がんであっても
投与群の3割近くで、何らかの延命効果が見られ
1割程度の患者さんに、重篤な副作用が見られる
ということになっています。
どう考えても、夢の新薬には見えないのですが。
誤解のないように申し上げますが
別に、ダメな薬だと言ってるのではなく
実力以上に、騒ぎ過ぎ、また
バランス上、副作用については
報道が少なすぎる、と申し上げているのです。
ちなみに、ANK療法実施医療機関では、
オプジーボを導入しますという話は聞いたことが
ありません。 効果、副作用、コスト、
これを総合勘案すると、積極的に処方しよう
ということにはならない、という判断です。
また、新しい薬は、投与してみると、
何かと、予期せぬことが起こるものですので
むやみに手は出しません。
最後に、繰り返しになりますが
併用における副作用の発生を強調するのは
余りにも偏向に過ぎます。
オプジーボ自体に、高いリスクがあることを
まず、適切なバランス感覚をもって
しっかりと報道していただきたく
存じます。