2017.4.21.
免疫チェックポイント阻害薬の「礼賛者」は
なぜ、免疫チェックポイント阻害薬だけが
有効性を確認された免疫治療という「嘘」を
大声で主張し続けるのでしょうか。
免疫細胞療法は、医薬品ではありませんから
医薬品と同じようなレベルの治験は
実施されていません。
治験は莫大な費用が必要ですので
治験を行ったものだけが「正しい」もので
やってなければ有効性が確認されていない
そう言ってのければ、有効性が確認されたものと
いうイメージ(幻想を含め)でとらえられるものとしては
莫大な資金提供者がバックにいるものだけが
残っていきます。
ところが、莫大な資金提供による高額な費用が必要な
治験を実施された分子標的薬が国内でも承認されており
欧米ではむしろこちらが主流で、従来型の抗がん剤を
上回っているという現実が無視されています。
特に、ADCC活性により、NK細胞の活性を高めることを
作用機序とする分子標的薬は、どう考えても免疫治療ですが
これを十数年来、患者さんに処方してきた名だたる専門病院の
HPでさえ、免疫チェックポイント阻害薬が有効性を確認された
免疫治療とし、分子標的薬やNK細胞の記述が曖昧です。
明らかに恣意的です。
医薬品と免疫細胞療法といえば、手法も準拠法令も
提供事業者も異なり、日頃から異なる文化の下で発展してきた
もの、言ってみれば、水と油の関係ともいえるのですが
医薬品同士で、なんで、ここまでメディアなどの扱いが
異なるのでしょうか。
免疫チェックポイント阻害薬という薬価が高い「商品」の
「取り合い」が起こっているからです。
分子標的薬では、そういう事態には至っていません。
ANK療法実施医療機関では、分子標的薬の保険適応外処方も
患者さんの状況と同意が得られた場合には、実施してきました。
当初は、分子標的薬は基本的に免疫系の治療薬であり
従来型の抗がん剤と併用している現状の方が「異常」で
免疫細胞療法との併用の方が理に適っているという
当方の主張は、全く相手にされず、止む無く
状況をご理解された患者さんが、ご自分で個人輸入されて
いました。
これは大変、面倒な手間がかかります。
ところが、2010年7月1日より、分子標的薬の
適応外処方は、推奨する旨の通知が発行され、
その後は、ANK療法実施医療機関が、国内の医薬品メーカーが
製造した分子標的薬を国内の医薬品卸業者から購入する
いわゆる正規ルートで調達し、保険適応になる部位のがんを
もつ患者さんは、保険診療機関で保険診療として
処方してもらうのが原則、
一方、保険適応外になってしまい、
かつ、その分子標的薬の処方が
妥当と医師が判断できる場合で、
かつ、患者さんが同意された場合は、
ANK療法実施医療機関が自由診療として処方、
という形になりました。
何のコンフリクトもないわけです。
問題は、免疫チェックポイント阻害薬
特に、オプジーボを、医師が個人輸入し
「薄めて」患者さんに、自由診療で
処方するところが出現したことです。
これは違法と断定はできません。
それで人の命が助かるなら
誰も非難すべきものではありませんが。
実際には、そうとは考えられず
多いに問題があります。
ANK療法実施医療機関が、ANK療法と
オプジーボを併用した、という話は聞いたことが
ありませんが、もちろん、会社が医療機関に
指示をすることはできませんし、もししたとしても
医療機関が会社の指示に従う義務などありません。
あくまで、会社の考え方をお伝えすることはありますが
どうするかは、医師の判断です。
もちろん、学会で、どうすべきか、という議論はなされています。
副作用、効果、相乗効果、コスト、投与可否判断など
総合的に考えて、ANK療法との併用は「否」に近い
「推奨しない」です。
ところが、「夢の新薬」と一部メディアが大騒ぎをしてきたため
これは宣伝に使えると、一部のクリニックが、
ANK療法以外の治療強度の弱い免疫細胞療法と
オプジーボの適応外処方をセットにした「広告」を
うちはじめたわけです。
こういうことになるのは、副作用など、実態を正確に伝えず
夢の新薬と騒ぎ過ぎた一部メディアにも責任の一端があります。
昨年までなら、年間3500万円も費用がかかった薬を
どうやって、自由診療で処方してきたのか。
医薬品業界では密かに「薄める」という言い方をしますが、
要するに投与量をおもいっきり減らすことでコストを
抑え、これだけ少ないのだから、副作用もないと
言ってのけるわけです。
そこは、メーカー側も心得たもので、投与量を
3分の1以下にすると、効果が期待できない
というデータを発表しております。
新薬開発には、60億ドル~80億ドルもかかる
と言われますが、これだけの資金を負担するのは
ベンチャー企業どころか、日本の医薬品メーカーに
とっても難しいのです。
免疫チェックポイント阻害薬の臨床開発の詰めは
米国で先行されたため、日本のメーカーは
米国等、海外の多くの地域の販売権を手放しています。
そのため、クリニックが個人輸入すると
「はずされる」わけです。
もし、自由診療で、投与量を3割未満にすると
患者本人の負担額は、保険診療の場合よりも
安くなります。 高額医療保障で還付されることを
考慮しても、投与量を下げていけば、自由診療の方が
安く費用を抑えられ、保険適応になっている
ケースでも、クリニックで受診した方が「お得」
という風に見えてしまいます。
もちろん、投与量を相当、減らしているので
効果はないはずですが。
こうした抜け駆け的な動きに対して、自由診療で、免疫療法
やってるところはけしからん、とか、有効性が確認されて
いないものをやってるとか、よからぬ「噂」話も含めて、
マスメディアなどを使って、広める努力をしておられるわけです。
ANK療法のグループは、「御商売」の邪魔はしていないのですから
ちゃんと分けた方がいいのですが、こういうキャンペーンを張って
おられる方に実際に話をきくと、正確なことは何もご存じないようです。
とはいえ、1品目で、1000億円レベルの保険診療市場と
町のクリニックが、ちびちびと、個人輸入している
自由診療市場というのは、大海と水溜まり程の差があります。
なぜ、そこまでめくじらを立てるのでしょうか。
大騒ぎをしておきながら、結局、何を狙っているのかというと
免疫チェックポイント阻害薬を処方してもいい医療機関を
絞り込むガイドラインを制定し、何のことはない
批判をうけやすい町のクリニックをネタにしておきながら
大病院だけが、高薬価のついた「夢の新薬」の処方を
独占することをもくろんでいるわけです。
厚生労働省は、医師の裁量権を束縛するものではない、と
医師会にも配慮をした発言をしていますが、医薬品メーカーに
とっては、お客さんの数が減るのは損になるのでしょうか。
そうとも言えません。
大病院は、自社MRが直接カバー、中小は卸が営業をかけ
大口ユーザーは、メーカーが卸に寵愛で商売を回します。
大口ユーザーに絞って、営業コストを抑え、そこが
大量に買ってくれる方が、当座は、効率がいいのです。
こういうやり方をしていると
ジェネリックが登場した際、市場を食われやすくなりますが
化学合成された医薬品ではなく、培養細胞がつくりだす
高分子である抗体医薬品が主流の免疫チェックポイント阻害薬
の場合、そうめったにジェネリックはでてきません。
こうして、各勢力の思惑が錯綜する中で
ゆがんだ情報が報道されていきます。
ちなみに、夢の新薬では、がんは治りません。
ある限定された効果が認められただけです。
一体、誰が、患者さんの命のことを考えているのでしょうか。