2017.4.28.
産経新聞に大きく
「抗がん剤は効かない」という
タイトルの記事が載っていました。
タイトルは、アイキャッチを意識し過ぎの感があり
内容は、そこまでのものではありません。
高齢者に抗がん剤投与を行う是非について
がん研究センターが調査を行うことを
報道するものです。
前提として、70歳以上の抗がん剤投与は
効果がないのでは、という問題認識がある
ということになっています。
事実は、「効果」はあります。
もちろん、効果がないケースは
いくらでもありますので
「効果があるケースがある」
というのが正確な言い方です。
判定基準を延命効果とすると
投与しても、しなくても余命は
変わらないのではないか、という
指摘があるということです。
腫瘍縮小効果がでることはありますので
ANKの培養、抗がん剤投与、ANKの点滴
というパターンで意味のある治療はできるはずですが
標準治療の枠組みだけで考えれば
抗がん剤投与のあと、手がありませんので
一時的な腫瘍縮小効果ではなく
生存期間が延びるのかどうか、
そこだけをデータ処理すれば
まあ、延命効果はないな、、、
ということになるようです。
標準治療の医師の中で
気付いている方も、ごく少数
いらっしゃいますが
ANK療法受診を前提にすると
抗がん剤は、通常、考えられているより
もっと役に立ちます。
高齢者の場合も、抗がん剤による腫瘍縮小を
狙いながら、ANK療法を休薬期間に少量投与することで
体力の消耗を防ぎ、抗がん剤の副作用を緩和し
薬剤耐性が出現すると、抗がん剤投与を中止し
ANK療法の全量投与で、残存がん細胞の殲滅を
図る、という基本作戦は、実際に実施されています。
標準治療においては、
抗がん剤は効かないどころか
「進行がんは治らない」
という前提にたっていますので
抗がん剤の腫瘍縮小効果も
延命に寄与しなければ有効とは
考えないわけです。
ANK療法を組み込んで
「完治を目指す」
という立場にたてば、
抗がん剤による腫瘍縮小効果は
延命どころが、救命への可能性を
拓くこともあります。
本来、効果というのは
患者さんの命や、体の状態を基準に
考えるべきものですが
治験の結果として統計処理されるものに
してしまったため、治療設計全体の中での
有効性をみることはできず、
シンプルなデータ
つまり、「患者さんの死亡日」これだけを
みるようになったため、
どういう治療の組み立てが
患者さんにとって有効かを
考えられなくなっています。
エビデンス至上主義の典型的な弊害です。
ANK療法の実施を前提にすれば、
抗がん剤の適切な投与パターンは、
「強く」「短期間」の間に
集中投与、です。
どうせやるなら、ファーストラインに
一番、強いのをもってきて、ダメならもうやめる。
ところが、保険診療においては、
逆の方向に進んできました。
かつては、尋常でない量の抗がん剤が投与され
がん患者さんの8割は、抗がん剤の副作用で
命を落としている、とおっしゃる専門家も
いらっしゃいました。
私も、こういう見方に、さほど違和感はありませんでした。
実際、抗がん剤大量投与により、人がどうなるのか
みてきましたが、あれは、思い出したくもない惨状となります。
ところが、奏効率を高くするほど、
患者余命は延伸しないどころか
むしろ、短くなる、という指摘が
方々からありました。
効果判定基準というのは、かつては食欲回復など
諸症状改善でOK、次が、腫瘍縮小による奏効率
今は、延命、です。
腫瘍縮小をみる場合は、画像上の大きさの縮小率を
奏効率とするのではなく、半減以下に縮小した人が
投与群の何パーセントなのか、という測定の仕方をします。
つまり、大人数で試験をしないと数字になりません。
この場合、奏効率が高い、とは、それだけ
がん細胞が多く死滅した、ということで
ここまでは「いいこと」ですが、
正常細胞の方が、はるかに増殖速度が速いため
がん細胞を圧倒的に上回る数の正常細胞が
死んでしまいます。
すると、
奏効率が高い ⇒ がん細胞がたくさん死んでいる
⇒ 正常細胞は、もっとたくさん死んでいる
⇒ 患者さんの余命は縮んでしまう
つまり奏効率が高いほど、患者さんの余命は縮むという
理屈から言えば、当たり前のことが起こってきたわけです。
これは、腫瘍縮小だけを都合よくデータにするからです。
これを「有効性と安全性が確認された」正しい標準治療と
言ってきたのです。
すると、投与量を減らし、奏効率を下げることで
余命は延びる、ということになり、実際、
そうなってきました。
最近の抗がん剤は進歩してきた、といいます。
何が変わったのでしょうか。
第二次大戦中に開発された5FUは
今も、主役です。
数十年、使われてきた抗がん剤の顔ぶれに
大きな変更はありません。
投与量を減らすようになったのです。
これを、進歩と呼んでいます。
また、投与期間を永く引っ張ろうとします。
かつて、ファーストラインで強い薬
効かなくなったら、セカンドラインで次の薬
とやっていたのですが、セカンドラインはほとんど奏効しません。
ならば、と。
ファーストラインにわざと弱い目の薬を使い
効かなくなったら、強い薬をセカンドラインに
もってくる、こうすれば、確かに、セカンドラインが
奏効する率はあがるのですが、わざわざ、がん細胞を
ファーストラインで鍛えておいて、強くなったところへ
セカンドラインをぶつけています。
そんなことをするより、ファーストラインでいきなり
強力に攻撃する方が、がん細胞の数を薬としての限界まで
減らしていくことができ、そこへANK療法投入が
理想的です。
更には、休眠療法という考え方も広まり、
がんが憎悪した時は、少し投与し、あとは
投与しないで様子をみる、というやり方です。
抗がん剤しか手がないなら、確かに
妥当な作戦なのかもしれませんが
これもまた、「強いがん細胞を育てる」ことになるので
休眠療法でひっぱって、奏効しなくなってから
ANK療法となると、敵の戦力は強大なものに
育成されてしまっています。
抗がん剤は、強く、パッと効かせて
さっと身を引く。
あるいは、ANK療法を休薬期間に用いて
抗がん剤の副作用を緩和しながら、
とことん、投与を繰り返すのが
進行がんを克服する公算を高くする方策です。
このごろは、低用量の連続投与も始まっています。
休薬期間を設定しないで、抗がん剤を連続投与するのです。
従来の投与量で連続投与すると正常細胞が壊滅しますので
患者さんは生きていけません。
そこで投与量を一段と減らしたのです。
抗がん剤の進歩とは、徹底して、投与量を減らす方向へ
向かう、ということなのです。
ところが、これをやられると猛烈に半端ない骨髄抑制がかかります。
いくら低用量であっても、休薬期間がないと、正常細胞の
ダメージは壊滅的になります。
抗がん剤をすでに始めている患者さんが、ANK療法を受診される際
通常なら、ANK療法のリンパ球の採取は、休薬期間に行いますが
低用量連続投与の場合は、投与期間中に、リンパ球を採取します。
そうしないと、低用量連像投与が終わるまで待っていたら
NK細胞は、本当に、少なくなってしまいます。
エビデンス至上主義の最大の問題は
ある偏った前提をもっていながら
他の前提は考慮せず、単純なデータだけで
正しいと決めつけ、他の可能性を排除することです。
抗がん剤投与と免疫力の回復という
合わせ技ではなく、ひたすら免疫力低下を来す
抗がん剤のみの投与だけを前提に
抗がん剤が有効か否かを議論してきたわけで
抗がん剤の本来の有効な使い方を
ますます見失う方向へ迷走しています。