2017.6.1.
このところ、下火になってきましたが
2~3年前まで、必ずといっていいほど
ご質問をいただいたのが、
「先進医療保険」について、です。
最近では、どうもあまり使えないものだ
という認識が広がっているようです。
患者さんや、まだ病気になっておられない方にも
「正確」な情報を伝えることは、最低限、
重要なことです。
ところが、医療に関する情報は、誤解や錯覚を生むもので
満ちています。
「先進医療」もその一つです。
ほとんどの患者さんは、先進医療を受診できません。
これはあくまで、保険診療機関が、ある種の「実験」を
行う際に、自由診療となる「実験」と、通常の保険診療を
両方、実施し、保険料は満額受け取り、自由診療部分は
患者さんに費用を請求しても構わない、という制度です。
患者さんの都合ではなく、実験する側の都合を全面的に
サポートするものです。
ところが、先進医療保険とか、先進医療特約というものが
あるため、状況が、複雑化します。
自由診療を受診する場合、先進医療であれば、
費用負担は自分自身であっても、民間の先進医療保険を
使える、と考えられるわけですね。
実際には、先進医療というのは、非常に例外的に
実施されるものであり、目的は、あくまで
「実験データの収集」にありますので
特定の大病院などで、一定期間だけ実施され
データ収集という目的に合致した患者さんだけを
「実験する側」の都合で選びます。
患者さんが自分から先進医療を受診することを
求めても、実験条件に合った人以外は、受けられないのです。
たとえば、広島大学さんが、NK細胞療法の先進医療制度の
適用を申請されたことがありましたが、では、実際に、
データ取得に合致する患者さんは、どれくらいの人数に
なるのかというと、2年間で、14名様でした。
(この数字は、適用申請前のものです)
年間、40万人以上が、
がんでお亡くなりになっているのですから
これは、あくまで、「研究」が目的です。
ANK療法を先進医療として実施する検討は
何度もやりましたし、実際に、申請の直前まで
いったこともありましたが、問題になるのは
「何のデータを取るのが目的か」です。
患者さんのがんが消失して、元気になります、
では、先進医療的ではありません。
臨床現場で行われている集学的な治療設計
つまり、患者さんが元気になっていく、と
考えられる、あらゆる治療を集中的に用いる
という考え方は、先進医療制度には合いません。
限られた治療を、極力、同じ条件(そんなものは
実在しないのですが)の患者さんに、実施し
何らかの、「見えやすい」データを収集する
ことをやらないといけません。
がんの場合、分かりやすいデータはとりにくいので
詳細な条件を詰める必要がありますが、それをやると
該当する患者さんは、極めて少数、ということになります。
何より、データにならなくなる、とよろしくないので
他の治療は原則、受けないことが条件になります。
患者さんにとっては、大変な不利益になります。
実際には、使えないではないか、という指摘は
昔から根強くあり、実験側都合ではなく
患者側都合を優先させる、「患者申出療養制度」が
スタートしています。 これも、同一医療機関内で
保険診療と自由診療の両方を受診してもOKという
混合診療規制の適用除外制度であり、ここまでは
先進医療制度と同じなのですが、大きな違いは
データになるならない、ではなく、患者さんに
とって、よかれと考えらえる治療の組み合わせを
混合診療規制の違反にならないで実施するための
制度です。 あくまで、患者さんの都合を
最優先です。
さて、高度先進医療制度に始まり、管轄も文科省から
厚労省に移り、従前の法律は廃止になって、似た名前の
別の制度が立法化され、適用細則が、毎年のように
コロコロ変わり、、、、 先進医療制度といっても、
それは、○○年〇○月時点の先進医療制度のことですか?
時期によって、制度の内容がまるで異なります。
保険は本来、加入してから、5年10年どころか
ほぼ生涯、加入し続けるものもあるわけですから
コロコロ変わる制度を対象にすべきではないでしょう。
先進医療保険が使えるかどうかの判断は
保険会社によって、まったく異なるようです。
今、実際に登録され、実施されているものだけ、、、
となると、ほんとに、ごく一部の非常に稀なケース
だけが該当になります。
これまで先進医療制度のリストに載っていたような
こういう治療なら、保険が使えますよ、と
書いてあるものもあります。
その際、「免疫細胞療法」という言葉はあまり
使われません。
先進医療制度に登場してきた名称は
「活性化自己リンパ球移入法」です。
ANK療法の正式名は、
「ANK自己リンパ球免疫療法」
ですが、広い意味での
「活性化自己リンパ球移入法」の一種です。
先進医療制度なんて、しょっちゅう、リストが
更新されるわけですし、今、実施中、などと
言い出したら、○○大学と△△大学と
あともう一か所だけでやってます、、、
という特定施設だけが該当、ということになりがちです。
「使える保険」であるためには
先端的な医療で、概ね、こういうものなら
基本的に使えますよ、とやらないと
加入後、10年、20年もたったら、
実施されている医療そのものがゴロっと
変わってる可能性もあるわけです。
大雑把な分類でいかないと
ほとんど「使えない保険」になってしまいます。
と言う背景もあり、
先進医療保険は、「安い」のです。
名前は、「聞こえがいい」ため
新人保険セールスの方などが
制度の内容もよく知らないで
売り歩いているのが実態のようです。
入る方も、病気になる前ですから
がん患者さんレベルで
真剣に考える人は滅多にいません。
なんとなく、普及し、実際に
がんと診断されると
そうめったに使えない
ということになっています。
民間保険で使えるものとしては
生命保険の生前給付特約で
これは、金額も数千万円から
億単位の保険に入っている人なら
億でもでますが、もちろん
保険料そのものが、かなり高額です。
また、指定医師の余命宣告条件が
ついていたり、適用になる条件が
各社さまざまです。
診断給付型保険というのが
一番、フィットはしています。
受け取れる保険料が、100万円とか
数百万円で、その割には、月々の保険料が
高いように見えますが、逆にいうと
それだけ「使える」保険なのです。
F社さんなどは、先進医療保険やってきたけど
どうも、よろしくないようなので、実際の
医療現場はどうなっているのですか、と
役員さん何人も訪ねてこられ、こうなってますよ、と
金額も含めて説明したところ、ほんとに
診断給付型の、使いやすいものを発売されました。
T社さんも、先代の社長様の時代は
診断給付型を普及させる、ということで
なぜそうなのか、全国の販売員にがん治療の
実態を説明してほしい、と何度も、説明会を
開かせていただきました。
保険会社さんによって、ずいぶんと姿勢や
熱の入れ方が違うのを膚で感じて参りました。
公的保険が使えるのが一番ですが
欧米で標準の分子標的薬でさえ
日本では、ごく一部の部位以外
健康保険の適応にならないのですから
民間保険のがん治療の現場に即した
対応もまだまだ重要なことと考えております。