2017.7.12.
CAR-T療法(CTL019)が、
びまん性大細胞型リンパ腫に対して
CR率が43%というニュースが
リリースされ、
ずいぶん時間がたちましたが、
まだまだ、話題になっています。
CAR-T療法については、
すでに別の機会に説明しましたが
簡単に言うと、T細胞を採りだし、
標的認識センサーを
つくる遺伝子をT細胞に導入し、
その際、複数の標的を認識できるよう、
複数の遺伝子を導入する、
というものです。
結局、がん細胞を狙い撃てる
標的は存在しないため
ほとんど失敗に終わっているのですが、
CD19を代表格に、
特定の正常細胞しか発現しない標的を
狙ったものでは、効果はみられています。
標的物質を絞れれば、わざわざ細胞に
遺伝子操作をしなくても、
シンプルに抗体を投与すればいいわけです。
実際に、抗CD20抗体が
がん治療薬として実用化されています。
ただし、抗CD20抗体は、
B細胞型の悪性リンパ腫を攻撃しますが
正常なB細胞も攻撃します。
CD19に対する抗体は、CD19に結合すると
すぐに細胞内部に取り込まれてしまうため
抗CD19抗体は、開発を断念されました。
そこで、T細胞の遺伝子を改造して、CD19を
認識すると攻撃するようにしたところ、
T細胞が標的細胞に取り込まれることは
ありませんので
とことん、標的細胞を攻撃します。
CAR-T療法の場合、標的がん細胞が
抗がん剤に抵抗性を示すか、示さないのか
原理的には、どちらでも関係ないと考えられ
抗がん剤が奏効しないケースに、有効であれば
使ってみる意味はある、と期待されています。
ただし、これまでのところ、一時的にCRに
なっても、速やかに再燃を招いてしまう、
正常細胞もやられてしまう
免疫副反応が激しすぎる
など、問題点も山積みです。
なお、他家細胞を使うと、T細胞の場合は
拒絶反応の問題がありますし、
自家細胞を使うとなると、
コストがすさまじいものになります。
今のところ、数十万ドルはするのでしょうか、、、?
遺伝子操作によるがん化リスクもあるわけですが
この点は、抗がん剤でも遺伝子損傷に
よるがん化リスクがあるのを承知で
使っているわけで、
目の前で火を噴いている
進行がんを相手にする場合、
十分な効果を期待できるのであれば
将来のがん化リスクはある程度、
容認するという
標準治療の枠組みの中で
捉えられるのでしょう。
CAR-T療法は、適切な標的が存在しない以上
悪性リンパ腫あたりを狙うしかなく
抗がん剤が奏効しないケースで
抗体医薬品が使えないケースに
莫大な治療費をかけてでもやるだけの
効果と副作用のバランスをとり
費用がどうなるのか、と
かなりの無理が見えます。
悪性リンパ腫関連で、生き残るのか
消え去るのか、ここしばらくが正念場です。