T細胞に遺伝子操作を行い特定のシグナルを発現する標的細胞に対して、T細胞が傷害活性を発揮するようにするものを、CAR-T 療法といいますが、Cは、キメラの略で、複数のシグナルを一緒に入れるのが原則です。
このCAR-T 療法、ほとんど効果なく失敗の連続でしたが、どうにかこうにかCD19を標的とするものについてはある程度の効果がみられます。
ただし、CD19は、正常なB細胞の表面に発現しており、抗CD19-CAR-T療法は、正常なB細胞を傷害します。
また、B細胞由来のがん細胞しか見向きもしません。
しかも、かなり激しい免疫副反応を誘導します。
T細胞を漠然と、がん患者さんの体内に投与するとどうなるか。
何も起こりません。
がん患者さんの体内の非常に強い免疫抑制に対してまともに抵抗できるのは高活性NK細胞しかありません。
T細胞や樹状細胞は直ちに活性低下します。
そこで、CAR-Tをつくる際には免疫刺激を誘導する工夫をしてあります。
それが結果的に過度の免疫副反応を引き起こすようです。
抗CD19-CAR-T 療法は、悪性リンパ腫に対して「よく効く」ような報道がされていますが、実際には奏効しても、その後、再燃するとか合併症による死亡率も高いなど、多くの問題があり所詮は、T細胞に過ぎないという一面もあります。 治療後1年以内に亡くなられる方はおおむね半数ほどになります。
T細胞は、がん細胞を狙い撃つことができませんので、CAR-Tの標的もがん細胞/正常細胞、どちらにもあるもの、当然、正常細胞も攻撃されるわけですし活性を高める工夫をすればするほど副作用が激しくなります。
そして、他にも大きな問題があります。
値段です。
近く、米国政府の承認を取得する可能性がある抗CD19-CAR-T 療法は、現在の為替で、治療費 7400万円です。
(後日加筆:7400万円は承認前のアナリストの予想価格です。実際には承認当時の為替で5000万円強の薬価がつきました。国内薬価は3300万円です。)
これで、「治る」わけではありません。
オプジーボが日本で承認された当初1年半ほどの治療費が5000万円で、それで特定の部位に限って1~2割の患者に延命効果がみられ、1割の患者が死に至る重篤な自己免疫疾患だったわけです。
その後、半額になりましたが、まだまだ高額であることに変わりはありません。
半額になっても、採算は取れているわけですので如何に利益率が高かったかが、うかがえます。
CAR-Tの7400万円というのは日本の薬価とは違いますが、単純に、日本で薬価が7400万円だったら本人負担が2200万円ほど。 (後日加筆、薬価は3300万円となりましたので、本人負担はおおよそ1000万円ほどです)
標準治療の費用は、進行がんの場合2000万円以上かかっています。
介護費や、労働機会損失などを加えると、トータルその倍。
世界でいうと、治療費1兆ドル
付帯費用1兆ドル です。
ANK療法の1クール400万円強というのはあとに残る副作用もなく、延命ではなくて完治の可能性を狙う、ということを考えれば「相場感」としては、ずいぶん安いのです。
では、なぜ、政府承認を取得すると値段が、異常に高くなるのでしょうか。
どんなコストがかかっているのでしょうか。
膨大な書類作成や、書類を作成する基になるデータをとるコストもかかりますが何といっても、「値段」には、莫大な利益が含まれています。
健康保険適応というのは、非常に利益率の高いビジネスを保証するという意味があります。
ANK療法を保険適応にするとおそらく、薬価は、2500万円前後くらいでしょう。
本人負担は、今の自由診療の2倍ほどになります。
当然なのですが、自由診療の方が患者費用負担は安く済むのです。
高額医療の還付制度が使える限りはそれでも、保険適応の方が最終的な患者負担は低く抑えられますが、今のままだと高額医療費保障は尻すぼみになっていきます。
さて、私どもは、CTL療法も提供しております。
これは、標的さえ適切に入手できれば、がん患者体内に「存在していた」がん細胞に的を絞りこんで攻撃することができます。
実際に顕微鏡下で患者さんのがん細胞を殺すことを確認した上で、CTLを増殖させています。
CAR-T療法のように、CD19以外の標的はうまくいかない、ということもなく固形がんであれば、概ね、どのようながんであっても、標的がん細胞さえ入手できれば作成できます。
CAR-T 療法よりもはるかに応用が効くCTL療法は、原則、無料で提供されています。
7400万円と無料
値段に差がありますね。。。。
医療の世界は、何かが、「狂っている」のです。