2017.7.26.
がん細胞は、多様です。
同じ人の体内の
同じ腫瘍の中にも
様々ながん細胞がいます。
よく変化します。
細胞表面の物質も
よく変わり、ある物が増えたり
また、減ったりします。
細胞表面全体の、様々な物質群が
おりなす模様のようなものは
がん細胞特有の傾向をもち
正常細胞とは、異なる顔つきを見せ
また、顕微鏡で観察すれば
がん細胞集団の腫瘍組織と
正常組織は、異なる姿をあらわします。
ところが、単一物質として明確な
がん細胞シグナルとなるものは
みつかっていません。
そのため、CAR-T療法という
T細胞に遺伝子操作を加え
特定信号物質を発現する標的細胞を
攻撃させる治療法の場合
標的とする物質は、正常細胞にも
しっかりと発現し、がん細胞にも発現するもの
当然、正常細胞も巻き添えになりますが
それでも治療する意味があるものを
みつけていくしかありません。
単純な標的物質が存在しない以上
CAR-T療法で、がん細胞だけを狙うことは
できないため、効果と副作用のバランスを
どこかで見出していくしかないのです。
では、CTL療法はどう違うのでしょうか。
培養のたびに、標的細胞が異なる、ということです。
千差万別で多様、盛んに変容するがん細胞に対し
患者さんからとりだした腫瘍組織中に存在する
がん細胞と、「型」が一致するCTLを選択的に
増殖させます。
この際、数リットル単位の血液から膨大な量の
T細胞を集める必要があります。
それでも、目の前のがん細胞と「型」が一致する
CTLは、ほんの僅かしかいません。
細胞数トータルでは、T細胞の数は、NK細胞よりも
一桁多いのですが、NK細胞のほとんど全軍が
活性を高めれば、がん細胞を攻撃するのに対し
T細胞の大半は、がん細胞に反応もしません。
どうしても、「選別」というプロセスを経ないと
T細胞は、まったく役に立ちません。
CTL療法の場合、キメラではありませんが
様々ながん細胞の集団に対し、その中のどれかに
型が合う様々なCTLの集団を増殖させる
ということになります。
非常に、認識する相手の「幅」が狭いため
特定のシグナルに反応するCTLだけを
大量増殖させた場合は、ほとんどの
他の細胞には、見向きもしません。
やみくもにCTLを増殖、活性化させると
正常細胞も攻撃しますが、
標的がん細胞に反応するものを
選別して増殖させれば、はるかに
安全なものになります。
CAR-T療法よりも、CTL療法の方が
臨床上の応用が効くのですが、
培養ごとに、標的となる相手の細胞の
「型」が異なります。
CAR-T療法の方が、単一規格・大量生産の
医薬品のような性質に近く
医療産業には馴染みやすいものです。