藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

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2017年08月22日

  

がん, 免疫

2017.8.22.

 

 

 

米国国立衛生研究所NIHが

とりあえず、実用性は棚に上げ

予算青天井で、抗がん剤が奏効しない

進行がん患者さん数百名、全員に

何らかの効果を示した免疫細胞療法。

 

NK細胞療法を想定して設計されていますが

NK細胞だけを分離することはできなかったので

名称は、LAK療法と呼ばれています。

 

無理やり、3日間もかけて

数十リットルの血液を体外循環させて

白血球成分を選り分けるリューコフェレーシス、

大変、高価だった(今でも、まだまだ高いですが)

インターロイキン2を大量に使用

巨大な腫瘍が壊死を起こし

カリウムショックリスクがあるので

ICUを占拠して、多数の医師が

体液コントロール、、、、

 

非現実的なコストがかかるため

その後、二度と、同一条件での

追試は行われませんでした。

 

 

さて、その後、NIHは、どうやっても

NK細胞をトリモチよろしく、

除去することはできるのですが

それでは、残りの免疫細胞全部そろっていても

全く、がん細胞を殺さしません。

トリモチで集めたNK細胞をきれいに

はがして使うことはできず、

結局、NK細胞が、抗腫瘍効果の源であって

他の免疫細胞はまったく戦力にならないことを

示せたのですが、ともかく、

治療に使う実用性の方向には進めません。

 

NK細胞以外の細胞を除去する試みも

延々とトライされ、今でも、研究用には

実施されていますが、どうやって他の

免疫細胞を除去しても、あるいは

薬剤などで、他の免疫細胞に負荷をかけても

活性の高いNK細胞は失われ、

高活性で、野生型のNK細胞集団を

揃えることができません。

 

白血球集団まるごと採ってきて

活性だけ上げておいて、

NK細胞が増殖をはじめ

活性が下がり始める

(活性の高いNK細胞が自爆する)前に

患者に戻すしかない、、、、

 

という限界を超えられず

今も、NIHは、超えていません。

 

 

どかん、と集めたNK細胞集団を

ドカーッと、まとめて戻すと

巨大な腫瘍が壊死を起こし

崩れてしまうので、極めて危険です。

 

つまり、NIHは、NK細胞の培養コントロールが

できない、安全かつ有効という微妙なゾーンに

NK細胞数や活性、点滴で戻すスケジュールの調整

などができず、今も、できていないわけです。

 

「活性の高いNK細胞を選択的に増殖させれば

がん治療は変わる」

 

LAK療法の事実上のリーダーである

ロッテ博士が、ANK療法開発者二人のうちの一人に

語った言葉です。

 

(ローゼンバーグ博士が、プロジェクト責任者ですが

基本的に、予算取りなどが、お仕事。 本職は

外科であって、免疫のご専門ではありません。

実際に、現場指揮をとったのは、免疫学の専門家

ロッテ博士です)

 

その後、NIHは、NK細胞療法の実用性の向上を

諦めたわけではありません。

野生型ではない、ネガティブセレクションが

かかったNK細胞集団の

臨床試験も行っています。

結果は、当然ながら、効果はありませんでした、

野生型ではなかったので。

 

NK細胞が、どれほど、がん治療の切り札としての

特性を備えていても、

培養をコントロールできないのであれば

実用化は見えてこない、、、

ならば、簡単に培養できるT細胞を

どうにか、加工してでも、実用化を

目指せないのか、と考えるようになります。

 

仮に、NK細胞とT細胞の、がん細胞に

対する攻撃力を、単純に比較すれば

その差たるや、数十億倍とか数百億倍にも

なってしまい、NK細胞の圧勝となるでしょう。

 

実際には、人体から採ってきたばかりの

状態では、NK細胞とT細胞が混じっているので

単純な実験はできません。

 

それでも、標的がん細胞と型が合うCTLだけを

大量増殖させることができれば、培養にてこずる

NK細胞よりも扱いやすく、攻撃力の不足は

「細胞数」で補えないのか、そう考えたわけです。

 

 

折しも、腫瘍組織に浸潤する

「勇敢」に見えたT細胞が話題になっており

これが、がん細胞を特異的に傷害する

CTLである、という勘違いが元だったのですが

腫瘍を摘出し、その中にいるT細胞を

大量増殖させるTIL療法の大規模臨床試験が

実施され、まず、単独では何の効果も

ありませんでした。

 

CTLは、免疫刺激作用がなく

体内に戻された途端に、速やかに

がん患者さんの体内特有の強い

免疫抑制によって、活性がなくなります。

 

ならば、と。

免疫抑制をかけているのも

直接的には、免疫細胞である、と。

がん細胞は、間接的に、免疫細胞に

偽信号を送り、騙された免疫細胞自身が

互いに強い免疫抑制をかけているので

強烈な殺細胞剤大量投与によって

体内の免疫細胞を壊滅的に減らしてから

大量培養された腫瘍浸潤T細胞を

体内に戻しました。

 

まったく何の効果もない時もあれば

腫瘍縮小効果が見られる時もありました。

 

残念ながら、腫瘍に浸潤するT細胞の多くが

がん細胞を攻撃するものではなく、

むしろ、免疫抑制系のT細胞が多いことが

後日、判明し、

がん細胞を傷害するCTLを集めるのに

腫瘍浸潤T細胞をそのまま使うのでは

よろしくない、ということが判明しました。

 

 

その後、がん治療の主流は

体内のNK細胞の効率を高める

ADCC活性を作用機序とする

分子標的薬にシフトしていき

免疫細胞そのものを使う治療は

まだまだ、基礎研究のレベルに

戻ってしまいましたが、

何とか、T細胞に仕事をさせようと

あらゆる手法が試されることになります。

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