2017.10.12.
相変わらず、事実と大きく異なる報道が
続いております。
あまり好きではありませんが
トランプ氏の口癖でいうと
フェーク報道だらけ、ということに
なるのでしょう。
厚労省は、免疫細胞療法は法令通りやってください、ということであって、それ以上のことは
言ってないのですが、一部の医療施設が
法令を無視していたため、このところ
なんでも悪いものという無理解に基く
根拠なき誹謗も続いています。
問題なのは、公正であるべきメディアの中にも
繰り返し偏向報道を続けるところがあることです。
たとえば、厚労省が、何か悪いことをやっている
がん拠点病院に乗り込んで取締りをやるような
「錯覚」を与えてしまう報道もあります。
厚労省はそんなことは言ってないにもかかわらず、です。
10月4日の加藤厚労大臣のご発言。
「一部のがん診療拠点病院において、
有効性などが確認されていない
がんの免疫療法が実施されているとの
報道があったわけですが、
一般論としてがんの免疫療法は
がん患者自身の免疫力を高めることで、
がん細胞を排除する新しい治療法
ということであります。
しかし中には、未だ充分に科学的根拠が
蓄積されていないものもあります。」
これを「科学的根拠のない免疫療法を
がん拠点病院が実施している、
厚労省が調査に乗り出す」など、
実態を歪曲し、免疫療法が「悪いもの」
のような印象に誘導する報道がみられました。
免疫療法の科学的根拠は、ほとんどが
米国で確立されたものです。
国内での「集積」は政府の巨額資金が投じられる
米国とは比較にならないレベルというのが実態です。
国内での集積を目指すべく議論はされていますが
少なくとも、厚労省は法令通り治療を実施してください。
これが基本スタンスです。
なお、がん拠点病院では、保険診療を原則とし、
免疫療法については臨床研究・治験の枠組みで
行うのが原則とされています。
また、標準治療を行った後に、
自由診療として免疫療法を行うことは否定されていません。
これはあくまで、がん拠点病院の話であって、
診療所には、このような考え方は適用されていません。
病院であっても「拠点」でなければ
自由度は高くなります。
拠点病院というのは、地域によって
受診できる医療の差を平準化するため
各地の「拠点」と定められたもので
趣旨からいっても、「どこでも同じ」
保険診療を実施するのが基本原則ということになります。
拠点病院というのはそういうものだ、ということです。
当たり前の話なのですが、拠点病院であっても
保険診療に組み込まれたもの以外の免疫療法を実施する場合、
再生医療安全性確保法に基いて届出を提出する義務があり、
定期報告の義務もあります。
どの拠点病院がどれくらいの件数、
免疫療法を自由診療で実施しているかは
元々、把握しているわけです。
今回の議論では、実施にあたり、
法令の定めとは別に、がん拠点病院としての
倫理委員会での審査の在り方や体制など、
実態面の調査を行うと8月に決まっていたことを
今後、実施していく、ということです。
自由診療主体でがん治療を行うクリニックの場合は、
元々から「平準化されたがん治療」を
全国に展開することは求められていません。
どういう枠組みで実施するからは
法令がありますので、その通りにやっていれば
問題ない、ということです。
科学的根拠の蓄積については、
臨床研究法の議論の中でも明確にされていますが、
「一般診療」と「臨床研究」は異なります。
一般診療は、患者さんのためによいと判断されることが
重視されるもので、患者さん毎の個々の症状や容態、
治療履歴などによって治療方針の最適化、
個別対応が行われるのが理想です。
つまり、いくらやっても、同一基準で実施された
治療のデータの集積にはなりません。
臨床研究は、データの集積が目的ですので、
可能な限り、同一というのは現実にはありえないにしろ、
類似する症状の患者さんを集め、
統一された治療プランを実施して、結果を統計処理していく
ということになります。
臨床研究は有償でやっても違法ではないのですが、
患者さんの都合よりも、データ収集上の都合を優先させるので、
通常は、無償で行うべきものと考えられています。
また、データ管理等に第三者機関を起用し、
高額な費用を支払う必要があり、
一般に大変な金額がかかるものとなります。
患者数が多い部位のがんの治験の費用ともなれば
1プログラム当たり100億円以内に納まれば随分と節約された、
というイメージです。
もちろん、ごく少人数に限定して、
費用を抑えるものもあります。
それでも、厳密な管理基準での治験を数億円以下で
実施するのはかなり無理があります。
結局、自由診療で一般診療として、何人治療しても、
やっていることによって手応えは分かるのですが、
これをシンプルなデータにするのは無理がありますし、
無理やりデータ化しても、それでは原則、
承認申請のデータとしては使えません。
現在、何とか一般診療の実績を承認審査の
データとして使えないのか、
ということで基準策定作業が行われていますが、
基本的に一般診療をいくらやっても、
承認取得にはなりません。
それにしても、免疫療法がまるで悪いもののように
報道する人たちは、自分が、がんになったらどうするんでしょうねえ?
早期がんなら標準治療だけで助かる人が多いのですが、
進行がんとなるとどうするのでしょうか。
「正しい標準治療」だけを受けることに決め、
「安全性が確認された」抗がん剤の大量投与により、
「正しい猛烈な副作用」に苦しみ、
「有効性が確認された」通りに死亡に至る、のでしょうか。
と書いてしまうと抗がん剤が悪いもののように言ってるようで
偏向報道とかわらないものになってしまいますが
抗がん剤には勢いが激しいがんほど、一時的に勢いをそぐ
「効果」はあります。 そのあとが大変で、がんが反撃に転じ
くるとどうにもならなくなるわけですが、私どもは
抗がん剤は、おおざっぱに敵の勢力をそぐもの
ANK療法は、体内に分散しているがん細胞であっても
殲滅を図るもの、また、抗がん剤の副作用を和らげるもの
と特性が異なるので両方ともうまく使って
進行がんの患者さんであっても生き延びていただきたいのです。
さて、
「全ての国民が等しく平準化された治療を受けられる」
というのは、ここだけ聞けばいいことのように思えてしまいますが、
「平準化」された治療では、進行がんの人は、
ほぼ命は助からないわけです。
そんなものを平準化したり、
「標準治療」と言って、他を排除するのは、
国民の命を守ることを放棄していることに他なりませんし、
そもそも、日本の標準治療なのであって、
欧米では抗がん剤の使用は抑えながら
免疫と好相性の分子標的薬が主流になっています。
世界の標準治療とは異なる旧態依然とした
抗がん剤中心の進行がん対応だけを正しいものとして、
他の可能性を排除するような風潮は
人の命さえ大事にしていない、ということになります。