藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

TOP

2018年02月21日

  

えとせとら

2018.2.21.

 

トヨタ自動車さんが従来と組成や構造が

異なる新しい磁石の開発を発表し

話題になっています。

 

電気自動車はもちろん電気で走るわけですが

電気を蓄えるバッテーリーの選定や

主力となっているリチウムの需給については

よく話題になります。

一方、モーターの効率は電流に

対してどれだけ発熱を抑えられるかで

決まり、同じ「力」を生み出すのであれば

磁場を強くして電流を抑える、あるいは

同じ電流なら磁場が強いほど出力がでます。

 

モーターに使う磁石をどうするか

という問題もバッテリー問題と

互いに影響しあう重要なテーマです。

 

自動車用には電流を通している間だけ

磁場を発生する電磁石ではなく

常に磁場を発するいわゆる

永久磁石が使われています。

 

永久磁石というと永久にエネルギーを

発生し続けるように思う人もいらっしゃる

ようですが、磁場というのはエネルギーでは

ありません。 物理学ではポテンシャルと

言うのですが、重力もそうですね、重力を

維持するのにエネルギーは使われません。

 

となれば強力永久磁石が使えるのなら

その方が都合がいいわけです。

 

天然の磁石は昔から知られ

帆船時代から針路を知るのに

使われていましたが人工の磁石が

最初に開発されたのは東北大学です。

 

また特に強い磁場を発する

ネオジウム磁石を開発したのも

東北大学です。

 

有名な東北大学金子研究室の

門下生とご一緒に超高性能の

リニアモーターを開発製造する

ベンチャー企業に参画しCFOを担当した

ことがあったのですが、磁石というのは

当たり前に知っているものの、その本質を

理解するのは相当難しいものがあります。

 

たとえば代表的な磁石である

鉄ネオジウム・ボロン磁石がさびてしまうと

使えないと多くのモーターメーカーの

技術者が思っていましたが

成型後にさびたのであれば

形が崩れてしまわない限り

実際には何の問題もありません。

 

磁場は常に反磁場を生むのですが

これはもう量子力学より難しいかも、、、

というレベルの話。

 

さて工業用磁石といえば

ほとんどがネオジウム系のもので

鉄とホウ素を加えたものや

コバルトを加えたものなど

バリエーションはありますが

主成分はネオジウムです。

 

ところがネオジウム磁石は高熱によって

磁力を失ってしまいます。

自動車のエンジンに使うのは難しいということで

効率は悪いものの熱には耐える

サマリウム系の磁石が有力視されていました。

後にネオジウム磁石にも原子量が大きな

同系統の物質を加えることで耐熱性を

向上させることに成功しますが

添加物はネオジウム以上に微量にしか

存在しない貴重なものです。

 

レアアースはどこにでもあります。

東京であれ、北京であれ

土を掘ればそこにレアアースがあります。

稀に土にある類のもの、と名前の通り

あるにはあるのですが含有量が微小に

過ぎません。 そのため大量の土を

掘り起し、濃硫酸や濃硝酸で焼くので

猛烈な環境破壊となります。

以前はモザンビークなどで精製して

ましてが中国が内モンゴル地方に

躊躇なく公害をまき散らしながら

最大のサプライヤーとなりました。

 

黄砂が運ぶレアアース工場の有害ガスは

日本にも運ばれ、相当の健康被害を

及ぼしているはずですが、最近では

中国の自動車の排気ガスもひどく

他にもいろんな汚染源があります。

 

余りに汚染がひどいので流石の中国も

規制に乗り出し、どこかの工場に指導が

入った、という話がでる度に相場が

上昇しました。

ネオジウムは年契で引き取数量を

コミットしないといけないので

足りないと大変ですから多い目に

仕入れます。そのため購入計画をたてるのが

大変でした。

 

高純度ネオジウムは酸素に

触れるとすぐに酸化するので

真空チャンバーやら窒素ガス封入下での

作業などなかなか面倒で

昔ながらの金属を精製する方法

つまり鉄を打つというように

ハンマーで叩いて表面に浮いてきた

不純物を飛ばす手作業も行われます。

 

土を焼いてネオジウムを精製すると

他のレアアースも一緒にとれ

特にランタンが大量にとります。

昔はTVのブラウン管に使っていたのですが

今は需要も大してなくネオジウムを基準に

生産量を決めると他にも

余るものだらけとなります。

 

 

今回のトヨタ自動車さんの技術は

ランタンとセリウムを混ぜても

磁石としての性能を維持でき

また、ネオジウム以上に希少な金属を

加えなくても熱による性能劣化を

抑えられるというもので

ネオジウムの使用量を半減以下にでき

レアアースの生産バランスからいっても

捨てていたものを使える効果が生まれます。

 

こうした基本的な素材を使うものは

そう滅多に革新的な技術がでてくるものではなく

教科書に載っているような物が実際に

製造現場でも使われているという世界ですが

今回の発明はかなりのインパクトを

もたらすでしょう。

 

 

 

 

 

>>全投稿記事一覧を見る