はしかの流行が続いています。
原因とされるウイルスは「ヒト」を宿主とする、つまり人間が自前にもつウイルスであってインフルエンザのように他の動物から「やってくる」ものとは違います。
感染力が異常に強いですが、症状を発症する力が強いのが最大の特徴です。
細胞を調べればウイルスはうじゃうじゃ存在するのですが、大半のウイルスが通常は病気をおこしませんので、ほとんどの人は生涯、自分の体内にいる膨大な種類のウイルスの存在に気づくことはありません。 たまたま伝染病の研究の過程で関連するものとして発見されたウイルスだけが極端に注目されてきたため、ウイルスは病原体というイメージがつくられましたが、ほとんどのウイルスは病気とは関係ありません。
その点、野生型の麻疹(はしか)ウイルスは感染経験のない人に対して異常に強力な感染力を示し、ほぼ確実に何らかの症状を発症させます。
これといった治療法はないのですが、それはほとんどのウイルス関連病と同じです。エイズやウイルス性肝炎については、薬剤療法の改良によって従来なら死亡に至っていたケースを長期生存や症状をほぼ消失させることもできるようになってきましたが、それは研究者の努力の賜物でもあり、また致死率が高いゆえに軽微なウイルス感染症では投与不可となる副作用が強烈な毒性の強い薬剤を大量投与することが容認されるという背景もあります。
細菌は人間の細胞とかなり構造が異なる「まったく別の生き物」ですが、ウイルスは基本的に自分の細胞が作り出すものであり、ウイルスだけを都合よく攻撃し、「宿」になる細胞にダメージを与えない薬をつくることはできません。 そのため、抗生物質のような標的を狙い撃ちにする薬は存在しません。
はしかの特徴は感染力の強さに加え、ワクチンによる発症予防効果が極めて高いことです。ワクチン反対論者もはしかワクチンだけは効果なしとは言わないのです。
(続く)