藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

TOP

2018年06月05日

  

がん, 免疫

 

AFPBBの免疫細胞療法報道に関しお問い合わせを頂きました。

 

Nature Medicine (4.Jun)に論文掲載されています。

 

HR+、転移+、化学療法が奏効しない進行乳がん患者さんに免疫細胞療法を実施し腫瘍縮小後、予後良好とあります。

 

乳がんは免疫チェックポイント阻害薬が通常奏効しません。

 

まず患者さんの腫瘍に浸潤したT細胞(TIL)を集めます。体内の免疫抑制を強力に緩和した上で培養TILを体内に戻せば奏効する「ことがある」のは1985年に大規模臨床試験で証明されていますのでここまでは古典的な手法です。

 

今風なのは腫瘍細胞の遺伝子を調べ変異が見つかった抗原で培養細胞を刺激した点と、免疫抑制緩和に免疫チェックポイント阻害薬を用いた点です。

 

1985年時には大量の殺細胞剤により体内のリンパ球を根絶やしにしました。実際に免疫抑制をかけているのはがん細胞の偽信号に騙された免疫細胞自身だからです。無人の荒野にしてTILを投与すると奏効する「ことがあった」のです。

 

当時の大規模臨床試験ではNK細胞大量に採取して活性化後に体内に戻した場合は全症例において効果がみられましたがTILのようなT細胞系の場合は「当たり外れ」がありました。

 

今回はTILを細胞ソースに用いましたのでこの時点で腫瘍特異的なCTLが多少は混じっていたと考えられます。 但しTILの多くは制御性T細胞という免疫抑制系T細胞であり闇雲にTILを投与するのは問題ですので今回の様な何らかの「調整」が必要です。

 

今回のように患者由来の腫瘍が使える場合は私どもでは大量の末梢血中のリンパ球から患者体内の腫瘍細胞を実際に傷害することを顕微鏡下で確認した特異的CTLを選択的に大量増殖させてANKを補完する補助療法として併用しますので、遺伝子変異の有無にかかわらず、より確実に現実的なコストでCTLを誘導できます。

 

>>全投稿記事一覧を見る