藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

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2018年07月05日

  

がん, 免疫

5月17日発行の The New England Journal of Medicine にニポルマブ(オプジーボ)をATL(成人T細胞白血病)患者さん3名に1回投与したところ急激に症状が悪化したという臨床報告が掲載されていました。

 

患者さんは、それぞれ慢性型、くすぶり型、急性型です。

ATLは遺伝子の変異が激しいのですが特にTCRの変異によってPD-L1を過剰に発現している患者さんが選択されました。

ATLというのはHTLV-1型ウイルスに(主に)母子感染した人が発症するもので日本の場合は生涯発症率が5%ほどで、95%の人は発症しません。 

ただし国によって発症率は大きく異なります。 

Aggresive ATL の平均余命は13ケ月しかなく、毎年1100人ほどが発症し1100人ほどが亡くなっておられます。

 

標準治療で命が助からないというレベルではなく、そもそも標準治療と呼べるものが存在しません。 

NK細胞のADCC活性を作用機序とする分子標的薬モガムリズマブが承認されていますが、通常ADCC活性により2倍程度NK活性を増強するところをある種の改造によって100倍程度もNK活性を増強します。

こうなるとNK細胞以外にも好中球など微弱なADCC活性をもつ他の細胞も活性化され激しい炎症を起こし激甚な副作用を伴います。

 

大変残念ですがニポルマブ投与後1週間以内に被験者全員の症状が急激に悪化し放射線や大量の抗がん剤投与を行ったとありますがATLに抗がん剤はあまり奏功せず、奏効しても直ちに再燃します。

 

ニポルマブが周囲に大量に存在するPD-L1からの抑制信号を抑え、結果としてATLの憎悪を招いたのかもしれません。

ATL患者は非常に強力な免疫抑制状態になりますがATLの多くは制御性T細胞ががん化し異常増殖したものです。複雑な制御系に薬剤を投入すると、どのボタンをどう押すのか非常に複雑です。

 

 

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