藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
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2018年09月10日

  

がん, 免疫

発生したばかりのがん細胞集団は弱くてたちどころに免疫細胞の餌食になる、、、のでしょうか。

 

ある程度大きくなった腫瘍組織は炎症を起こすため免疫細胞の関心を呼びやすくなり、排除される可能性が高くなると考えられます。一個や二個のがん細胞を免疫細胞が見落とさずに見つけるのかというと、そこまではわかりません。 ですが、ある程度大きくなっても直ちに叩くのであれば問題はありません。

 

では、がん細胞はどうやって免疫の攻撃を逃れようとするのでしょうか。

 

いくつも手法があります。

 

がんはしばしば免疫抑制系の免疫細胞を積極的に呼び寄せます。よく知られているのは制御性T細胞(Treg)です。腫瘍組織の中には意外と沢山の免疫細胞が一緒に暮らしています。その中にはキラーT細胞もいますが、免疫細胞の攻撃性を抑える制御性T細胞がよくみつかります。 がんは自分を攻撃するキラー系免疫細胞を眠らせるために別の種類の免疫細胞を利用しているわけです。

 

エクソームも多用します。

 

免疫細胞同士の暗号通信に用いられるサイトカインのカクテルを膜に詰めた小さな袋(エクソーム)を放出し諜報戦を仕掛けます。免疫抑制物質を単独で大量放出しても目の上のコブであるNK細胞を眠らせることは難しいのですが、複雑な免疫細胞間の暗号通信のコードを知り抜くがん細胞は巧みに偽信号を暗号化してしのばせ、欺瞞するのです。

 

転移先の特定組織を狙って作用し、転移の受け入れ態勢を整えさせるエクソームの存在も知られています。

 

リンパ節に張り付く樹状細胞は、原発巣からリンパ管経由、転移先へとがん細胞を誘導することも妨害することもあると考えられています。どちら側かは判然としませんが、樹状細胞もがんとまったく無縁ではなく、「関係」はあります。旗色鮮明ではなくがん治療に使うには不向きですが研究対象としては重要です。

 

がん細胞と免疫細胞、とても複雑な関係なのです。

 

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