本庶佑先生がノーベル賞を受賞されたことに心よりお祝い申し上げます。
本庶佑先生が大阪大学で生化学の講座をお持ちの頃、私は生理学の最底辺にいる「学生」で文字通り試験管を洗っており、雲上遥か高い存在でした。本庶佑先生の講義は受けなかったですが、当時から学内の様々な議論の中で、「本庶佑先生はこう考えておられる」としばしばご発言を引用されていました。物事をどう考えていくか、基本的な方向性についてメッセージを発信しておられました。
京都大学に移られた先のレセプター研究部門はANK療法開発者お二人と同じ領域であり、私どもの会長と共同でNATUREにも論文投稿されています。会社の社長としては「うちの会長はノーベル賞受賞者と共同で一流誌に論文投稿している」と宣伝に使いたいところですが、会長も、おそらく本庶佑先生もそういうやり方はお嫌いだと思われます。 ノーベル賞の受賞と、がん治療の実用性は別の問題だからです。
受賞理由は「がんの進行に重要な免疫抑制信号を阻害し、がん治療の道を開く可能性を示した」ことであって、不治の病と考えられてきた進行がんを「治す」薬を開発したということではありません。
今日では免疫チェックポイント阻害薬の開発が盛んです。一方、ご自身が関与されたオプジーボをはじめ実用化されたものはまだまだ問題が多く、奏効する部位が限られ、奏効しても大半が「延命」であって腫瘍縮小は「稀」、3~4割に重篤な自己免疫疾患と「効果と副作用」のバランスの改善が急務です。
保険診療機関ではホスピスを勧める段階の患者さんでも次の手がでてきたことが注目されていますが、進行がん患者さんでも治る魔法の薬が登場したのではありません。
なお、オプジーボは保険適用部位以外は効果が見えにくく副作用は変わらずある訳ですので、ANK療法実施医療機関が保険適応外の自由診療で処方することはありません。