藤井真則のブログ

このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。

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2018年11月16日

  

がん, 免疫

ヒトの血液から採り出した細胞をiPS細胞にし、がん細胞を認識する遺伝子を導入したキラーT細胞を作製して、ヒトのがんを再現したマウスに注射したところ、何もしないより3~4割がんの進行をおさえたという報道をみられた方からお問い合わせを頂きました。

 

ヒトのがんを再現したマウスに微量のインターロイキン2を注射すると通常、速やかにがんは消失します。がん患者さんにはほぼ何の効果もありません。大量投与で効果はでますが、副作用も激甚です。 マウスの実験で3~4割進行をおさえたというのは現時点では実用性はありません。研究途上にデモを行うのは実験として「あり」です。ただ患者さんが実用的なんだと勘違いしてしまいますね。

 

マウスに微弱な免疫刺激をかければ体内のNK細胞ががんを一掃します。マウスにヒトのがん細胞を移植すると外部からきた異物であるヒト細胞をマウスT細胞が攻撃します。そこで予めT細胞が成熟しないよう細工をします。マウス体内では「外からきた異物」であるヒト細胞は容易に認識されT細胞を加えるとすぐに猛攻をかけます。 がん患者さんの体内ではがん細胞も本人の細胞であり外からきた異物ではなく、T細胞はそれほど反応しません。NK細胞も、がんによって免疫抑制を受け、活動が低下しています。 人間のがん治療の難易度はマウスの実験の比ではありません。

 

そもそも、がんを認識する遺伝子というのが問題です。

 

そんなものがあるのでしょうか?

 

あるならその遺伝子をT細胞に導入し、いわゆるCAR-T細胞をつくればがん治療に使えるはずです。実際には、効果を発揮したのは正常なB細胞にもがん化したB細胞にも存在するCD19を認識するものだけです。 マウスモデルでは、ヒト細胞を攻撃する遺伝子操作をすれば、マウス体内のがん細胞を含むあらゆるヒト細胞を攻撃します。デモ実験としてはそれでもいいのですが、実用化には相当なハードルがあります。

 

 

 

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