このブログはリンパ球バンク株式会社の社長時代に、会社社長ブログとして会社HP上に掲載されていたものです。ちょうど還暦を迎えるタイミングで社長の責を後任に譲り一時は閉鎖しておりましたが、再開を望まれる方もいらっしゃるため、別途個人ブログとして再掲載するものです。ANK療法という特定のがん治療に関しては、同法の普及のために設立されたリンパ球バンク株式会社のHPをご覧ください。
本ブログは、あまり標準的ではない特殊な治療の普及にあたり、「常識の壁」を破るために、特に分野は特定せずに書かれたものです。「常識とは、ある特定の組織・勢力の都合により強力に流布されて定着したからこそ、常識化した不真実であることが多い」という前提で書かれています。
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2008.12.6.
昨日は、抗体が取れたところまででした。
とりあえず抗体が取れても、かなり色んなものに結合してしまいます。
モノクローナル抗体とは名前の通りで、モノ(ひとつ)の細胞をクローン(コピー)
した細胞がつくる抗体という意味です。
誰も、モノ、ひとつの抗原にだけ結合する、とは言ってないのです。
似たような構造をした抗原であれば、片っ端から
結合してしまいます。
そこで、とりあえずの抗体を使って、抗原を精製します。
抗体を作る時に使ったがん細胞のエキスから、
抗体にひっかかる物質だけ取り分け、
純度を上げるのです。
精製された抗原を使って、また、抗体をつくります。
前は、ドカッと、がん細胞由来の物質が投与されましたが、
今度は、抗原らしい物質が集中的に投与されますので、
前回より、シャープに抗原と結合する抗体がとれます。
新たに作り直した訳ですが、事実上、抗体の精製を行った
ことになります。
で、またこの抗体で更に抗原を、そしてその抗原で、また抗体を
という精製の往復を10回くらいはやるのです。
こうしてやっと、なんでもかんでもくっついていたモノクローナル抗体が、
特異性の高い、割と決まった物質の、更に、決まった部位(認識する
心臓部、ほんとのコアの部分をエピトープと呼びます)を認識し、
結合する抗体ができあがります。
ここまでは、まだ抗体つくりの話。
抗体と診断薬、診断キットとは全然、次元が違います。
やっと素材として取れた抗体を、診断キットという製品に
仕上げるのは、ここまでより遥かに大変な作業が必要であり、
富士レビオが実際にやった偉業はこの後のプロセスなのですが、
今回は、書くことはやめておきましょう。
結果的に、CA19-9は、大腸がんの細胞から始まって、
製造承認は、膵臓がんの診断薬ということで取得されました。
「大腸がんを抗原に抗体を取ると、大腸がんに特異的な抗体になる」
というほど、単純ではないのです。
実際、CA19-9は、膵臓がん以外の診断にも使えますが、
膵臓がんが、一番、承認を取りやすい条件が揃っていました。
19-9 : 「ないんてぃーん ないん」、
と笠原氏は呼んでおられましたが、
数字自体に意味はありません。
抗体をつくる過程で、沢山の候補が存在し、
それらに番号をつけていくのです。
その中から、たまたま、NS19-9という番号のついた抗体が
選ばれ、英語の腫瘍抗原の頭文字をとってCA19-9という
製品名にしたものです。 抗体医薬品もそうですが、抗体の
名前と、製品の名前は異なります。 何とかマブ、というのは、
抗体の名前、リツキサンというと製品名です。
この抗体、糖鎖抗原を認識します。
タンパク質ではなく、糖がつながった鎖を認識しているのです。
ルイス抗原と呼ばれるものの構造の一部を認識するのですが、
一般に、血液型と認識されています。 血液型の診断キットが
がんの診断に使えるの?? ううん、そう単純ではないのですが、
説明はかなり面倒なので、今回はやめておきましょう。
ちなみに、血液、特に赤血球には、「血液型」というものはありません。
体細胞から遊離したルイス抗原が、赤血球に吸着されて、あたかも
赤血球の型の如くに振舞うのですが、まあ、現象としては、赤血球の型
と考えても、実用上、差し支えありません。
そして、このCA19-9が認識する糖鎖をめぐって、
今度は、診断ではなく、がん治療へのチャレンジに取り組んだ、
というところからが本題なのですが、既に長い、、、
今日はこの辺で。