このブログを最初からお読みくだっさてる方は覚えて
らっしゃるでしょうか。
ジェンナーさんが、村の子供を二手に分け、
一方に種痘(正式には牛痘です)を施し、他のグループには何もしませんでした。
種痘(牛痘)を受けた子供は一人も天然痘に感染せず、
受けなかった子供の半分は、天然痘で命を落としました。
この時点で考えれば、種痘(牛痘)の有効性は完璧に証明されています、
という風に見えますね、一見。
ところが、種痘(牛痘)を受けた子供は全員、二十歳を迎えることなく
結核で命を落とし、受けなかったグループで、天然痘に感染しなかった
子供は全員、天寿を全うしました、、、、
誤解ないように念押ししますが、昔のことを、事実かどうか、
拘ってもしょうがないと考えます。余りにも、綺麗な数字なので、
恐らく、そのまま事実ではないと思います。
ただ、重要なのは、この手の逸話を、今を生きる私達がどう
「考える」かです。
まず、エビデンスを考えるに当り、時間の要素が重要であることを如実に
示していますね。 短い時間軸で捉え、化学療法剤投与により、がんが縮小する、
縮小効果をもって、エビデンスとし、次々と化学療法剤が認可を受けました。
ところが米国を中心に、使える薬剤が増えたのに、個々にエビデンスありとされた
薬剤が増えたのに、全体としてみれば、がん患者の死亡率が逆に高くなっている、
おかしいではないか、という反論が投げかけられました。
時間軸を長くとると、逆の結果になる、というのです。
一時的に小さくなっても、生き残ったがんは、猛烈な勢いで増殖をはじめ、
こうなると手が負えない、結局、何も治療しなかった方が
よかったのではないか、という意見が出され、大論争となったのです。
結果、縮小効果で見るのは問題とされます。
やはり昔ながらの延命効果で見よう、と。
もっとも、かつての10年生存率では、新薬審査に時間が
かかりすぎ、5年にしてもまだ長いので、もっと短い期間で
結果でるよう、余命1-2年の患者さんを選んで、
1-2ヶ月の延命効果をエビデンスとするようになりました。
凄いですねえ、流石に何千億円も費用をかけて開発する
新薬ですから、1ヶ月とか、2ヶ月も延命効果!を発揮し、
堂々と、健康保険適用を受け、標準治療として
認められるのです。
今日、米国では、無理にがんを叩くのではなく延命を図ることが
重要とされ、死亡率は下がってきた、と言われています。
日本は、反対に、先進国の中で、ダントツにがん患者死亡率が高いと
言われ、いやあ、日本は急速に高齢化したからだろう、
とか言ってる専門家の方もいらっしゃいますが、
米国では昔から年齢構成は変わってません、何ゆえ、
米国で死亡率が下がっているのか、別の理由があるはずです。
さて、ジェンナーさんの時代、どんな議論となったのでしょうか。
当時、ギャラップの調査もありませんし、世論がどうだったかを知るのは
困難ですが、専門家の激論の記録は残っています。
種痘(牛痘)推進派と反対派、両極端のグループがいたようです。
推進派は、
「種痘(牛痘)により、感染率が下がる」
素晴らしい! と主張します。
反対派は、
「死亡率が上がってる、亡くなる人の絶対数は増えている!」
と反論します。
こうなるともう議論になりません。
論点がずれているのです。
論点が合わなければ、議論にはなりません、
もうどっちが権力を持つか、で勝負が決します。
推進派にしてみれば、感染率が下がることは、何より重要な意味を持つのです。
パンデミック(大流行)を想定した場合、少しでも感染拡大を防止することが、
何よりも重要なのです。 ヨーロッパは何度も、疫病により総人口の何割もが
命を落とすという過酷な歴史を経験してきました。
「ユーは、ジャパニーズなんで、絶対つけても、
白人の感染症に対する 恐怖 は分からない!!!」
 
;
とよく言われましたが、彼らからみれば、日本人は、感染症に対して、
異常に抵抗力をもつ化け物なんだそうです。
この手の人たちは、死亡率が高くなったデータなんか
見せられても、全く動じません。 そんなものは、途中経過に
過ぎないのだ、と。 ヨーロッパ全体に感染が拡大してしまえば、
全員、倒れてしまう、ヨーロッパは壊滅する、だから、とにかく
感染伝播速度を遅らせることが大事なんだ、と考えるのです。
反対派は、免疫力の個人差に言及します。
四つに分けよう、と。
① 特に免疫が強い人
➁ そこそこ免疫が強い人
③ そこそこ免疫が弱い人
④ 特に免疫が弱い人
①の特に免疫が強い人は、種痘(牛痘)を受けても受けなくても平気。
病気にならないし、ワクチンの害もない。 元々、強いから。
こういう人もいるので、感染症によって、ヨーロッパから人間がいなくなる
日がやってくることはないんだ、と。
➁のグループは、免疫力がある程度、強いので、ワクチンがよく効く。
この人たちは、元々、感染する可能性はあり、ワクチン効果によって
感染率が下がる。
但し、ワクチンを受けても受けなくても、どのみち、感染症で死ぬことはない。
また、ワクチンの害も大したことない。
③のグループは、免疫が弱いため、ワクチンの効果は今一つ。
ワクチンによる感染防止効果は低いが、死亡率もそれほど高くない。
④の人たちには、ワクチンは効かない。
ワクチンの毒を体の外へ押し出す力もないので、
ワクチンをうっても反応さえしない。
こういう人は、ワクチンをうってもうたなくても
元々、天然痘(痘瘡ウィルス)には感染はするし、死亡率も高い。
更に、ワクチンの毒を浴び、かつ、牛痘ウィルス感染が加わるので、
(天然痘は、人間の痘瘡ウィルス感染により発症します。
種痘(牛痘)は、人間に感染した牛痘ウィルスを用います。
ワクチンに用いるウィルスと、天然痘を発症するウィルスは
別物なのです。)
結局、全体を平均すると、➁の人たちが感染率を下げる効果を発揮し、
④の人たちが死亡率を上げる効果を出してしまう、という主張です。
この両者には、もっと根源的な相違があります。
人は何故、病気になるのか、という基本的な物の考え方が異なるのです。
それは、明日以降。
P.S. 古い話のようですが、この辺りの議論が、今日、免疫細胞療法を正しく理解していただけない根源的な原因となっていますので、免疫細胞療法にご関心をお持ちの方は、是非、お読みいただければ幸いです。
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